第2話:待ってました!
この女の言っていることが本当かどうか分からないが、神の裏話的なのが面白くてつい話し込んでしまった。
さて、そろそろ話を戻すか。
「よし。なんで俺の所に雷神じゃなく、天照のアンタが来たのかは分かった。それで……なんの話だっけ?」
「ちょっと! 一番大事なところを忘れてるんじゃないわよ!」
そう言われてもなぁ。えーとマジでなんだっけ? 全く思い出せん。
「はーあ。もう無理に思い出だそうとしなくて良いわよ。そういうのって大抵かなり時間が経ってから思い出すやつだから」
「なんか悪いな。それで、なんの話だったっけ?」
「アンタの願い事を叶えてあげるっていう話よ」
「あー、そうだそうだ。思い出したわ」
スッゲー怪しいけど、取り敢えず話を合わせることにしたんだった。よし、引き続き話を合わせるか。
「それで、俺の願い事を叶えてくれるってことはお前が俺にチート能力をくれて、異世界の王様にでもしてくれるのか?」
「当ったり前じゃない! その為にここまで来たんだし」
どうしよう。俺はこのまま話を合わせるべきなのか?変な宗教の勧誘の可能性を考えると流石に怖くなってきたぞ。
「ということで、まずは望み通りチート能力をアンタに与えるはね」
「えっ⁉ ちょっ、待て! 何をする気だ!」
自称天照は俺の言葉など無視し、手のひらをこちらに向けてきたかと思えば……それの前で虹色の玉のような物が作られ始めた。
「おいおい、なんでお前の手の平から虹色のオーラみたいなのが出始めてるんだよ⁉ っていうか、そのオーラで作ってる玉みたいなのをどうする気だ?」
「どうするって、そりゃあアンタの体に入れるに決まってるじゃない。ズレると面倒だから動くんじゃないわよ」
はあああああ⁉ こいつ、怪しいメンタリストかと思ってたがまさかのショ○カーかよ! それなら確かに最強になれるだろうけど、もはやそれは改○人間じゃねぇか‼
「よし、準備出来たわ。……そうやってジタバタされるとちょっと面倒ね」
自称天照がそう言ったかと思えば、いきなり俺の右腕を掴んできた。
「おっ、おい⁉ 何するんだ離せ!」
俺はそう言いながら腕を振り払おうとしたのだが
「って、なんだよこの馬鹿力! 全く振り払える気がしないんだけど!」
「当たり前でしょうが。私は神でアンタは『まだ』、ただの人間なんだから力の差はこれくらい普通よ。というか、私より強い人間なんて存在しないし」
「おい、なんで今『まだ』を強調して言った⁉ やっぱりお前神じゃなくてショ○カーなんだろ! そして俺を改○人間にする気なんだろ‼」
「えっ、もしかしてアンタ仮○ライダーになりたかったの? う~ん、でも変○ベルトとか用意してないし……それは無理。ってことで、チート能力だけで我慢してね」
「そういう意味じゃねーよ! うわああああ、その虹色に光ってる玉を俺に近づけるな‼」
そんな俺の願いもむなしく、虹色に光っている玉はどんどん俺に近づいてき最後は
「ぎゃああああ‼ こいつ本当に俺の体の中に入れやがったあああああ‼」
「はい、おしまい。って、さっきからうるさいわね。今から色々説明するから少し落着きなさい」
「落ち着けるわけないだろ! いいから早く俺に何をしたか説明しろ!」
「だ・か・ら、さっき色々説明するから少し落着きなさいって言ったばっかりでしょうが!」
「自分の体に変なもん入れられたばっかなのに、無理に決まってんだろ!」
その後も俺が騒ぎ続けていると、自称天照が右の手のひらを再び俺に向けてきた。すると何故か俺の体を白く優しい光が包み込み始め
「………あれ? なんか凄い安心するっていうか、落ち着く? お前、何をした?」
「何って、アンタがあんまりにもうるさいから気持ちを落ち着かせる神力を使っただけよ」
神力ねぇ~。さっきの虹色の玉に続き、俺の体を包み込んだ白い光……もうこれは信じるしかないか。
「は~あ。それで、さっき俺の体に入れたのは何なんだ?」
「さっきも言ったけどあれはアンタにチート能力を授ける作業みたいなものよ。まあ、簡単に言えばチート持ちになれる素…みたいな?」
「つまりその『チート持ちになれる素』を体に入れられた俺は、ラノベ主人公並みの最強人間になれたってことで良いのか?」
「ちょっと~、私は天照大神なのよ。そんなものとは比べ物にならない程のチート具合に決まってるじゃない」
「おいマジかよ!そこまで言うってことはもちろん何でもありなんだろうな?」
「あり、あり。そりゃ~もうなんでもありよ」
よっしゃあああああ‼ なんだよそれ、最高じゃねえか! どんなにくだらない願い事でも取り敢えず神にお願いしてみるもんだな。
「説明を続けても良いかしら?」
「ああ、頼む! 今すぐ頼む!」
「なっ、なんかさっきまではあんなに嫌がってたのに凄い変わりようね」
「いいから早く説明を続けろ!」
今の俺はプレゼントを貰ったのにまだ開けちゃダメと言われているようなものである。それも絶対に手に入らないと思っていたものをだ。誰だってこうなるだろ?
「まあ、聞きたくないとか言われるよりは断然良いんだけど。それじゃあ説明を始めるわよ」
天照はそう言い、俺に与えたチート能力についての説明をし始めたのだが…話をまとめると
~基本編~
・今から行く世界には「火属性」「水属性」「風属性」「光属性」「闇属性」「無属性」の6種属性がある
・基本は一人一属性、ごく稀に四属性持ちがいるらしいがそれ以上はいない
・だが俺の場合は全属性持ち
・人によって生まれつき使える魔力の保有量が決まっている
・俺の魔力量はかなりの量を保有できる(無限ではない)
~魔法編~
・使える魔法は自分が持っている属性の魔法のみ
・魔法を使うにはスポーツとかと同じで、練習しなければ使えない
・勿論魔法によって難易度が存在し、誰でも練習すれば修得できるというわけではない
・しかし俺の場合はどんな魔法であろうと、使いたい魔法を頭にイメージするだけで使うことができる
とまあこんな感じである。勿論これが全てではないだろうがそこら辺は後で考えよう。
「俺がとんでもないチート持ちになったのは分かったが、何か注意することとかはないのか?」
「勿論あるわよ。まず一つ目はよっぽどの理由がない限り人の記憶を書き換えないこと。そして二つ目は……絶対に蘇生魔法を使わないこと。言っておくけどこれは神にも許されていない禁忌よ」
「でもそう言うってことは、一応蘇生魔法も存在するのか?」
「ええ。勿論存在するし、今のアンタなら簡単に使えるわ。……言っておくけど蘇生魔法を使ったところで死ぬ前と全く同じ状況に戻ると思ったら大間違いよ。死者に蘇生魔法を使っても、ただ醜い化け物が生まれるだけ」
ふ~ん。まるでどこぞの錬金術師の話しみたいだが当然といえば当然か。死者がそんな簡単に生き返っていいもんじゃないし。難しいことは分からないがそれが世界の法則みたいなものなんだろう。
「まっ、こんだけのチート能力を持ってるんだから、一生蘇生魔法なんて使おうと思うことはないだろ」
「 ――――――」
そう俺が自信満々に言ったのを聞いた天照は、何か独り言を言ったようだが声が小さすぎて聞こえなかった。