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第196話:ソウジ・ヴァイスシュタインが成し遂げた偉業の凄さ(レオン視点)

あれは今から17年と少し前。


つまりは兄貴が死ぬ数か月前の話。


あの時は今と違ってどこの国でも娼館や男娼が結構公に運営されていた。


まあ流石に各国ともそれを正式に認めているところなんて一国もなかったのは今も昔も変わらないけどな。


て感じで俺達は兄貴が旧ボハニアの国王から与えられたここを活動拠点及び安定したシノギの手段として利用していたわけだが、それに亀裂が入り始めたのは地球でいうクリスマス当日の朝。


奴が第一犯行国として選んだのはマリノ王国。


そして第一被害者となったのはマリノ王国内で一番の人気を誇っていた売娼婦だった。


遺体の発見場所は彼女がいつも客引きを行っていたとある路上。


また残された血痕などから犯行現場も同一であるとされており、深夜の客引き中に襲われたのではないかと推測されている。


ちなみにこの時の被害者は鋭い刃物によって喉と腹部を切り裂かれていた他、切られた腹からは子宮が抜かれていたという。


この事件が載った新聞を見た時兄貴と姐さんはこんな会話をしていた。


『もしもこの事件の犯人が俺の思い浮かべている男と同一人物であった場合、次は来年の1月中にまた別の国の娼婦が殺されるだろうな。それも同じ状況かつ同じ方法で』


『あら、そうなると次の被害者からは膀胱でも持ち去るのかしら? あと挑発的な手紙はこの世界の警察組織的存在である騎士団宛(次のターゲットとなる国の)に送るのか、それともギルド宛に送るのかも気になるところね』


『そのあたりはどうだろうな。ロンドンでの事件の時は臓器を持ち去り始めたのは二人目の被害者からだし、そっちも変えてくる可能性は大いにあり得るだろうよ』


それを近くで聞いていた俺は正直そんな馬鹿げたこと起こるはずがないと内心では思っていた。


しかし現実は兄貴達の方が正しかった。


1月はスロベリア王国の娼婦が喉と下半身を切り裂かれた状態かつ、膀胱だけが持ち去られた状態で。


2月はクロノチア公国の娼婦が喉と上半身を切り裂かれた状態かつ、両胸だけが持ち去られた状態で。


3月はアンドレ帝国の娼婦が喉を切り裂かれた状態かつ、心臓だけが持ち去られた状態で。


それぞれが遺体となって見つかった。


もちろんそんな事件が毎月起きれば世間は大騒ぎだし、各国の騎士団はもちろん国民によって結成された自警団の奴らも躍起になって犯人捜しを行った。


しかし結果は犯人の目撃情報はおろか手掛かりすら掴めない状況。


分かっているのはこの連続殺人鬼が娼婦ばかりを狙っているということのみ。


ともなれば自分達が住む国に娼婦がいるのが、娼館があるのが悪いのではないかと考えだす人間が出てくるのも時間の問題というもの。


現にそれが理由でウチ以外の娼館は全て店を閉めたし、暗黙の了解とはいえ各国それの営業を全面禁止しているどころか程度は違えどかなりの罰則が設けられていたりもする。


ちなみにウチが営業を続けられていた理由としては単純に旧ボハニア王国側の人間が誰一人として兄貴に逆らえなかったからというのと、あの人が勇者召喚された者のという肩書があったからだ。


まあ要は得体の知れない殺人鬼が自分達の国に来ようとも何とかしてくれるだろうという気持ちが後押しをしていたのであろう。


正直俺も残るはこの国だけという追い詰められた状況にも関わらず呑気に構えていたし、この娼館に予告状と一緒にこれまでの被害者から持ち去ったのであろう各臓器等が送られてきた時も


『わざわざ自分から犯行予告をしてくれるとは随分とご丁寧なことで。こんなふざけた奴俺と兄貴で返り討ちにしてやるよ』


なんて軽口を叩いていたりもした。


しかし実際は17年前の昨日、5月17日。


旧ボハニア王国によって召喚された兄貴はあの日生まれた自分の娘の顔を見る前に、召喚国不明の―――と相打ちという形で命を落とした。






(あの当時、最強の称号を意味する勇者ですら相打ちが精一杯だったという事実は各国にかなりの衝撃を与えた。


その影響もありさっきも言ったがこの国以外では性サービスの類の店は全て禁止されている。


にも関わらずコイツは何も知らなかったとはいえ警備面に関しては一切触れずに今回の提案を自国民どころか世界を相手に通して見せた)


(それだでも凄いことだっつうのに加えて一般人からしてみればあまりいい見られ方をしない商売をたった一週間で、しかも多少お姫様達の助けがあったとはいえほぼソウジ一人で国家公認にしやがった)


(こんなの歴史に残るどころか、未来永劫語り継がれるレベルの偉業だぞ)


(それを本人には絶対に伝えるな。とかいう無理難題を一方的に押し付けやがって、あの腹黒お姫様が)

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