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第182話:白崎宗司のかけら(下)

まあ幼少期の頃は人によって成長速度が全然違うなんてことはよくあることだし、同じ年齢でも生まれた時期が違えば違うほど成長度合いに差があるのは当たり前だしってことであまり気にしすぎるのもよくないのだろうけれど


………ブノワ相手には当然のこととしても、あまり私に対してもそういった態度を見せないにも関わらずユリーやナナといった身近な他人相手にはそういった態度を取る理由。


もしそれがあの子の親である()()()()のことが怖くて本当はしたかったことができず、今回のような場所でしかそういった言動が取れなかったが故に他の子よりも成長が遅れているというのであれば………。


ふっ、そういえばあの子の本当の両親は私達二人ではなかったわね。


なんて自虐めいたことを思ったところで丁度ナナとその子に連れられたソウジがこちらにやってき


「さっ、いつもみたいに椅子に乗せてあげますからちょっとだけ大人しくしててくださいね」


そんなナナの言葉に対し


「んっ」


先ほどまでの実年齢よりも若干幼い言動をとっていたソウジはどこへやら。今度は大人しいなんて言葉では片付けられないほどの年不相応過ぎる態度及び行動といった一連の流れを目の当たりにしたのもつかの間のこと。


そんなソウジの様子を見て私とはまた違った意味でなのだろうが驚きを隠せないといった感じの表情をしながらソウジのことを椅子に乗せてあげたナナは先ほど同様再び意識を切り替え


今度は2冊のメニュー表をそれぞれあの子の前で広げてあげた後、その隣で中腰になになりながら


「今日は何にしますか、ソウジ様?」


とにかく今自分がこの場を離れてはいけない、離れてしまえばこの子の心の中は今以上に何か得体のしれない黒く不快なもので埋め尽くされてしまう気がする。


といった私達がここにきてからまだ数分しか経っていないにも関わらず核心に限りなく近い予感を抱いてみせたのであろう彼女は一緒に何を食べるか決めようとしたのだろうが


まるでそんな気遣いなど一切不要と言わんばかりの速さで目の前のメニュー表に書かれている一つの絵を指さし、まったく感情のこもっていないな声で


「これでいい」


「お子様ランチ…ですか? いや、別にそれが駄目とかってわけではありませんけど……いつもレミアお母様かアンヌお母様のどちらかと来られる時は決まって大人向けのメニューからどれか一品をお選びになって、それを一緒に来られた方と半分こする。そしてそのかわりにお子様ランチにはないドリンクバーとソウジ様限定特製プリンをご注文というのがお決まりでしたのに………。まあ店員の私が言うのもあれですけど確かにお子様ランチの方が安く済みますし、そっちの方が経済的といえば経済的ですけれど……(まさかそこまで考えての選択というわけではないでしょうし…私の考えすぎですよね?)」


最後の部分に関しては誰かに向けてというわけではなく、あくまで独り言。つい心の声が出てしまったといった感じだったのだろうがすぐ隣にいたソウジには全て聞こえていただけではなく、しっかりとナナの発言の意味までをも理解したうえで


(確かにお母さんかママと来た時はいつもそうするし、本当は今日だってそうしたいけど……もう既にお母さんが何を食べるか決めちゃってたから今から半分っこしようって言ったり、高い方を選んだりするとパパに何か言われそうで嫌だから黙ってお子様ランチにしたんだよ!)


そう心の中でナナの疑問に答えると同時に物凄く不機嫌そうな表情を浮かべ始めたのが我慢ならなかったブノワが


「別に好きな物を頼めばいいし、自分の親相手に一々顔色を伺ってあれこれ考えられると逆にイライラして―――」


今ブノワがイライラしている原因が決してソウジ自身ではなくその子の両親であり、この発言もその人達に向けてのものであることは百も承知ではあるものの


ここに来てからというものそういった怒りのオーラをずっと纏われ続けられれば、ソウジの心情も相まってこちらもかなりのストレスが溜まるというもので


いつの間にか今の設定に飲まれていたらしい私はおそらくソウジの実母とまったく同じよう反応をしかけたその時


いつからそこいたのかは知らないが、椅子に座っているブノワの首根っこを掴み強制的に立ち上がらせたレオンが


「はいはいはい、ストップ、ストッープ。取り敢えずお前(実父)がソウジと一緒にいると駄目なことだけは分かったから、あとはレミアさんに任せて帰るぞ」


「………………」


「はぁー、俺が来た途端急に冷静になるんだったら最初からもうちょっと落ち着いて行動しろよ」


「このタイミングであなたが止めに入ってくれたことには感謝するけれど、ここでその喋り方はまずいんじゃないの? 別に私はどうでもいいけれど」


実は昔のレオンは今のように結構荒っぽい喋り方というか…元一般人であるソウジに近い一国の王子には似つかわしい喋り方をしていたのだが、マリノ王国の宰相になることが決まったあたりから敬語で喋るようになっており


今となっては自国・他国関係なく多くの国民がそっちのレオンしか知らないため念のため注意をしてあげると


「んんっ、これは私としたことが…失礼いたしましたレミア様。最近ソウジ様とは妻共々親子として接する機会が多かったもので、つい()()その時と同じ言動が出てしまったようで」


そんな挑発じみた発言に対し心の中で


『ほんとっ、一から十までソウジのことになると夫婦そっくり』


といった感想を抱きながら聞き流していたのだが、こちらはこちらで一から十までそっくりだったらしく


「(おい、ちょっとソウジのところの訓練場まで面貸せよレオン)」


「おやおや、マリノ王国の国王ともあろう方がこんな大衆の前でいきなりそんなお言葉遣いをなされたりして。一応小声であったとはいえもし誰かに聞かれていたらどうなさるおつもりだったのですか? まったく、その後の対処をさせられるこっちの気持ちにもなっていただきたいものですよ」


そんな彼の言葉を最後に二人はただならぬオーラをぶつけ合いながらサムールを出て行ったものの、その直後ソウジの顔色が明らかに良くなっただけでなく…今まで押し殺していた感情が爆発したかのように再びメニュー表を眺め出したり


先ほどナナが言っていた通り私と半分っこする前提で何を食べるか話しかけてくれたりといった感じで


とにかく今この時間、この瞬間が楽しくて、嬉しくて仕方がないといった感情を子供らしく全身全霊、ありとあらゆる方法で発し始めたの受け


「まっ、ブノワとレオンのことは当人同士の問題ってことでどうでもいいか」


(というか私は今この可愛くてかわいくて堪らない息子のことで胸がいっぱいだし♡)


「いやっ、先ほどブノワ陛下が小声で発したお言葉が全て聞こえてしまった私としては若干不安なんですが………」


流石はセレスの孫と言うべきか、先ほどの一件を若干不安という感想のみで終わらせたナナに内心感心しつつも私には今、ソウジの相手をするという何よりも優先しなければなならないことがあるため当然ガン無視させてもらった。

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