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第189話:自己評価も0点

俺の知らぬ間に勝手に開催が決まっていた『ソウジ・ヴァイスシュタイン陛下による

自国民参加型の公開討論会』とかいうふざけた質疑応答を何とか乗り切り、ミナが助け舟を出してきた直後は


ちゃんとミナに教えられたことは全て実践出来ていたし、何ならまだ理屈しか習っていないにも関わらずぶっつけ本番で成功出来ちゃったし? これは100点満点とまでは言わずともかなり上出来だったんじゃないですか?


なんて調子に乗ったことを本気で思っていたのだが………。


ミナによる『一ヶ月後に行います『成人向け店舗の営業継続』の賛成か反対かのご投票をお願いいたします』云々というアナウンスがあった後そのまま閉会のあいさつをし始めため、俺はそれに合わせて何事もなかったかのように一度国民のみんなに一礼した後一人出口へと向かい退出したまではよかったものの


実は建国宣言時程ではなかったにしろ、やはり今回も公の場ということもあり全校集会の校長の話くらいには長いそれを聞いているうちにどんどん冷静になっていき…途中から


やっべーーー、何が100点満点だよ‼ ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞ俺‼ よくよく思い出したらミナにやっちゃダメって言われたことはやってるは、自分で仕組んでおいた罠は回収し忘れるてるだけじゃなく………相手が勝手に見せてきた超超超大きい隙をまんまと見過ごすとか愚行中の愚行だぞ⁉


まあ最初の二つを忘れてたのはまだ…よくはないけど! 最後のあれだけはマジでヤバい‼ なんたってあれはミナによる王族教育を受けた初日の、しかも一番最初に


『いいですかソウジ様。今日から私があなたの先生として主に王族として必要になってくる話術や交渉術といった様々な対人能力の術をお教えしますがその前に一つだけ。


………こちらが意図したものではなく相手が勝手に見せてきた隙。それが例え小さかろうと大きかろうと、発言者が失態に気付いていようといなかろうと関係なく、それが見えた瞬間から常にこちら側はそれを見逃していないぞという無言の圧を掛け続けてください。


例えどんなに自分が不利な状況下にあったとしても、相手の方が格上なせいでそれを上手く利用できないと分かっていてもです。


何故ならそうすることによってもしかしたら0%だった可能性がほんの少しかもしれませんがそれが上がる場合もあります。極端な話こちらが知らないだけであっちからしたら今そのミスを突かれたら自国を傾けられかねないと恐怖していることだってあり得るのです。


だから絶対にこれだけ覚えておいてください。そしてもしそういった場面に自分が立ち会った時は取り敢えず今言ったうちのどれか一つだけでも、ほんの些細なことでもいいので実践してください。そうすればあとは私達が何とかしてあげますから』


って言われたもん! しかもしかもしかも⁉


最悪ミナ達に助けてもらえるとはいえ、大前提として俺が相手の失言なり失態に対して常に『さっきのお前のそれを見逃していないぞ』っていう圧を掛け続けなきゃいけなかったのに途中から完全に忘れてたし‼


「……………………」






ということで可能な限り、少なくとも今日一日は家に帰りたくない俺は一先ず二代目に今回の件についてのお礼を貰いに行くかということで早速宿屋前へと転移すると


丁度宿屋前の掃除をしていたらしい一人の用心棒見習いが凄いスピードで背筋をピンと伸ばし、相変わらずヤクザらしいドスが利いた声で


「ソウジの兄貴、お疲れ様です‼」


「お疲れさま~。ちょっと聞きたいんだけどさ、二代目ってもう帰ってきてる?」


「レオンの親父ならついさっき荷物を取りに一度帰ってきましたけど、また出掛けていきましたよ。親父に何か用ならこの国の墓地に行けば会えると思ますけど……兄貴、もちろんここに来る前に一度ご自宅には戻られたんすよね?」


俺の緩い返事につられることもなく引き続きおっかない声で二代目の居場所を教えてくれたかと思えば、今度は喋り方や声音はそのままなのにどこか柔らかい雰囲気を感じさせながらそんなことを聞いてきたため


「はあ? なんで?」


決して冗談でもなければ、とぼけているわけでもなく完全に素でそう返すと


「なっ、なんで⁉ ……っすか」


よっぽど俺の返事に驚いたのだろう。いつもの敬語ではなくタメ口で質問返しみたいなことを言ってきたかと思えば今度は俺達の目の前にある宿屋の玄関扉が開き


若干際どい服を着た女の子がそこから出てきたところで偶然その子と目が合い


「あれ、陛下じゃないですか? こんなところで何してるんですか?」


「おっ、丁度いいところにきた。ちょっと聞いてくれよ! 兄貴ってばここ一週間ほとんど家に帰ってなかったどころか姉さん達ともまともに顔さえ合わせてなかったってのに、大仕事終わり一番に来たのがここだって言うんだぜ⁉ しかも用事の相手はレオンの親父だって言うし」


