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第166話:宗司が優先される理由

said:レミア


今回の計画が始まってからというものできるだけソウジの近くにいてあげたくてしかたなかった私は直接あの人達がいる部屋とこっちの玄関を繋げただけでなく、一々そこから二人を連れて玄関まで行って…なんだかんだとやっている時間すら惜しくて仕方がないということで扉をそのままアンヌに抑えてもらっているという荒業を計画、実行。


からのこの魔法の効力が強制的に消されてしまう30秒という制限時間内に首根っこを掴んででも連れ出すという勢いで突入し実際それに掛かった時間は約5秒ほど。


しかしその5秒ですら惜しい私はそのまま子供達がいる場所を検索したところ『ヴァイスシュタイン王国にある訓練場』と出てきたのを受け少し前までの自分なら例えどんなにわが子のことが心配で仕方なかったとしてもそれを表に出すなどという王妃らしからぬことは滅多にやらなかった…というよりも元の性格に加えて今の立場のせいで上手くできなかったというのが正しいのだろうが


『リアーヌ達程ではないにしろ私達も日に日にソウちゃんの影響を受け始めているとはいえまさかあのレミアちゃんがここまで分かりやすく動揺するなんてねぇ~。個人的にはそんなレミアちゃんも可愛いと思うし別にそのままでもいいと思うけど―――』


『いくらソウジ本人の希望とはいえそれに付き合ってあげているティア自身が頭の狂った模擬戦と言うほどのものが現在進行形で行われているであろうことが容易に想像できるとはいえ、あの訓練場にはふざけた機能が多数あるだけじゃなく自国の専属医が手放しで褒めるほどの治癒魔法を使えるリアーヌもいるという今回の件に絞って言えばこの世で一番好条件な場所である以上たとえソウジ一人対一国の戦争が行われていたとしても心配なんてしないわよ! でも早くあっちに行くわよ‼』


というような会話を息子の家とはいえ他国の城の廊下で行ってしまうくらいにはレミアの言う通りあの子の影響を受け始めているものの、こんなあからさまな姿を娘達に見られるのだけは嫌なのでしっかりと己の意識を切り替えてからお互い自分の旦那に対して何かを言うわけでもなく置き去りにし子供達がいる観覧席へ気配を消した状態で入ると丁度それが始まる直前だったらしく、とても模擬戦開始の合図が鳴るのを待っているとは思えないほどの殺気をぶつけ合っていることによってそれがこっちにまで伝わってきたことに若干とはいえ驚いた瞬間


最初から私とアンヌがここに来たことだけでなく、目ざとくそれに気付いたティアがチラッとこちらを横目で見てきた後まるで


『こやつをここまで育てのはわらわじゃし、その過程を誰よりも近くで見てきたのもわらわ。そしてこれからもこの特別な時間はわらわだけのものなのじゃ。羨ましいじゃろ?』


とでも言いたげな表情をしてきたことに対して大人げもなくイラッときてしまったのは内緒である。


とかなんとかがあったのが今から約一時間半程前のことなのだが…それは訓練場内での話であってそれの外では数秒ほどしか経っていないため


「今日は一戦しかしてないのに加えてソウジ君が目を覚ます前に出てきちゃったからまだ10時40分ちょいとかだけど、この後みんなはどうするの?」


なんてサラッとえげつない情報を交えながらマイカが今後の予定について皆に問いかけると何も知らない人が見れば10歳くらいの女の子が自分より少し小さい弟を頑張っておんぶしているようにしか映らないであろうティアが


「この時間リビングじゃとセリア達が勉強中じゃろうし…人数的に和室が丁度よいじゃろ」


「………それは別にいいのだけど、誰一人として途中でいなくなったアベルの心配をしないってのもどうなのよ? 私が言うのもなんだけどちょっとソウジ贔屓が過ぎるんじゃないの」


そんな問いに対し恐らく日頃から同じようなことをしているであろう張本人達は順番に


「お母様の言いたいことは分かりますがまだまだ若いとはいえアベルは立派な大人なのに対してソウジ様はまだ学生。しかも見た目に対して中身が全然追いつけていないにも関わらず毎日背伸びをしてなんてことなさそうにしている()を放っておくなど言語道断です!」


「それに加えご主人様は今お嬢様が仰ったような問題を抱えておられるがゆえにちょっとしたことでありもしない恐怖に怯え…それを無理やりねじ伏せるかのように一人死ぬ一歩手前まで頑張っておられる、経験不足がゆえに解決方法が一つしか分からない子供のようなお人。そんな方の傍にいて差し上げられる時間が少しでもあるのならば、それでちょっとでもこの方が安心してくださるのならばアベルには申し訳ありませんが私はご主人様の方を最優先に行動させていただきます」


