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第26話:二日酔い

………んっ、んんーん? 頭痛い、気持ち悪い、今ちょっとでも動いたら吐きそう。てか、人が寝てるのに明るい。誰だよカーテン開けたの。


ああ、でも確か居間で寝たんだっけ。じゃあ悪いのは俺だから文句は言えねえな。……そろそろ目だけでも開けるか。


「おはようございます、ご主人様。昨夜はアベルとティア様の3人で随分と盛り上がっていたようで」


「………その2人はどこに行った?」


「アベルは騎士団の仕事に、ティア様はご主人様を私に任せて騎士団の訓練場へ向かわれましたよ」


ちょっ、今何時だ? って、もう朝の10時じゃねーか!


「ちなみにリアはどこまで知ってんの?」


「そうですね~、私が知っているのは3人が日付をまたいでもお酒を飲み続け、挙句の果てには気持ち悪くなったためご主人様が酔った勢いで治癒魔法(ヒール)を使い、危うく街が大騒ぎになるところだった…ということぐらいですね」


「全部知ってんじゃねーかよ‼ うっ……」


なぜ俺は治癒魔法(ヒール)を使ったのに1人だけ二日酔いなのかというと、ことは数時間前のこと。


飲みすぎて気持ち悪くなっていた俺とアベルは治癒魔法(ヒール)で治そうということになり、それが出来るのが俺だけだった為酔った勢いで治癒魔法(ヒール)を使ったら……案の定バカデカい光が空に浮かび上がった。


しかもどういうわけかアベルは完全復活したというのに俺には全く効果なし。これはティアの推測だが、何かしらの原因があるせいで自分自身に対する治癒魔法(ヒール)は効かないのだろうということだった。原因とか1個しかねーだろ。


「リア。いい加減俺の向かい側のソファーに座って見てるだけじゃなくさあ、助けてくんね?」


「今回は飲みすぎたご主人様がいけないので絶対に嫌です。朝になっても起こさなかっただけありがたく思ってください。それからお戻しになる時はそこのバケツかお手洗いでお願いいたします」


あっ、駄目だこれ。完全に怒ってるやつだは。……出来る限り吐きたくないから今日は1日ここで大人しくしてよ。


「はい、すいませんでした。……そういえば他のみんなは?」


「お嬢様とマイカ様はご主人様にお願いされたお仕事を、セレス様はご自分のお部屋で昨日の仕事の続きを、エメ先輩やアリス達は城内のお掃除をしております。それなのに一番お偉い方がこの忙しい時に二日酔いで寝ておられるとは…正直私はどうかと思いますがね」


「いやでも俺の出来る仕事はまだ何もないし、結果そんな変わってなかったでしょってことで許して」


ちなみにミナとマイカに頼んだ仕事は俺が昨日集めた金の計算と配分額等との仮決定、セレスさんに頼んだ仕事はこの国に関する現状報告書を纏めることである。


まあでも3人にはパソコン関係の機器や紙幣カウンター、それらの使い方の知識を渡してあるから普通にやるよりは早く終わるはずだ。………慣れれば。


「そういうわけにもいきません。私達の上に立っておられるご主人様がこのような状況では下の者達の士気にも影響してきます。幸いなことにこの城内におられる方々はそれぞれ、心配する子達・可愛がる方々・微笑ましく思われた方・面白がっていた人達の4パターンでしたから良かったですが」


