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世界最強の元一般人 ~どん底の天才、異世界で一発逆転を狙う~  作者: ITIRiN
第十五章

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第213話:たかが温か冷か。されど温か冷か

やはり我が国の騎士団は騎士団団長よりも、そこに所属する団員の方が優秀だったらしく、俺の気持ちを察した6人がアベルの空気の読めない振る舞いを窘めたことにより、ようやく本日の夕食で出す予定のうどん作りが開始された。


「よし、まずはそのデカい鍋でお湯を沸かせ。ああ、蓋を閉めるのを忘れるなよ」


そう言うと早速アベルは言われたとおり鍋の蓋を閉め、ガスコンロに付いている点火ボタン始めたまではよかったのだが。


それを押した時に鳴る『チチチチチチチチ』という音が聞こえてくるのみで、一向に火が付く気配がない。


まあ、当たり前のことなのだが。


………ここまでくると呆れを通り越して、さっきまでイライラしていた俺が間違っていたんじゃないかと思えてくる程だな。


なんてことを一人心の中で呟いている間もアベルはただひたすらに点火ボタンを押しては離してを繰り返している。


「おい、一回落ち着け。あと先に言っておくけど別にこのコンロは壊れてないし、魔法も魔力も必要ないからな」


「………そうやって急に優しくなられると気持ち悪いな」


「優しくなったんじゃなくてもう怒るのにも疲れたんだよ。分かったらまずその無意味な行為を止めて、ガスの元栓を開けろ」


「えーと、このつまみを捻ると90度動いて、『開』の文字がここに書いてあって……」


流石のお坊ちゃんでも少しは自分で考えることができたらしく、なんとかガスコンロの仕組みを理解しようと試行錯誤すること約1分。


「やっと火が付いたか。ああ、言ってなかったけど火力はそのまま強火で良いからな。ってことであとはお湯が沸くまでこのまま待機」


「ふーん、ちなみにこの量の水だと何分くらいで沸騰するんだ?」


「一般家庭のガスコンロだったら40分くらいだろうけど、これなら20分くらいじゃないか」


「20分⁉ おいおいそんなに時間が掛かるとか、その間に俺は何をして待ってればいいんだよ。このまま待機とか、時間の無駄にも程があるだろ」


「その空き時間の間にエメさん達は他の料理の下準備をしたり、作ったりしてるんだよ。本来であればお前が言う無駄な時間なんてものは存在しないんだ。分かったらお湯が沸くまでの間に少しは自分の行いに対する反省でもしてろ」


ここで恰好だけでも反省してくれていればよかったものの、そうはいかないのがアベル・アベラール。


『じゃあ何か別の作業もやらせろ』だの『エメは兎も角、アリス達ができて俺にできないわけないだろうが』などなど。


大変無謀であり大変失礼な発言が数多と聞こえてきたが、それら全てを聞き流すこと約20分。


俺が予想した通りの時間に鍋の蓋が『カタカタカタ』と音を鳴らしながら揺れ始めた。


「ほら、お望みの時間がきたぞ。早く鍋の蓋を開けろ」


「なんか納得いかねえけど、まあいいか」


この男は本当に料理のりょの字すら知らないらしい。


どうせお湯の沸き具合でも気になったのであろう。


鍋の蓋を持ち上げると同時に自身の顔をそれの真上へと持っていき、中身を覗き込んだ瞬間


「アッツ⁉ アツ、アツ、アツ、アッツ‼」


当たり前のことながら高温の湯気が奴の顔面を容赦なく襲った。


「熱いのは分かったから早く麺をその鍋の中に入れて茹でろ。あとこれ調理用の大スコップな。これを使ってちゃんと麺をほぐしながら茹でるんだぞ」


「馬鹿か坊主‼ 流石の俺でもこんな無茶苦茶な調理方法がこの世にないことくらいは簡単に想像が付くぞ! どうせあれだろ? 本当は鍋の蓋を開けてから少しすると湯気が出なくなるから、それから次の作業に移るってのが本来の手順なんだろ? 俺が何も知らないからって適当な事ばっかり言ってんじゃねえぞ!」


「何も知らないなら黙って俺の言うことを聞けよ。ほら、代わりに150人分のうどんを入れてやったから早くスコップで麺をほぐせ。ちなみに今回使ううどんは太めのやつだから15分くらいは茹でる&ほぐす続けろよ」


あまりにもギャーギャー五月蠅いため微かに残っていた魔力を全て使いうどんを鍋の中に入れてやった後、別作業中の6人に俺の言っていることが嘘ではないことを証言させたことにより渋々ながらも納得したらしいアベルは


熱気をもろに浴びているせいでかなりの汗をかきながらも、ただひたすらにうどんを茹で続けること15分。


「おい坊主、そろそろお前の言った時間になったんじゃねえのか?」


「流石は腐っても騎士団の団長を務めてるだけはあるな、丁度ピッタリ15分だ。ってことで火を止めていいぞ」


「っは~~~、熱かった~~~」


「誰が鍋から離れて休んでいいって言ったよ? んなことしてたら麺が伸びるだろうが。さっさと隣にある冷水入りの鍋にそのうどんを移し替えろ。冷やした後はこのざるに移して冷水でサラッとすすいでぬめりを落とし、最後に水気を切る、その後盛り付け等々まだまだやることは沢山あるんだからな」


「あんだけ熱いおもいをしたってのに、今度はそれを冷やすのかよ。こんなのわざわざ別の鍋に移し替えたりしないで冷却魔法を使えば一瞬だろうが」


「できもしないことをグチグチ言ってねえで早く手を動かせ。あと少なくともエメさんやリアが作ってくれる料理には一切魔法なんて使われてないからな」


ここまでの工程に加えて今の発言を聞いて何か思うところがあったのか、それからは一言の文句も吐くことなく、俺の指示に黙って従いながら夕食の準備を進めていき……。


何だかんだとあったものの無事、約150人分の冷やしうどん・お稲荷さん・キャベツと豚肉のにんにく醤油炒めの3つが完成した。


それからアベル一人に人数分の配膳を行わせた後、当分の間家に帰りたくない俺はその原因の根源と共に男子寮を後にした。


そして今度はリーダーがいるであろう警備室へと向かって歩き出した。

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