「私の場合この二人と比べてアベルさんとの付き合いが短いとはいえ本当の家族のように思っているし、今だって……普段のソウジ君に比べたら今回の件なんて大したことないね、うん」


ソウジが頑張っている姿を直接見られる回数は少ないとはいえ日に日に凄いスピードで成長していることは娘達からの電話での近状報告であったり、普段通りの子供っぽさの後ろで見え隠れしている王族としての雰囲気と只者ではないと思わされる程の強者感から周囲の想像を絶するような無理をしていることはちゃんと分かっているし、この子達が自分の婚約者を優先する気持ちを理解できなくもないが流石にこのままとうわけにはいかないので取り敢えずティアに居場所だけでも調べてもらおうと思ったのだがどうやらアンヌのスマホにそれに関する連絡がきたらしく


「今レオンから『そちらで何があったのかは分かりませんが少しアベル君の様子がおかしかったので私とブノワは一旦一緒にマリノに戻ります』ってきたし男は男同士、女は女同士ってことでいいんじゃない?」


そんな彼女の言葉に対して自分も含め誰一人としてソウジの性別については触れずに和室へと向かって歩き出したということは……まぁ、そういうことなのだろう。


said:ティア


あれから皆で和室へと移動するとお茶やお菓子を用意する者、障子を開けて部屋の中からソウジがこの家で一番気に入っておる日本庭園が見えるようにする者、当り前かのように寛いでおるメイド長などを横目に薄手の子供用の着るブランケットをソウジを起こさぬよう気を付けながら着せてやった後そのままお互いが向き合うような体制で抱っこしながら


こやつはどんな状況であっても一度眠りおると死んでしもうたのではないかと本当に心配になるほど静かに眠りおるせいで模擬戦の後などは特に心配になるのじゃが、こういう風に抱っこしておると身長差が丁度良いおかげでお互いの顔が凄く近いだけでなく直接こやつの心音が伝わってきて安心できるだけじゃのうて……なんと言うか取り敢えず尊すぎるのじゃ♡


といった感じで一人心の中で好きな男のことをいつもとは違ったやり方で堪能しておると


「―――ん、―――ちゃん、お~い、ティアちゃんってば」


「………なんじゃ?」


「ソウ君の頬っぺたに自分の頬っぺたをくっ付けて『尊すぎるのじゃ♡』みたいな雰囲気を出してるところ申し訳ないんだけど、私達の話ちゃんと聞いてた?」


「………プライベートではレオンのことをレオ君と呼んでおるのに、何故ソウジの前では呼び捨てにするのかというレミアの問いから始まった」


『だってソウ君の前であの人のことをレオ君って言うと毎回どことなく不機嫌そうになるんだも~ん♡ 自分のパパに対してやきもちを妬く息子とか可愛すぎるし、そんな可愛いすぎる姿を見るのもいいんだけど……レミアお母さんよりもアンヌママの方が好きだからこその反応だって思ったらそんな意地悪もう二度とできなくなっちゃうでしょ?』


『もしかしてあなたソウジと二人っきりの時に無理やり自分のことをママって呼ばせてるんじゃないでしょうね?』


「だのなんだのという会話なら聞いておったしソウジがお主ら二人に対してどっちの方が好きじゃとかは一切考えておらんということをちゃんと理解した上でアンヌがああいった冗談を言い、それをレミアが無視したことも察しておるぞ。……ちなみに先ほどアンヌが


『何回か言わせようとしてみたことはあるんだけど、毎回これでもかってくらい頑なに断られちゃうから最近はお願いすらしてないよ』


とか言っておったがそれはお願いせずともあやつの方からアンヌママと呼ばせる方法を見つけおったことによってお願いする必要がなくのうただけであって、まあまあな頻度でそう呼ばれておるぞ」


そんなわらわによる突然の暴露話に対し一人だけ聞き捨てならないといった感じで


「最近ちょくちょくウチの城内でソウジの魔力を感じることがあると思っていたら、いったいあの子に何を吹き込んだのかしら?」


とレミアがアンヌ対して問いかけたのを受けこれで狙い通り……とはいかんかったどころか完全に母親ではのうて一人の女として『なに勝手に私とソウ君だけの秘密を覗き見したあげくみんなの前でバラしてくれちゃってるのかな?』というような怒りオーラを発しながら


「自分がもう少しソウ君のことを堪能したいが為にママのことをダシに使って時間稼ぎをしようとするなんて、ちょっとおいたがすぎるんじゃないかなティアちゃん?」

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