第175話:戦乙女
said:ブノワ
よく父親は自分の娘に甘く、逆に母親は自分の息子に甘いのに比べ同性である娘に対してはそれに若干の差が出るみたいな話があるが私の周りで息子と娘の両方がいる家といえばアシルのとこくらいで、ウチとレオンのところは娘が1人のためこれまではあまり実感がなかった。
なかったのだが、確かに息子ができて以降の私にはあの子と出会うずっと前のことを含め思い当たる節があるにはあるし、それはレオンやアシルの奴も同じである。
とはいえ
「(あ~あ、僕もう知~らない。ということで僕にはまだこいつ等襲撃犯関係での仕事が残っているので戻らせていただきますね、ブノワ陛下)」
「(ちょっと待ちたまえミリー君。どうやら君が今言った仕事とやらはリサ君が物凄くやる気みたいだし、もう少しここに残っていても大丈夫なのではないかね?)」
そう小声で返しながら彼女の方へと目を向けると、今回襲撃を行おうとし息子によって瞬殺させられた挙句地面に血を流しながら倒れている5人を死なせないギリギリを見極めながら
「たまの外食兼お出掛けということもあって折角陛下がウキウキ気分でお母様と手を繋いで歩いていたっていうのにそれを邪魔したどころか!」
「―――――っぁあ゛、っあ゛‼」
しかし決して手加減などという生ぬるいものは一切感じさせない蹴りを
「暗殺しようとするなんて‼」
決め込んだかと思えば今度はゆっくりと上げた片足をまるでギロチンの刃かの如く勢いで地面に向かって下したことにより
「っぁあ゛ーーーー‼」
「(………確かにやる気みたいだしとは言ったけれども、少々今日のリサ君はそれが溢れ出過ぎているのではないかね?)」
「(お言葉ですがブノワ陛下。ウチの騎士団 副団長にしてソウジ陛下専属護衛騎士のリサちゃんがその人のことで本気になったら片腕を切り落とすくらいじゃ済まないですし、本当に恐ろしいのはこれからですよ)」
どこか冷めた目で彼らとリサ君の方を眺めながらそう言ってきた直後、まるで彼女の言葉を自らの行動で示すと言わんばかりに
2人目の男に関しては1人目の時とは違いゆっくりと時間を掛けながら片腕と片足を踏みにじっていき……もとい肩および股関節とそれが離れ離れになるまで永遠と続けたかと思えば
3人目の男に対してはそれよりももっとエゲつなく、そして何よりも先程まで苦痛を与えていた者達よりも更に上の痛みと絶望と恐怖を覚えさせながら両腕と左足を
そしてついに最後の5人目の番となった時、拷問と言うには生易しすぎる程の光景を目の前で見せられ、それを受けることによって発せられる悲鳴にもなっていないあの独特な声を聞かされ続けた影響か
はたまた自分の首と胴体が切り離されている状況を自身の目で確かに見たにもかかわらず、理解不能な未知の力によってそれが瞬時に元通りになっただけでなく今もこうして生きていることに対する恐怖心からか
「ぅっ、うあ゛あ゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーー‼」
そんな聞くに堪えない声を上げながら死に物狂いで地面に這いつくばりながらも必死になんとかこの場から逃げ出そうと試み出したものの、そんな愚行を彼女が許すわけもなく……まるで死神か何かのように後ろからゆっくりと追いかけていき、そのままのペースで引きずっている右足を軽く踏んづけたかと思えば
「いっ、だあ゛ぎゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーー⁉」
という痛みから来たであろう悲鳴とともに骨が折れた時特有のあの嫌な音もとい演奏が始まったのを受け、あまりの惨さに内心半分笑いながら
「重力魔法とはこれまた難しい魔法をよくもまあこんな器用に使えるものだね」
「もともとリサは魔法を理屈や理論ではなく感覚で使う派なので世間では高難易度とされているそれであっても結構使えたりするんですよ。なので根底は違えどあの子と同じようなことができちゃう陛下とはお互い感覚? が似ているみたいでよく訓練場で魔法の練習を見てもらっている結果が……」
と、そこで言葉を切ったミリー君は私に向けていた視線を再び冷め切った目で例の5人目が倒れているであろう場所へと移したため私もそれにつられる形で移動させると
そこには甚振りに甚振られ、踏まれたことによって折れたのであろう両腕、両足の骨という骨が自身の肉と皮膚を貫通して出てきていたり、地面にできている血だまりの中にそれの破片が浮いていたりするだけでなく…まるでそうするのがお決まりかの如く綺麗に両腕、両足の計4本が胴体から引き離された襲撃犯と、返り血やら何やらをを浴びた……この場に限れば一番の恐怖の象徴であろうヴァイスシュタイン王国 騎士団副団長 リサ・エイルの姿。
………………どこが?