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第29話:報告書・元ボハニア王国の現状について 

① 国王や貴族の方々が重税や横暴政治を働いていたことは事実だが、それによって自分達の食べる物までもが無くなってしまうことを恐れ、畑などの状況は良好。今の状態ならば食料に困ることはないと思われる。


② 目立って敵対している国はないが、特に友好と呼べる国もない。現マリノ王国の監視を気にしてか、ここ数100年の間で起こった問題は全て自国内のみである模様。(マリノ王国の王族はハイヒューマンの一族の為、1人の人間が国王として働く期間が長いことが影響していると思われる)


③ この世界には勇者召喚というものがあり、過去に召喚された何人かは地球という星の技術をいくつかこの世界に広めたとされている。以下はそれらと思われるものである。( )内の単語は勇者様が元にした物の名称と記録されている。


・魔石に魔力や魔法を封じ込められることを利用した、暖房器具 (ストーブ)

・ガラス張りの建物 (温室)

・上記の建物内で暖房器具を使うことにより、冬でも温暖な季節にしか育たないはずの野菜等が採れる。

・上記の建物を作るにはかなりのお金が掛かるが、劣化防止の魔法や耐久値を上げる魔法を使用するため数100年は持つと言われている。

・この他にも各家庭や、その他の建物内で利用されている。


・同じく魔石を利用し作られた灯り (照明器具)

・照明器具は各家庭や街灯として利用されている。


・過去に綺麗な水が誰でも飲めるように、井戸という物を作ろうとしたが計画は途中で断念。

・理由:毒物や感染症の原因菌が入り込む可能性があったため。もしそのようなことが起これば数日でその国は滅びるだろう。


・記録上に残っている勇者様の出身地は全て日本である。

・特徴は黒髪及び黒っぽい瞳。この2つの濃さには生まれつき個人差がある。

・日本人には決まって苗字があるのも特徴。

・勇者召喚された者は必ず1つだけ特別な力を持っており、召喚した国に勝利をもたらすとも言われている。

・勇者召喚された者は元の世界に戻ることができない。

・勇者様が広めた文化や行事のいくつかはこの国でも行われている。


・現在生存が確認されている勇者様は今から10ヵ月程前に召喚された1人のみ。異世界から来たと証言しているソウジ・シラサキも合わせれば2人である。


以上がこの国の現状及び、この世界の一部報告である。勇者様の件はまだ詳細がハッキリとしていないため、後日情報が入り次第報告することとする。


報告者:セレス






ふ~ん、過去に呼び出された勇者って結構有能じゃん。おかげで俺がやろうとしてた仕事が何個か減ったわ。マジ助かる~。


あとは今この世界にいるという勇者も有能なのか、はたまた呼び出された国の傀儡なのか………。


などと昨日セレスさんから受け取った報告書を読みながら考えていると、勢いよく部屋のドアが開き


「やっと見つけた!」


「なんだよ朝から……。つか、ドアは静かに開けろよ。お姫様だろうがお前」


「元はと言えば私を1人にしたソウジ様がいけないんです! あんなことをされたら勢いよくドアも開けたくなりますよ!」


朝からミナが怒っているのには勿論理由がある。というのも昨日俺は毛布を頭から被り、誰にも見られないようリアに抱き着いて寝ていたはずなのに、いつの間にか毛布の位置が肩あたりまでずらされていたり、セリアとキスしたことがバレていたりした。


おかげでヤキモチを焼いたミナは俺が目を覚ました瞬間


『おはようございます、ソウジ様。早速ですが、私より先にセリアさんとキスをしたというのは、いったいどういうことでしょうか?』


『……やっぱりティアが余計なこと言いやがったか』


『お主が先に告白してきた女子を放って別の女子に手を出したのが悪かろうに。わらわのせいにするでない』


『お前がそのことを言わなければ、俺は今よりもっといい目覚めを迎えられただろうよ』


『折角リアーヌに抱き着いて気持ちよく寝ていたのに、起きたらいきなり修羅場だものね』


そもそもの原因はセリア、お前だぞ。


『……そういえば俺、リアに抱き着いたまま寝ちゃったけど大丈夫だったか?』


『はい。お昼ご飯はティア様とここでいただきましたし、特に用事もなかったので問題はありませんでしたよ』


『まあ2人がリビングの方に来ないで、居間でご飯を食べてるのを不思議に思ったミナが毛布をズラしちゃったんだけどね』


『そしたらソウジ様がリアーヌに抱き着いて寝ているじゃないですか! というか、なんでまだリアーヌに抱き着いてるんですか⁉ 抱きつくなら次は私にしてくださいよ』


『ん~~、動くの面倒くさい……』


『どうやらこやつにハーレムは向いておらんようじゃのう。これはお主達が積極的にいかんと駄目なパターンじゃな』


出来るだけ平等に接しなきゃいけないのは分かってるけど、寝起きの状態でそれはキツイ。寝起きじゃなくてもキツイけど……。その証拠に昨日セリアとはキスしたくせに、ミナとリアにはまだ何もしてないどころかバレない限り黙ってるつもりだったし。


