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第191話:答え合わせ

「ッ、あーーーーー‼」


いったい何が俺を動かせたのかは分からない。


もしかしたら二代目に対する恐怖心が限界に達して自暴自棄になったからかもしれないし。


もしかしたら恐怖という気持ちよりも怒りという感情が勝ったからかもしれないし。


もしかしたら単純に頭がおかしくなっただけかもしれないし。


もしかしたらこれ以上ミナの前で情けないところを見せたくないからという、らしくもない理由からかもしれないし。


もしかしたら今言ったうちのどれでもなく、まったく別の理由からかもしれないが


兎に角何か喋り出さなければ!


なんでもいいから声を発さなければ‼


という気持ちは間違いなくあったのであろう。そしてその思考及び行動はどうやらこの場で一人だけ何らかの実力が不足していたゆえに置いてけぼりにされていた俺を仲間に入れてくれるだけのものだったらしく


二代目は相変わらずの極悪人面を自分の右手で覆いながら


「くくくっ………だはははははぁ‼」


とこの場には似つかわしい大笑いをし出したかと思えば、今度は先程まで隣で優しく手を握ってくれていたミナが俺の右腕にぎゅ~っと抱き着いてきただけでなく大変満足げな表情でこちらを見上げてき


「確かにソウジ様は毎回強引な戦い方をなされるとはいえかなり強いです。しかしそれはティア様の指導を受けている戦闘面においては…です。そして今回あなたがその身をもって経験されたであろう事象やそれの対処法に関してはまだ誰も教えていません」


「………はぁー、はい」


なんとか自力で声を出せたとはいえまだ本調子ではないうえ、さっきから頭の中が混乱しっぱなしなため『何言ってんだろコイツ』という正直な気持ちが言葉に出てしまったもののミナはそれを『そんなものガン無視しますね♪』と言わんばかりの満面の笑みを浮かべながら


「つ・ま・りですね?」


とそこで一度言葉を切ったかと思えば、俺の右腕に抱き着いたままスッと背伸びをしてき彼女の口元が自分の耳元にあることに気が付いた瞬間


「(よく一人で頑張りました……んっ♡)」


そう小声で囁いてきたのに続け頬に軽くキスをしてきた。そして背伸びをやめ再び自身の両足が地面についている状態へと戻りつつも、その他はやめるつもりがないらしく人に抱き着いたまま…二代目に向け続けている殺意とは真逆の私、今物凄く幸せですオーラを増幅させ、表情にもこれでもかという程までに現れている彼女を黙って横目で眺め続け


………………。


……………。


………。


……。


…。


「はぁ~、こんなに笑ったのは久々だぜ。ってことでここから先はさっきの続きといかせてもらうぜ?」


恐らくさっきの続きというのはミナが俺達の間に入ってきた際に一言目に発した『少々お約束が違うのではないでしょうか、レオン様?』という言葉に繋がっているのだろうが


当の本人はというと…二代目に対する全てを何一つ変えることなく、しかしそれをレオンは『ご勝手にどうぞ』と受け取ったらしく


「さて、ここからは答え合わせだ。まず大前提として俺はお前のことを…ソウジ・ヴァイスシュタイン及び白崎宗司が自分の領域にほんの少しでも干渉することを、森羅万象レベルで全てを認める気がなかったし、現に一ミリも認めていなかった」


「つまり俺がお前を半殺しにしたことで態度をガラッと変えたのは演技だっただけでなく、宿屋の全責任を勝手に一人でイキって背負い込んだ際には『もしアイツがこの件で少しでもヘマしたらそれを口実に約束が違うだのなんだのって言ってやろう』と……画策していたと?」


ミナのおかげで少し落ち着きを取り戻すことができたことにより、頭が回るようにはなったもののどうしてもまだアイツに対する謎の恐怖感を克服することができていないせいで自身の声が震えてはいたが、しっかりと自分の思ったことを喋ることはできた。


そしてそんなまだ本調子ではない俺を二代目は馬鹿にするわけでもなければ、再度追い込んでくるわけでもなく


「ふーん、どうせただの他人から貰った力頼りのイキり小僧かと思ってたんだけど…隣にお姫様がいるとはいえこの状況下でそこまでの予測をし、逆に自分から答え合わせをしてくるとは意外と骨のある奴だな」


「……んんっ、いいですかソウジ様。まずあなたが今抱いているその恐怖心はいったい何が原因なのか? ズバリ、それは他人を信用した結果こうも容易く裏切られたからです」


「………………」


「人間誰しも予想外の裏切りを受ければそれ相応のショックを受けます。しかしソウジ様は物凄く賢いのでただ裏切られたのではなく、何かもっと想像を絶するクズみたいな計画が裏にはあったのではないか…と感覚的にとはいえ気付いてしまっていたのです」


