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第219話:何が正解?

そんな一触即発一歩手前みたいな状況にも関わらずお母さんと母さんは呑気にお茶を飲み、ママに至っては娘2人によるいがみ合いなど気にも留めず、相変わらず色んな角度から俺の写真を撮り続けている。


つまり、今この2人をどうにかできるのは俺しかいない。と言いたいところなのだが……マジで何をどうすればこの修羅場を収めることができるんだ?


自惚れもいいところな思考を巡らせておきながら、解決策は一切思い浮かんでいないという無能もいいところな自分の引き出しの少なさを改めて痛感していると


我が子の写真撮影は一旦満足したのかそれを止めたママは、俺の方へと視線を向けてき


「今からソウジちゃんの朝ご飯を用意するけれど、何か食べたいものとかある? 一応お米も今朝炊いた分を茶碗1杯分くらいは残しておいたからあるし、お味噌汁+簡単なおかずくらいだったらすぐに作れるから和食でも全然大丈夫だけれど。もちろん他に食べたいものがあれば遠慮せずに言ってくれていいからね?」


朝ご飯のリクエストを訊ねてきたことにより、姉達のによる板挟み状態から脱することはできたものの、これはこれでまた新しい悩みが生まれてしまった。


というのもママはああ言ってはいるものの、まず他人に作ってもらう料理の時点で簡単なんて概念は存在しない。ましてやこの人達が作る料理が言葉通り簡単なものなわけがない。


間違いなく昨日のエメさん同様、パッと見は素朴な料理であっても実際はかなりのこだわりと食べる相手への気遣いがしっかりと込められたものが出されることであろう。


しかしここで俺が比較的単品で完結しやすいサンドイッチなどのパン料理を希望した場合、わざわざ俺の為に用意してくれたのであろう米が無駄になってしまう。


つまり、俺はここでなんて答えるのが正解なんだ?


駄目だ、考えれば考えるほど分からなくなってきたぞ。


それでもなんとか正解を導き出そうと足りない頭を必死に働かせている過程で、少しでもヒントになりそうなものがないだろうかと、久しぶりに他人の顔色を伺うことにした俺は…この時特有の嫌なドキドキ感を胸にママをはじめとする5人の大人の顔へと視線を向けてみると……


おそらく俺が今何を考え、何に頭を悩ませているのかなど容易に想像が付いているのであろう。


微笑ましそうにこちらを見つめてきている眼差しの中には感心と…ことあるごとに周囲の人達から向けられる…悲愴感。


そんな視線を向けてくる大人達を代表してなのか、ママがこちらに近付いてきたかと思えば俺の目の前で歩みを止め、お互いの目線を合わせるためにその場でしゃがみだした。


そして優しく頭を撫でてきながら


「ほんっとうに良い子だね~、ソウジちゃんは♡ でもママはそんな大人の心を見透かして、相手のご機嫌取りばっかりしてるようなお利口さんは嫌いだな」


「………………」


きっとこの人は俺が他人の顔色を伺うことが得意な故に、ああいった表面上には出ていない感情すらも察することができてしまうことすらもお見通しなのであろう。


いったい朝ご飯は何を頼むのが正解なのかを悩んでいることはおろか、今の俺の心情に気が付かないはずもなく


「その反応、私以外にも言われたことがあるっていう反応だね。まあ、ソウジちゃんのそんな顔を見るまでもなく、ここにいる人達はレミアを除いて全員同じことを一度は言っているであろうことは容易に想像が付くけどね」


今ママが言ったことは全て本当のことであり、悔しいが反論の余地がない程までに何1つ間違っていないのが事実。


しかしどうやら1人だけそれでも納得のいかない人がいたようで


「ちょっと待ちなさいルリア」


そう言いながらママの肩を掴みだしたお母さんに対し、当の本人はというと、どこ吹く風といった感じで


「どしたの、そんな怖い顔しちゃって?」


「どしたの? じゃないわよ。なんで私だけ当たり前のように省かれてるのかしら? 言っておくけれど私はミナよりもこの子のことを理解している自信があるくらいには、ちゃんとコミュニケーションを取っているし、エメの次に付き合いが長いのだけれど」


「確かにその辺は事実なんだろうけど、だってレミアって昔から子供の相手をするの下手…あー、下手ってのは言い方が悪いから……不器用じゃん!」


「ふっ」


「他人事みたいな感じでレミアのこと笑ってるけど、ソウジちゃんはこの子とは比較にならないくらいの重症でしょうが。……っていう話は一旦置いておいて、そろそろ朝ご飯なにがいいか決まった?」


「えっ⁉」


ママの性格上ここからもう一段階からかいの言葉が続くとばかりに思っていたため、この発言はあまりにも予想外のものであった。

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