「えっ、陛下………それ本当ですか?」


「お前らの会話で俺の行動に対してドン引きしてることと、その理由に察しはついたし一ミリも反論できねえけど一旦それは置いといて。仕事以外でそういう服は着るなっていつも言ってるだろうが」


「えー、この服は陛下に注意されてから買ったやつのうちの一つ&仕事着じゃなくて私服なんですけけど。これでも駄目ってちょっと過保護すぎません?」


確かに初めてここに来た時に見た仕事着姿ことノースリーブ・胸元、背中は大きく開いてる・くるぶし近くまで丈があるにも関わらず下着が見えないギリギリまでスリットが入っているドレスに比べれば


今日着てる服は半袖のオフショルダーとはいえ胸元は開いていないどころか逆に見ようとしても見えなさそうだし、下に履いてるショートパンツも別に極端に短いわけでもなければ奇抜なデザインをしているわけでもなく


といった感じであの時に比べれば雲泥の差と言っても過言ではないレベルでの違いようなのだが


「彼氏でも旦那でもない俺が言うのもあれだから取り敢えずそのオフショルダーとショートパンツに関しては何にも言わないけど……私服でへそ出しにする理由がどこにあった? あとどう考えてもまだ季節的にその恰好は薄着過ぎるだろ、馬鹿かお前は?」


「ちょっ、いくら陛下とはいえ人に向かって馬鹿って何ですか、馬鹿って⁉ 言われなくても外を歩く時はちゃんともう一枚上に着・ま・す‼あとこのへそ出しコーデは陛下の世界の女の子達の流行を参考にしてるだけであって別に常識の範囲内なんですけど」


「さっきこいつも言ってましたけど本当、兄貴はここにいる奴らに対して過保護っすよね。その優しさを少し俺達にも分けて欲しいっすよ」


本人は冗談のつもりで言ったのだろうが、それを冗談で聞き流すわけにはいかない俺は用心棒見習いに対して本気の殺気をぶつけながら睨みつけてやり


「そういう少しの気持ちの緩みが後々大きな問題へと繋がりかねないって教えたよな?」


「――――――っ‼」


「チッ、これじゃあ説教の順番が違うな。………お前、俺が一番最初に教えた『ここの用心棒及び用心棒見習いとして働いていくうえで絶対にこれだけは守れ』ってやつ覚えてるか?」


「おっ……俺達用心棒の仕事は年齢・性別・その他諸々・全て関係なくここで働いている従業員をあらゆる危害から守り抜くと同時に、自分達のことも例外なく守り抜くつう、超ぶっ飛んでて無茶苦茶で常人が聞いたら矛盾してるだろと言いたくなるような教えならバッチリ覚えてるっす‼ さっきの件、ほんとっすんませんした‼」


流石はまだ下っ端とはいえヤクザの一人。俺がこいつにぶつけた殺気の度合はティアがうちの騎士団に所属している馬鹿四人に向けたものと同程度であったにも関わらず


最初の一言目がつっかえただけでその後はちゃんと目を合わせてきただけでなく、ハッキリと最後まで喋り謝罪までして見せたことに対して一人心の中で関心していると


「私達の為に怒ってくださったところあれなんですけど……そろそろお家に帰った方がいいんじゃないですか? 早くしないと今度は陛下が奥様方に怒られちゃいますよ」


「………うるせぇ、ほっとけ。というかお前はいつまでそんな薄着で外にいるつもりなんだ? 風邪引くからさっさと中に戻るなり上着を着てくるなりしろ」


「「………………」」


「なんだその二人して『あ~』みたいな顔しやがって」


「いや、ただこれが先日兄貴に教わった『都合の悪いことから話を逸らす』ってやつか~と思いまして…つい」


「ちなみに私は…これがこの間陛下から教わった『自分のことは棚に上げて云々』ってやつか~って思ってました」


実は娼館・男娼で引き続き働く働かないの面接をしたはいいものの、果たして今後も当人の意思確認だけでいいのだろうか?


本当は教養がないせいで他の可能性を想像したり考えたりすることが出来ていないのではないか?


ということで今日の為の準備と並行してここで働いている人達は全員例外なく俺の(大変お粗末な)授業を受けさせていた結果が早速こうして目に見える形で現れたものの、今の俺にとっては大変都合が悪いため


「………んじゃ、俺はこれで」


ただ一言、一方的にそう言った後俺はそのままこの場を離れるためだけにノータイムで転移魔法を使用しこの国にある墓地へと転移した。

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