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第20話:女心が分からない (下)

「これは例え話なんだが、今はミナが一番好きで二番目にリアーヌさんだとする。だがその差は僅差な為いつ俺の気持ちが変わるか分からない。もしかしたら明日にはミナが二番になってるかもしれないし、それ以降一生二番のままかもしれない……。本当にそれでもいいのか?」


確かに2人のことは好きだし、出来ることなら2人と付き合いたいとすら思っている。それだけミナとリアーヌさんは魅力的だし、ずっと一緒にいたいとすらも思っている。だがどうしても差が出てしまうことに後ろめたさを感じずにはいられないのだ。


「別にいいですよ。もし私がソウジ様の中で二番になったのなら、今度はあなたの一番になる為に頑張るだけです。これはリアーヌも同じだと思います」


「そうですね。相手がお嬢様だろうとご主人様の一番になる為なら関係ありません。全力でいかせていただきます。それにご主人様は考えすぎです。あまりそういうことは気にされなくても大丈夫ですよ」


「そうですソウジ様。先ほども言いましたが王や貴族というのは複数の妻を娶っている方が多くいます。それに先ほどは多くの女性を侍らせて一種のステータスとして利用することは悪であるかのように言いましたが、これは確かに相手を見る時の判断材料にもなりえます」


「その理屈は分かるが、自分の好きな子が政治の為の道具みたいな感じがして嫌だ」


「そんな突然子供みたいに拗ねないで下さい。それにこの話にはまだ続きがあります。先程の続きですが、何も多くの女性を侍らせているから凄いというわけではありません。だってただ侍らすだけなら誰にだって出来ますからね。そこで一番重要になってくるのは…どれ程その女性達が相手の男性に対して好意を持っているか、また男性側はどれだけ相手の女性を大切にしているかということです」


「つまり……その2つで相手の人間的魅力や手腕がある程度見えてくるって言いたいのか?」


「そういうことです。よく出来ました♪」


なんかめっちゃ笑顔でミナが俺の頭を撫で始めたんだけど。……馬鹿にされてる感じではないから良いけど。


「では私からもうひとつ……。先ほどお嬢様が仰られた理由以外にもうひとつ女性を複数人侍らす理由があります。さてそれは何でしょう?」


おい、確か俺は2人に謝ってたんだよな。いつからこの会話はクイズになった? そして何となく答えが分かるのが嫌だ。


「人々の上に立つ者がそうすることによって一般市民の希望になるから。もっと詳しく言うと1人の男が複数の女を侍らすということは自国の安定を示す。ついでに自慢するかのように自分の街をその女と一緒に歩けば効果は抜群ってか?」


「正解です。これは1人の男性が複数の女性を侍らすだけのお金がある。つまりそれだけその国は潤っているという宣伝にもなりますので他国にも有効です。この問題はちょっと難しかったですのに凄いですねえ♪」


だから何でリアーヌさんまで頭を撫でる。………普通に嬉しいけど。


「まあ話を纏めると…王や貴族は複数の女を侍らせる必要がある。だがそれは強制ではないし、お互いが好き同士でないとあまり意味がない。だが坊主の場合は何の問題も無いし、姫様とリアーヌはお互いライバル関係になることによってより良い女になり続けると。もはやこれメリットしかなくないか?」


「なんかそうやって纏めてみると、お前何様だよって感じだな」


特に最後の方とか女は男を立てるのが当たり前、みたいな感じだし。昭和かよ。


「王様だろ」


「そうだった。……でもっ! それじゃあ2人が都合の良い女みたいだし、う~~ん、なんかヤダ‼」


「お前は子供か⁉ 大体坊主はもうこの国の王なんだからもうちょっと大人になれよ。あと、この2人をそんな甘く見るなよ。下手に女を増やそうものなら間違いなく説教だぞ」


「アベル‼ ソウジ様は背伸びをして大人のフリをしているのが可愛いんですから、余計なこと言わないでください!」


そこ⁉ 怒るとこそこなの? だいたいホイホイ女を作る気はないし、ミナとリアーヌさんの立場が特殊だから俺が選ばれただけで普通は無理だから。じゃなきゃ『年齢=彼女いない歴』なんてやってねーから。


あと別に大人のフリをしてる気は全くない。


「おいおい正気かよ姫様。リアーヌも何とか言ってやれよ!」


「そうですね~。まずはご主人様に余計なことを言ったアベルにお説教でしょうか?」


「はあ⁉ お前もかよ‼ おい坊主、さっき助ってやったんだから今度はお前が助けろ!」


う~ん、確かにさっきはアベルのおかげで助かったけどさぁ……。ぶっちゃけ今の状態なら俺が言った、『何でも言うことを聞く』っていうのが有耶無耶になりそうでラッキーとか考えてたのに。


