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第176話:普通の女の子、ユリー

said:レミア


あそこで私が喋り出せばまるでユリーの挑発に乗ったみたいで本当は嫌だったのだが、今の私には自分のプライドなんかよりも優先すべきものが…例えどんな状況下であろうとも優先してあげたいと思わされる存在がいる以上そんなもの知ったことじゃないということで


今までずっと我慢して黙っていたユリーとソウジに関するあれこれを一方的に喋りだしてから数分が経った頃、あっちはあっちで色々やっていたらしい兼それの中心人物ことリサが全身血まみれの状態でこちらに近付いてき


「私達の方は一旦片付いたからこのままあいつ等を連れて警備室に帰ろうかなって思うんだけどユリーちゃんの方はどんな感じ…って、あれ? もしかしてタイミング悪かった?」


「………はぁ、折角の可愛らしいお顔やお洋服をそんなに汚してしまわれて。取り敢えず今回の襲撃犯5人関しては私が連れていきますからリサさんは早く寮のお風呂に行ってらっしゃいな。それから、ミリーさん!」


「は~い、なに?」


「申し訳ないのですがちょっとリサさんと一緒に一旦寮に戻っていただいて彼女がお風呂に入っている間にお洗濯の方をお願いいたします。そんなに時間が経っていない今ならまだ普通の洗剤でも落ちると思いますので」


そうユリーが言うとリサはどこか納得いっていない…というかどこか満足いっていなさそうな表情を浮かべながらもミリーによって強制的に女子寮へと転移していったの受け私は


「あなたも人のことを言えるような状態ではないと思うのだけれど? まあ、さっきからずっとソウジが泣きながら引っ張り続けている服の裾はともかくそれに付いた汚れだけならまだ何とかなるんじゃない?」


「別にリサさんがどうこうというわけではありませんがやはり自分の服や見た目よりもこの場で一番大事なのはソウジ様のことですので。まだ私に()()()ことがある以上帰るわけには行きませんわ」


「今までずっと黙っていたかと思えば随分と言うじゃない。別に私は誰構わず気に入らない意見は聞かないってわけではないのだから、さっきだって好きなだけ言い返してくれれば…自分が本当に言いたいことを、気持ちを私にぶつけるてやるくらいの気持ちで反抗してくれればよかったのに。………私じゃ役不足だったかしら?」


「私が我慢して抱え込んでいるであろう本音を何とか引き出そうとする手口といい、その最後のレミア様のワザとらしい喋り方といい、微笑み方といい…本当ソウジ様そっくりですわね。まるで血の繋がった母子のようですわ」


「なんだか『私は最初から分かっていましたから』みたいな雰囲気を出しているところ申し訳ないのだけれど、これでも私何百年という…ただの人間にとっては長すぎるなんて言葉じゃ生ぬるい程の時間を一国の王妃として生きてきているのよ。たかだか二十数年貴族のお姫様をやっていただけの小娘の心を読めないとでも思っているわけ?」


当たり前のことながら私とソウジは血が繋がっているわけではないものの、嘘偽りなくもうこの子は私達の息子同然……息子であることは一生変わることのない事実であり、そんな子と私の一挙一動が限定的ではあるとはいえそっくりと言われて嬉しくないはずもなく内心では年甲斐もなく喜んでいたりするのだが


それをアンヌ以外の女に察せられたくないという気持ち5割の小娘が生意気言ってるんじゃないわよという気持ちが2.5割。残りの2.5割は……まあ忠告ってところかしらね。


などと一人頭の中で言い訳じみたことを考えることで若干の羞恥心だったり何だったりを誤魔化していたところ


(先ほどからつくづく感じておりましたが、本当母親という生き物は自分の娘に対して厳しいというか対抗心があるというか…意地悪ですよね。素直にご自分がこれまでの人生で経験してこられた中で感じたことなどを教えて差し上げればいいものを)


そんな私の感情等を察したらしいブノワがわざわざ念話越しにそんなことを言ってきたが、今私が相手をしなければ人物は完全に面白がっている自分の旦那ではなく


「確かに経験値でいえばレミア様やアンヌ様は当然、実年齢で言うと三つも年下のミナ様・リアーヌ様のお二人にすら到底及ぶとは思っておりませんが…育ってきた環境が全然違うとはいえ私とソウジ様は正真正銘の同い年。まあお互いが持っている価値観といった点でいえば前者同様マイカ様には勝てませんがそれと同等……いえ、そのようなものなど眼中にないと言っても過言ではないほどの言葉にはできないし、

どんなに凄い魔法を使おうとも見ることもできない。しかしソウジ様も確実に気が付いておられる同い年兼一定以上の距離感をクリアしている者同士のみが持ちし不思議な繋がりがございますので…という自慢話は一旦置いていて」


とそこで一度言葉を切った彼女は先程から話が進むにつれて少しずつ自慢げな笑みを浮かべていっていた表情を真面目なものへと変えていき


「今後私がどちらの選択肢を選ぶかはまだ分かりませんが……大前提としてヴァイスシュタイン王国 現国王 ソウジ・ヴァイスシュタイン様は元ボハニア王国に住む貴族の娘であり、一族郎党どころかあの国で暮らしていた上位階級層のほぼ全員から目障りな存在として扱われ続けてきたユリー・シャーロットには絶対にあり得なかったはずの普通の女の子としての人生をご用意してくださいました。そして私はただのユリーとしてそれをありがたく頂戴させて頂いた身」


ソウジとユリーが出会ってからの一から十までの全てを知っている人なら分かるだろうが今この子が言ったことを簡単にまとめると


『自分はもう貴族の娘であるユリー・シャーロットではなくユリーという名前の普通の女の子であり、それを許してくれたのは誰でもない現国王ことソウジ・ヴァイスシュタイン本人である以上私がどちらの人生を選ぼうと誰にも文句を言われる筋合いはない』


という寸分の狂いもない事実を言っているのだが―――――。


これだけは絶対に言ってはいけないし、例え独り言であっても口に出すことすらしてはいけないと頭では分かっているものの先ほどの彼女の言葉を聞いた瞬間心の奥底で何かがプツンっと切れる音がしたとともに私はノータイムで自分とユリーの周りにだけ消音結界とそれの中の様子が他の人には見えないよう遮断結界を張り


「私も大人だし例えこの問題がどう転んだとしても新国王になったあの子の成長に繋がるのはもちろん、何よりも当人同士の気持ちが一番大切になってくるだろうからってのもあって当分の間は黙っていようと思っていたのだけれど………いったいあなたはどれだけ私達の息子に重荷を背負わせれば気が済むっていうのよ‼」

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