みんなめっちゃ良い人じゃねーかよ。面白がってたであろうアベルとティア以外は。


「ちなみにリアはどれだ?」


「私ですか? 私は……呆れですね」


「いや、そんな選択しなかったよね⁉ うっ……」






さっきの大声を出したことによって自爆しかけた反省から、暫く大人しくしていると


「あっ、お兄ちゃんが起きてます!」


「サキ兄ぃ、もう元気です?」


「うちも、うちもソージ兄ぃの顔見たいです!」


きみたち~、お願いだから俺の近くで走ったり大声出したりしないで。頭に響くし、また吐きそうになるから。


「あら? もうお掃除は終わったのですか?」


「はい。ですので今は先生のチェック待ちです。……ソウジ様、おはようございます」


先生? ああ、メイド教育係のエメさんのことか。


「ああ、おはよう。それから掃除ありがとな」


「いえ、これが私達の仕事ですから。それにソウジ様のおかげでかなり楽が出来ましたので、お礼を言うのはこちらです」


「でもそのせいでエメが『旦那様はご自身の魔法で私達が掃除する場所を奪い、便利な掃除道具で楽にしすぎです!』って怒ってたけど」


そんなにか? メイドの一日の仕事をトータルしたらこれでもまだ大変そうだと思ってたんだけど。これ以上掃除する場所を減らすのは止めとこ。


「ねえねえソージ兄ぃ~、うち動いたら喉乾いた~。何か飲み物~、昨日のジュース~」


「やっ、やめろサラ。今俺の体をうっ……、揺らす…な。マジ……で、はぁーはぁー、吐くから……」


「こらこら駄目よサラ。今ソウジは具合が悪いんだから」


よくやったセリア。さっきから俺の向かい側に座わったままこの状況を静観してる鬼畜メイドとは大違いだ。


「今、何か失礼なことを考えておりませんでしたか? ご主人様」


「はぁはぁ、とんでも、うっぷ……ない。それから、すーーーはぁーーー、………飲み物は冷蔵庫に麦茶が入ってるから好きに飲んでいいぞ」


あ~、危なかった。今回は深呼吸で何とかなったけど、次はないな。


とか思った瞬間、次はセレスさんが部屋に入ってきて


「お休みのところ申し訳ございません旦那様。ですが警備兵の者から旦那様に緊急の報告があるとのことでしたので。どうなさいますか?」


なんか……さっきのリアの説教の後にそう言われると嫌味にしか聞こえないんだけど。実際は俺の性格が歪んでるだけなんだろうけど。話が話だし取り敢えず起き上がろ。


「その警備兵はどこにいるんですか?」


「今はこの城の門前で待たせております」


「んじゃ、ここまで連れて来てもらってもいいですか」


「かしこまりました」


そう言った後セレスさんは一礼し、昨日渡しておいたトランシーバーに向かって何やら話しながら部屋の外へと出て行った。


一応使い方は全部教えたとはいえ使いこなし過ぎだろ。これでスマホまで使いこなしたらハイテクおじいちゃんだな。面白そうだから早いうちに買って渡そう。


「ご主人様、急いで身支度を整えますので動かないでください」


「ついでにこの絶不調の体調も整えて」


「それは嫌です」


はい、駄目でした。






それから少しするとセレスさんが俺の状況を確認する為にまずは1人で部屋に入ってき


「旦那様、警備の者をお連れしましたが大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫です」


「見た目はリアーヌのおかげでしっかりしていても、二日酔いで具合が悪そうな顔は変わらないわね」


「うるせえ、座ってるだけでも結構キツいんだよ。それと少しの間アリス達のこと見といてくれよ」


そんな風にセリアと話していると、セレスさんは嬉しそうな顔をでこちらを見た後、すぐに真顔へと戻し


「どうぞ、お入りください」


「はっ、失礼いたします。私は街の警備を担当している―――――」


「それで報告って?」


「それが、先ほど陛下がご用意された監視システムが反応した為言われた通り数名で現場へと急行。その場で隠れて監視。女性を無理やり犯そうとした男を確認した為その場で確保いたしました」


「チッ、それでその犯人と被害者は?」


「犯人の男は警備室に隣接している牢に、被害女性は一応こちらで保護しているのですが……どういたしましょうか?」


「馬鹿かお前は⁉ 今すぐ病院に連れてけ! 何してんだ早くしろ‼ うえ゛っ、おぅえ゛、はぁはぁはぁ、っうえ゛ーーー、はぁはぁ……」


「あ、あの~、大丈夫ですか陛下。……これって陛下を病院に連れて行けということでしょうか?」


なわけねーだろ‼ てめぇは漫才やりに来たのか? 確かにお前の目の前で突然ゲロッてる俺も悪いけどさ。つか早く行けよ‼ 今喋れねーんだよ!


「ご主人様はとても元気ですので病院に行く必要などありません。ですのでご安心を」


「でも、なんか凄く苦しそうですよ。しかも泣きながら吐いてますし」


「はぁはぁはぁ、いいから早く行、っおえ゛ーーー、はぁ、うぶぇーーー」


「いいから早く被害女性を病院まで連れて行きなさい‼」


「はっ、はい‼ 至急被害女性を病院へお連れします!」


「ちょっと待て、はぁはぁはぁ。連れて行くのは、うぷっ……女性警備兵のみにしろ、おう˝ぇーーー、はぁはぁ……」


確か街の情報収集を専門にしている女性警備兵が何人かいたはずだ。ミナが言うには普段は警備兵の仕事をしてもらい、警備中に気になったことがあったら変装して情報収集等をするスパイみたいな仕事をするとかなんとか。しかも全員かなりの凄腕だと褒めていた。


「りょっ、了解しました‼」

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