「おい、そんなことより結局2人は俺に何をさせたいんだ? 言っておくが1人1個だからな」


「えっ? あ~、すっかり忘れてました、危ない危ない。そうですね~、私達は一度国に帰らなければいけないので行きと帰りの移動手段をお願いしてもいいですか?」


「ん? それは俺も分かってたから送り向かいくらいしてやるつもりだったんだけど、本当にそれで良いのか?」


「はい、それでお願いします」


「おっ、おう。ミナがいいって言うならいいんだけどさ。それで、リアーヌさんは何かあるか?」


「では私達が国に帰った時に私達の部屋にある荷物をこちらに移したいので、それをご主人様にお願いしてもよろしいでしょうか?」


「別にそれくらいならお願いされなくてもやるぞ。……俺ってそんなに小さい男に見えるか?」


「全然そんなことないですよ! ただ最初にお嬢様が控えめなお願いをなされたのに、メイドの私が欲張るわけにはいきません。ですのであまりお気になさらないでください」


そう言われるとちょっと不満が残るとはいえ納得せざるを得ないな。だからと言って無理難題を押し付けられても困るんだけど。まあ今回は俺に気を使って簡単なお願いにしてくれたと考えることにするか。


この時俺はまだ知る由もなかった。全てはミナとリアーヌさんの完璧な作戦だったことを。






俺らの話が終わってから少しすると、扉の開く音と同時に


「どうですかお兄ちゃん! このお洋服似合いますか?」


「おお、似合ってるぞアリス」


「ソージ兄! うちは⁉ うちも似合う?」


「勿論サラも似合ってるぞ。というか全員似合ってる、似合ってる」


この流れだと少なくともあと3回は続くことに気付いた俺は、本当のことなのでそう言うとエレナとリーザは素直に喜んでくれたものの……セリアはというと


「駄目ねソウジは。女の子を褒める時は1人ずつ、そして全員に違う感想を伝えてあげるものよ」


「あーもう‼ ホントお前は大人だな!」


「そうじゃぞソウジ。ということでわらわはどうじゃ?」


「お前はさっき聞いてきただろ」


「あの時はマイカと話しておって無視しおったじゃろ。しかもわらわを図々しい奴みたいに扱うことでマイカと良い感じになりおって」


うん、確かにティアを無視した。そして言い方が悪いがマイカと良い感じにもなれたし、8割くらい俺が悪い気がする……が!


「お前俺から袋を貰ってすぐに部屋から出てったろ? だから素直に褒めたくない。でもセリアは別。……大人っぽい性格とういうか雰囲気のおかげでそのメイド服、結構似合ってるぞ」


こいつ他の4人に比べて1人だけ大人っぽいのに加えて、胸が大きいからコルセットによってそこが強調されててエロい。多分だけどマイカより大きいんじゃないか? 絶対に口が滑っても聞けないけど。


「ふふっ♪ 今回は私を褒めた後に頭を撫でてくれたから及第点ぐらいはあげるわ」


「そりゃーどうも」


セリアって実年齢より大人っぽいからついミナ達と同じように接しちゃうんだよな。本人は気にしてないみたいだから直す気もないけど。


「よし、それじゃあ折角みんなメイド服に着替えたんだし、夜ご飯の準備をするから手伝ってくれないか?」


「「「「「はーい!」」」」」


「それじゃあ、先にキッチンに行っててくれ」


ふむ、何となくだが子供の扱い方が分かってきたぞ。


「よし、5人はキッチンに行ったな。……エメさん、さっきはありがとうございました」


「何のことですか?」


「エメさん、子供達に俺らの会話が聞かれないように途中で連れ出してくれたでしょ? 正直あんまり聞かせたくない内容だったので助かりました」


そう、実はアリス達5人は俺がセレスさんに助言を受けている間にメイド服に着替えることを餌に、他の部屋へと連れ出してくれたのだ。セリアだけは残ろうとしたのでエメさんに引っ張られてたが。


「そうですか、旦那様のお役に立てたのなら良かったです……が! 今後は気を付けてくださいね」


「はい、すいませんでした」


「確かに子供達を連れ出してくれたのは助かりましたが、エメさんにもソウジ様の……私達を想って反論してくださっている姿を見てほしかったです」


「あの時のソウジ君、物凄く真剣でティアさんですら茶化さなかったしね」


「うむ。わらわも長い時間生きてきたが、あのような考え方をする者は初めて見たのう」


「それはそれは。あとでゆっくりお話をお聞かせください」


頼むから俺のいないところでやってくれよ。

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