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第181話:白崎宗司のかけら(上)

あまりにも先ほどのソウジの行動が予想外過ぎたためほんの数秒とはいえ放心状態になってしまったものの、アンヌの声で我に返ることが出来た私は一先ずソウジを地面に降ろし


再び手を繋ぎながら目的地へと向かう道中、少し前にマイカが日本の実家の方に無法侵入…じゃなくてお邪魔した時に見たというソウジと実母の関係から想像するに、別にこの子がさっきみたいな年相応な行動をしてもおかしくないのかもしれないわね。


なんてことを考えているうちにサムールへと到着したため、私達の後ろを着いてきているブノワに代わり私が扉を開けようとしたところ…パッと繋いでいた手を離してきたソウジがドアノブを両手で握りしめ


「んっ、ん~~~っしょっ! はい、どうぞ!」


今のこの子にとってこういった場所の扉を開けるのはかなりキツかっただろうにそんなことを一切感じさせない屈託のない笑顔でそう言ってきたの受け、この短時間で二回もの不意打ち胸キュン行為に内心メロメロにされかけていたその時


後ろにいたウチの旦那がソウジの頭を優しく撫でながら


「お母さんのためにお店の扉を開けてあげたのは偉いけど他のお客さんもいて邪魔になるかもしれないから、あんまり人が多いところではやっちゃ駄目だぞ」


この人なりに相手が小さい子供であることを考慮しての対応であったのだろうし、少なくともこれがミナやリアーヌならばそれで普通に通じたのであろうが


「………………」


(んぅー-ー、気持ち悪い! 頭撫でるな、話しかけるな、というか早く帰れ‼ だいたいちゃんと誰もいないことを確認してからやったし、そんなこと言われなくても分かってるっつうの‼)


別にソウジの心の声を聞いてというわけではなく単純に私のために頑張ってくれた我が子に対して、少なからず下心が感じられるような接し方をされたのが気に食わずつい


「はーぁ、あなたの言ってることは確かに正しいけれど…あの時のソウジはちゃんと周りを見てから扉を開けてくれたし―――」


「はいはいは~い、いらっしゃいませ~♪ ということで夫婦喧嘩はまた後でということで…ってそういえばさっきの襲撃事件大丈夫でしたかソウジ様? どこかお怪我とかされませんでした?」


「………………」


「あれ? いつもだったら『全然大丈夫、余裕だったよ!』とか『もしもの時は俺がナナちゃんのことも守ってあげる‼』とかこれでもかってくらい元気よく言ってくださるのに、どうしたんですか本当に?」


今回の計画を進めるあたりこの国の国民へ向けミナが国内放送を通し事情説明および協力を要請したのに加え、今回ナナには事前に承諾を貰ったうえで


『もし白崎宗司という一人の人間の生まれ・育ちともに日本ではなくこっちの世界であった場合(家庭環境や受けた影響等は一部を除き全て同一とする)の記憶』


をティアの魔法で脳内に追加させてもらっているため、捏造された記憶ではあるもののこちらに協力? してくれたのか普段とは態度が違うソウジを不思議に思ったナナがそんな疑問を投げかけるも


「………………」


引き続き無言を突き通そうとするどころか、聞こえていないフリをし始めたと同時に


(パパの前で余計なこと言うな! ただでさえ今怒られてるところなのに、これじゃ余計怒られるじゃん‼ ………パパはいるし、怒られるし、今日もお母さんとパパは喧嘩しだすし…もうヤダ帰りたい。やっぱり来なきゃよかった)


「ちょっと、ちょっと、ソウジ様? 言っておきますけどソウジ様が今聞こえないフリしていること…私にはバレバレですからね? そんなおいたをする人にはいつもソウジ様にだけ特別に出してあげているデザートのプリン出してあげませんよ?」


(チッ、これ以上余計なことを言う―――ッ‼)


「少しいいかな…ナナ君?」


「はい、なんですか陛下? と言いたいところなんですけれど、私的には今の一言を聞いた瞬間からあなたの目の前で更に顔を真っ青にさせ始めただけでなく何かに怯えるように落ち着きなくしているお宅のお子さんの異常さの方が気になるんですけど?」


先ほどのブノワの声に怒気が混じっていたとか態度に出ていたとかではないのはもちろん、別に内心怒っているとかいうわけでもなのだが…本来人の顔色を伺うことに対して物凄く敏感なはずのソウジがそれを………見誤った。


(ちょっと、ここまでくると完全に心理的虐待よね…これって)


「ちょっとのめり込み過ぎよナナ。いくらウチの旦那を詰めたところで答えなんて出るわけないのだから取り敢えず私達を店内に入れてほしいのだけれど」


「………分かりました。丁度1つテーブル席が空いていたところでしたのでそちらへご案内いたしますね」


私の言葉で一旦落ち着きはしたものの根本的には納得いっていないらしくどこか不機嫌気味にそう言ってきたものの、ソウジだけは特別らしくガラッと表情や雰囲気を変えたかと思えばそのまま手を繋ぎだし


「ソウジ様? 今日は何色の椅子にします? 今は大人の方しかいないので好きな物を選べますよ。あっ、陛下とレミア様は窓際一番奥のお席へどうぞ…ということで行きましょうかソウジ様」


確かに空いている時間にこういった場所へ行くと


『お好きなお席へどうぞ』


と店員が言い客を席まで案内するという接客作業を省くことがあるが、お昼時などの混雑時は必ずどこのお店でもそれを行わないということはない……と思う。


のだが、彼女にとって一番大切なのは他国の王様と王妃であり今はこの国のそれである私達二人よりも、それらを抜きにしてもこのお店の客であることは間違いない私達二人よりも


普段から()()()()()()()()()と認識しているソウジ・ヴァイスシュタインだったらしく、ほんの一時とはいえブノワから離れられたこともありソウジはそれに答えるかのように再び本来の自分を全面に出しながら


『今日は何色にしようかな?』


と大人からしてみれば大したことのないほんのちょっとしたことであっても、本人にとってはとても楽しみにしていた時間の一つであることが分かるような声色でそんなことを言ったり


『ナナ姉は何色がいいと思う?』


という問いかけに対してナナが


『そうですね~、この前ミナ様とリアーヌ様の三人で来られた時はミナ様の髪の

色と似ているからという理由で黄色にしていましたので、今度はリアーヌさんの髪の色に似ている水色とかはどうですか?』


と提案すれば


『ん~、じゃあ今日はティア姉の目の色と同じ赤色にする!』


という風に突発的なことを言ってわざと大人を困らせるような行動…いわゆる第一次反抗期と呼ばれるものに当てはまるような言動を見せれば


『ちょっ、ここまでの話の流れでどこからティア様が出てきたんですか⁉』


それでもちゃんと相手をしてくれるセレスの孫ことナナ。といった二人のやり取りを眺めながら私は一人心の中で


確かに第一次反抗期は小さい子供特有のものなのだけれど…あれって2歳後半から4歳にかけての子によく見られるものであって今のソウジ位の子だとある程度落ち着いていてもいいくらいなのよね。

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