『んぅ~~ん、もうやだ……。3人とも好きだけどやだ。も~う、あっちもこっちも分かんない!』


ハーレムは男の夢だとか言ってたやつ今すぐ出てこい。こんなのを上手くコントロールできるのは歌舞伎町No.1ホストか、股かけ男くらいだぞ。


『あらあら、今日のご主人様は物凄い甘えん坊ですね』


『あ~あ、ティアがソウジを泣かせたわ』


『リアーヌに抱き着いておって顔は見えぬが、流石に泣いてはおらんじゃろ』


『ちょっと、ちょっと、ソウジ様を虐めないでくださいよ』


『いや少なくともミナはこっち側じゃろうて。なにサラッとこやつの味方になっておるんじゃ』


などというやり取りはアリス達が買い物から帰ってくるまで続き、結局最後はミナとリアにもキスすることで収まったのだが………その日の夜、ミナがいきなり


『ちゃんと私達にもキスしてくれたのは嬉しかったですが、なんで私だけぎゅ~されてないんですか?』


なに、ぎゅ~って。普通に抱きしめるじゃ駄目なの? それとも君達3人の中ではぎゅ~で統一されてるの?


『なんでって、タイミングとか雰囲気的に?』


『しかもリアーヌに関してはほぼ一緒に寝たようなものじゃないですか! ズルいです! 今日はソウジ様のベッドで一緒に寝ます! ソウジ様にぎゅ~されながら寝ます!』


『いや寝てたのは俺だけだから一緒じゃないし。あとミナは他国の王女なんだから簡単に男と一緒に寝るなよ。てか、リアも黙って見てないで止めろ』


アリス・サラ・エレナ・リーザは勿論、セリアも既に寝ているから良いけど、この5人がいたら大変だったぞ。これで自分達も一緒に寝るとか言われたら普通に困る。だって中身はまだ子供っぽいけど、体は完全に成長途中の女の子だからな。


ちなみに他の人達はお風呂だったり、自分の部屋だったりで居間にいるのは俺達とティアだけである。


『そうは言いましても…ご主人様は既にその王女様相手にキスされておられるわけですし、別に手を出したところで今更ではないでしょうか?』


『いやいやいやいや、まだ引き返せるだろ! キスだけならまだセーフだろ! 責任問題とか発生しないだろ! 正直に言うとまだミナの親に挨拶なんて行きたくないぞ‼』


もっと正直に言えば一生行きたくない。だって相手の父親に、『お前なんかに娘はやらん‼』とか言われたくないもん。そんなん言われたら、『あっ、じゃあいいんで帰ります』って言っちゃうもん。しかもミナの親って現国王だろ? そんなのに挨拶とか堪ったもんじゃねーよ。


『ソウジ様がその気ならその、いい……です、よ♡』


『良かったのうソウジ、今日でお主も童○卒業じゃぞ。当分の間は婚約に止めておきたいのであればちゃんと避妊魔法を使うんじゃぞ。どうせお主のことじゃから普通に使えるじゃろ』


『うるせぇ、余計なお世話だ。あと俺は絶対に手を出さないぞ。両親への挨拶が済んでないのにリアル王女に手を出すとか自殺行為だろ』


『ではソウジ様が私の両親と会って、婚約を認めてもらえればよいのですか?』


『う~ん? そういうことになるのか?』


『ご主人様のご両親は兎も角、マリノ王国側がお認めになればそれはもう半強制のようなものですし……いいというより、逆にしなければ駄目なのではないでしょうか。まあご主人様の場合は色々と特殊な立場ですので、お嬢様に子供が出来るまでは婚約、もし子供が出来れば結婚という形でしょうかね』


………絶対に気をつけよ。みんなには言ってないけど俺まだ学生だし、この不安定な状況下でそれはリスクが高すぎる。少なくともあと数年は様子見をしたい。となれば


『おやすみ、ミナ……。俺のベッドで寝るっていう願いの部分だけで我慢してくれ』


『えっ? あれ……なんだか急に眠く―――』


『まさか魔法で無理やり寝かせおるとは……。明日なにを言われてもわらわは知らんぞ』


『しょうがないだろ、ミナは立場が立場なんだから。これがリアだったら押し切られてた可能性もあるが、ミナは駄目だろ。よっこ……女の子にこの言葉は禁句だったな』


初めてお姫様抱っこなんてしたけど、これヤバいな。昨日のセリアを抱っこした時もそうだったが、自分の体に相手の体を密着させると凄く良い匂いがするし、何より女の子の体はどこを触っても良い意味で柔らかいから……色々とマズイ。


これが別に自分のことを好きじゃない女の子相手なら犯罪になるから余裕で我慢できる。しかし今俺の手の中にいる子はさっき自分から誘ってきたような子だ。昨日のセリアはシリアスな話もあったから何とかなったが、今日はもはや誘われてすらいるからな。手を出しそう度が比べ物にならん。


『つまり私なら別に構わないと? ですがお嬢様より先にというのはあれですし……。う~ん、悩みますねぇ』


『別に今日は誰にも手を出す気はないから悩む必要はない。ティアは俺の部屋のドアを開けるために着いてきてくれ。……あと今日はもう自由にしていいぞ、リア』


流石に自分から『リアも俺のベッドを使っていいぞ』なんて、自意識過剰なことは言えないのでそう伝え……俺は自分の部屋に向かった。

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