「………………」


へー、俺スゲェじゃん。これってルナから貰った力を一切使わずにってことだろ? ははぁ、流石俺。超スゲェは。


「レオン様に対して感覚的に危険を察知し、恐怖心を抱いている。しかしそれが何なのかは未だに分からないにも関わらず、自力でそれをねじ伏せただけでなく自分からそちら側へ踏み込んで見せた先ほどのソウジ様の言動を見て彼は『意外と骨のある奴だな』と言ったのです。ですからそのままもう少しだけ頑張ってみてください」


未だ奴に対する恐怖心が消えたわけでもなければ、こうして引き続き抱き着いてくれているミナのおかげで何とか持ちこたえている状態の人間に対してそう言ってきたかと思えば


再び背伸びをし、俺の耳に彼女の吐息がかかるくらいの距離まで近づいてきてから


「(……私達の旦那様ならそれくらいできますよね?)」


「………………余裕」


「(ふふぅ♡)」


誰が聞いても分かるレベルで自分が発した言葉とそれ以外の全てが真逆だったろうに、大変満足そうなミナのことを見て業を煮やしたのであろう二代目が


「人が話してるっていうのに勝手に割り込んできた挙句、勝手にイチャイチャしてんじゃねえよ。そういうのはこっちの要件が済んでからにしろ」


「………別にこちら側としてはただソウジ様がそうしたいと仰っているから黙っているだけであって、正直それさえなければどうとでもできますし…何ならどうとでもしてしまいたいというのが私達の本音でもあったりするのですが…その点に関してはもちろんご理解いただいておりますよね、レオン様?」


「はーあ、突如この国に念願の探し人が訪れたかと思えばこれまた突如現れた異世界のガキのせいでその日のうちにこっちの計画が全てパーになったは、その件で仕返しをするどころか逆に半殺しにはされるはでとことんツイてないなと思っていたところにカモが葱を背負ってきたってことで」


とそこで一度言葉を切ったレオンはまるでせめてもの意趣返しといったところであったのだろう。相変わらずの極悪人面でこちらを睨みつけてきたのだが


先程のミナの言葉で圧倒的優位な立場にいるのは果たしてどちらなのか? を思い出せたことによりかなり心に余裕ができたところでのアイツのこの発言。


人がリアルに命を削ってまで頑張ったっていうのに実は陰でカモ葱言われてたとか、普通にイラっとくる…くるんだけど。


ここで元陰キャの俺が、しかもルナから貰った力を使ってぶん殴ったらイキりもいいところ過ぎて普通に嫌だな。よし、我慢だ我慢。


最悪この気持ちを目の前の男にさえ気付かれなければ俺は負けていないも同然だ。 たとえ隣にいる女の子には全てバレていたといしても、微笑ましいそうに見守られていたとしてもな。


「………チッ、他人から貰った力でイキって調子に乗ってるであろう男を乗せるだけ乗せてやって、国家公認の性的サービスを売りにしている店の営業の実現という無理難題を自分から引き受けさせる。そうすればあの事件を知っているマリノのお姫様達は絶対に反対するはず。


あとはその件を却下されたって話を聞かされたところで約束が違うということを口実に、計画を立てた17年前とは国名や相手がガラッと変わっちまったとはいえ予定通り国落としへの一手を打ってやろうと最後まで油断せずに息を潜めながら反撃の機会を伺っていたっていうのに……


手前(てめえ)んとこの元飼い犬2匹に手を嚙まれるは、そのせいでお宅のお姫様に寸分の差のところで先手を打たれたことにより八方塞がりどころか…ぽっと出の奴らのせいであの日からの全てがおじゃんになる可能性が出てくるはで内心穏やかじゃなかったどころか、最初の数日は腸が煮え返るを超えてほんの少しでも隙を見せた瞬間に足元をすくってやろう―――」


「という大変汚いことをですね、ソウジ様が寝る暇も惜しんで頑張っていた間にも何の罪悪感を抱くわけでもなく…逆にそんな自分を正当化するかのように堂々と考えていた底なしのクズ男なんですよ、この方は。ということで少なくとも私はこの人が大っ嫌いですし、できることならレオン様には今日この場で金輪際ソウジ様との関係を断ち切りますと誓ってほしいくらいです」


「おい、ちょっと待て⁉ アンタのその言葉の一切に嘘がなかったのは認めるが、あたかもそれが全てみたいな感じで喋ってんじゃねえよ‼」


俺がここに来てからずっとコイツに恐怖してた理由自体はさっきミナに教えてもらっから頭では理解できてたけど…なんかやっと実感したって感じだわ。


「ははぁ………お前死ねよ、マジで」


「あー、待て待て待て!確かに100:0で悪かったのはこっちだけど、いきなりヘラるな‼」

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