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第184話:質疑応答(上)

「では早速ですが何かご質問等ございます方がいらっしゃいましたら挙手をお願いいたします。また今回席が全て埋まってしまい会場に入れなかった皆様に関しましてもその場でお手を挙げてくださればこちらで把握することが可能でしたので、よろしくお願いいたします」


ちなみにミナに指名された質問者に関しては当てられた人の足元が光る仕様になっているらしい。なんてことはどうでもよくて……


えっ、確かにすごい人数だなとは思ってたけど満席ってマジ? というか満席であってなお訓練場の外に各所設置してあるモニター前にあんだけの人で溢れてるってことは……ほぼ全ての自国民が俺の一挙手一投足、一語一句に注目しているどころか…多くの他国の人間もそれに混ざってると考えないと明らかに人数が合わないんだが?


なんて俺が一人心の中でビビッていようがそんなのお構いなしといった感じで早速一人目の挙手者を指名したらしいミナが


「はい、それではそちらの女性の方」


そう言った直後、俺の目の前にある講演台から約3メートル程離れた場所にどこか強気そうな中年女性が転移してきたと同時にあちら側にも同じような台が出現したのに続き再びミナが


「私が挙手者の中からどなたかをご指名させていただきますと、このように自動的にソウジ陛下の向かい側にございます講演台の前へと転移するようになっております。ということで時間の兼ね合いもございますので面倒な自己紹介とか挨拶とかは抜きに皆様どんどんご質問等の方をお願いいたします」


「ミナ様がそう仰るのであれば遠慮なく…早速ですが陛下が考案したという娼館についてですが、あれは女性の人権を無視しているとしか思えないのですがそのあたりどうなんでしょうか?」


(あーあ)


誰に向けるわけでもなくたった今自分が抱いた感情をそう心の中で言語化したのち、一度深呼吸をしてから


「今回私が考案し営業を始めようとしている()()で働くことを希望してくださっている()()は皆様、ご自分の意思でしてこちらから無理強い等は一切しておりません。またお金が無いなどの理由で仕方なくという方が出ないよう()()()()()面接を行っております」


今回に関しては自分が直接面接を行ったものの今後も俺ないし、ミナやティアでそれを行うわけにもいかないので今後面接官は各娼館・男娼の代表に俺が作った噓発見器を使用してもらうことになっている。ついでに言えば一連の流れを記したマニュアルを作成済みである。


「今の陛下のお答えに対して何か()()()がございませんでしたら事前にお伝えしておりました通り時間の関係上、お一人様お一つの質疑でとしておりましたため別の方をご指名させていただきますがよろしいでしょうか?」


「………………」


「はい、それでは別の方でどなたか陛下へご質問したい方はいらっしゃいませんでしょうか?」


沈黙は肯定と取ったらしいミナは同情や哀れみといった感情を一切見せずに進行を再開させると同時に一人目の質問者を元の席へと戻し


「はい、それでは外に設置しているモニター越しに今回の公開討論会をご覧になってくださっているそちらの方」


次に指名されたのは先ほどとは年齢以外何もかもが真逆っぽいうえ、緊張しているせいか尚更気弱さが増していそうな中年男性が


「あっ、えっ…えっと……いっ、いつも本当に大変お世話になっておりますソウジ陛下!」


「いえいえそんな大げさな。逆に私のような者はあなたを含め国民の皆様がいてくださってこその人間ですのでお礼を言うべきはこちらですよ。本当にありがとうございます」


そう言った後、嫌みとかなしに本気で心からの感謝を込めて一礼をしてから


「今日この場は国民の皆様が私に言いたいこと・聞きたいことを仰っていただく為にご用意させていただいたのですから、別に立場や周りの目などお気になさらず軽い感じで言いたいことを言っていただいて大丈夫ですよ」


「はっ、はい‼ ありがとうございます‼ それでは一つご質問というか、これは完全に私の勝手な想像なのですが…恐らく陛下は金銭面で困っているからという理由でお店の方へ面接を受けに来た人がいた場合、ただ不採用にするだけでなく…最後は本人次第とはいえ他の仕事を紹介するなど何かしらのフォローをお考えなのではないかなと思っておりまして………」


そこで何故か言葉に詰まらせてしまったのを受け


一応この人にはさっき鎮静魔法を掛けておいたから緊張やら重圧やらの影響は完全に取り除けたと思ったんだけどなぁ。これに関しては治癒魔法に感覚が似てるからどっかミスったか?


なんて内心で疑問を抱きながらも、今の俺ではこれ以上どうこうすることができないため出来るだけ相手がリラックスできるよう一つ一つの言動を意識しながら


「ご自分の勝手な想像だからと遠慮せずに続きをどうぞ」


「もし私の予想が当たっていた場合、最初からそういったお店で働く気など一切ないにも関わらず就職先目当てでといった人達が出始めるのではないかと思いまして。実際そのあたりどのように考えておられたのかな、と」


どこかで見た顔だなと思ったら建国宣言時に行った求人募集に応募してくれた人か。ならそういった考えに自力で辿り着いてくれた理由にも納得だな。


「はい、まず大前提として先ほどもお伝えしました通り厳正な面接を行ったうえで採用不採用を決めるためそこで働きたくないと思っている方を採用することは絶対にあり得ません。また少し前にこちらが主催となり求人募集をさせていただきましたが、あの一回で自国民の皆様が就職先に困らなくなったなんてことは一切思っておりません。そのため自国の各店舗から頂いた求人募集を掲載及び、そちらをご紹介する施設を近日中にオープンする予定でおります。なのでそういったご心配は大丈夫だと思いますよ」


「あっ、そうだったんですね…よかった~。まあ陛下のことですからそこらへんも既に対策済みなのだろうとは思っていたのですが、こうやって直接お答えが聞けて安心しました。って、陛下に向かってこんな言い方失礼ですよね、すいません‼」


「そんな私のことを本気で心配してくださったが故にこんな大舞台みたいな場所でご質問をしてくださっただけでなく、そんな噓偽りのない心からの安堵を見せてくれた人に怒ったりしたら皆様の上に立つ国王として失格ですよ。改めてお礼を言わせてください。……ありがとうございます」


二度目のお礼の言葉を伝えた後、再びこちらが頭を下げると質問してくれた男性は緊張や畏れ多さといったものではなく純粋に照れくさそうな表情を浮かべながら


「陛下がこの国に来てからまだ短いにも関わらず、いくら時間があっても伝えきれないほど色んな意味で良くしていただいて…本当にありがとうございます‼」


と感謝の言葉で返してくれた。

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