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第165話:五人目になる宣言

side:マイカ


『お主ら四人で勝手に盛り上がってるとこ悪いのじゃが、ちとお邪魔させてもらうからの』


そうティアが言った直後、彼女は渾身の一撃を彼に喰らわせようと木刀を振るたっと同時にそれに反応できたはいいものの避けることは不可能だと考えたらしいソウジ君はボロボロの右手でなんとか握り続けているムラマサと禁止されている防御魔法以外の、何かしらの魔法で受け止めようとしたものの……


いくらこの世界で本気を出したソウジ君に勝てるのは同じく本気を出したティアだけであると言えど、前者は使える魔法が制限されているだけでなくも既に満身創痍の状態。


それに比べ後者はと言えば、念のため常時防御魔法を使用しているとはいえ今日まで一度もそれが意味をなしたことがないだけでなく、何も知らない普通の子供が見ても分かるほどの余裕っぷり。


そんな二人がこの後どうなるかなど結果を見ずとも簡単に分かるというのと、実は私も初日からちょくちょくこの模擬戦を見ていたため彼が思いっきり前面のガラスに背中からぶつかってきたのを見ても


多分まだ意識はあるんだろうけど、これ以上は自分の意思で体を動かすことはおろか魔法すらまともに使えずにってところだろうからこのまま自然落下していってるところをティアがいつも通りキャッチして今日の模擬戦は終わりかな~。


くらいにしか思っていなかった私とは違い目の前の光景が二人の心にとどめを刺す形となったのか顔を真っ白にし、声を出すことはおろか瞬きをすることすらできないといった感じだったためどうフォローするのが一番いいのだろうか?


そんなことを考えていたのもつかの間、どうやら無意識ではといえ自力でティアの魔法を解いたらしい子供ソウジ君は私達がいる観覧席の天井部分に血だらけの指先をかけそこにぶら下がった状態でこちらに死んだ目を向けながら


「おいおい、なんだこの状況は? どうやったら俺の知らない間にミナとリアが泣きながらこっちを見ていたり、アベルが怖い顔をしながら部屋を出て行こうとしている状況が出来上がるんだよ。えぇ?」


『ちょっとちょっと、なんで私には何にも言ってくれないのさ。ミナとリアーヌはまだしも、どう考えてもアベルさんに声をかける前にまずは婚約者である私が先でしょうが』


「ならまずはそのうっとりとした目で死にかけてる自分の婚約者のことを見る癖を止めろ。ついでにティアが回復魔法を使ってる最中でもお構いなしに人の上に乗っかって自分の胸を押し付けながらディ○プキスしてくるどこから、それ以上のことを平然としようとする己の思考と性○もなんとかしろ」


『え~、でもそんなことを言いつつソウジ君の体はいつも正直だよ…っていうのは半分冗談で、男の人が生命の危機を感じると本能的に自分の子孫を残そうとするから云々っていうのは知ってるけど、実は女の人にも同じような原理が働いてるんじゃないかなぁ~って私は思うわけよ』


「本当に好きな男が目の前で生命の危機に瀕しておりもう命が助からないことが分かっているのなら、せめてそいつとの子供が欲しいという女心(本能)が反応して勝手に性○が増すとかいうなんかありそうな理論なら前に聞いた」


『そんな私の持論に対してボロボロの右腕を私の背中に回して力無く抱きしめながら『前世で極道の奥さんでもやってたのかってくらい頭がぶっ飛んでるマイカみたいな女の子も俺は結構好きだけどな』って言ってくれたソウジ君もどうかと私は思うけどねぇ~」


「………………」


「しかも状況としては大人ティアに膝枕されながら治療されている最中にだし? 見た目だけじゃなく呼吸音や声からも分かるくらいにまでボロボロで…冗談抜きで死んじゃう一歩手前の状態で、途切れ途切れの小さい声で言われちゃったらさぁ~♡ ねぇ、ちょっとこの後一時間くらいソウジ君のこと借りていい?」


「「駄目です‼」」


先ほどまで放心状態だったとは思えないほどの勢いで二人が割り込んできたの受け


あー、そういえばこの二人のこと完全に忘れてた…けどなんか復活しただけじゃなく、この狂った模擬戦に関してもある程度は黙認してくれそうだしまあいっか


とか思っているといつの間にかこの部屋に入ってきていたらしいレミアママが


「駄目ですって、あなた達……どうやったらこの短時間でそんな特殊性○に目覚めることになるのよ」


「おっ、お母様⁉ えっ、あっ、えーと、別に今のはマイカさんの話を聞いている間に傷だらけのソウジ様と私もイチャイチャしたくなってきたとかではなく………でもちょっとだけですねぇ、その…うぅ~」


()()()()()()別に私はお嬢様が言うような理由で止めに入ったわけではなく、いくらティア様が治療を施している最中とはいえ傷だらけのご主人様相手にそのようなことをするということはかなりの負担がご本人に掛かっているであろうことからであって―――」


「そうよね~、リアーヌは根っからのMだもの、大好きなご主人様が苦しんでいる姿を見ても興奮しないわよね。ソウ君とエッチなことをしているところを他の婚約者の子達に見られるとどうなるのかは知らなけど?」


どうやらレミアママと一緒に来ていたらしいアンヌママが実娘に対していったいどこからその情報を入手し、そしてそれを本人に言いますか?


みたいなことを言われたことによって顔を真っ赤にしているリアーヌに対して若干ガンを飛ばすような素振りを見せつつティアが


「さっきとは違うメンツで盛り上がっておるところお邪魔するようで悪いがのう、まずはマイカ。お主がどこで今回のような状況下で突然記憶が戻ると本人がどんなに傷ついておっても脳が命の危機を感じ取ったことによってアドレナリンを分泌し、それのおかげで一時的に痛みを感じなくなるというものを覚えてきたのは知らんがのう…こやつの場合記憶が戻る前に一度その現象が起こっておるせいで二度目のこれは脳内で起こったエラーみたなもの = 一分も持たん荒業なんじゃから今日のことは目を瞑ってやるが……次はないからのう」


そんな言葉の通り途中で気を失ってしまったソウジ君を浮遊魔法で浮かせ落下を阻止した後、そのまま優しくお姫様抱っこした状態で治癒魔法をかけながらそう釘をさしてきたのだが…どうやらまだまだ言いたいことがあったらしく彼の傷に響かぬよう自身の声量に気を付けながら


「お主らの性○がどうじゃろうと別に個人の自由じゃし、ソウジとその婚約者以外の者には絶対に見られたくないという感情があるようじゃからこれまでずっと我慢しておったがのう……わらわに寝取られ願望なんてものはないし、こっちはまだ口約束しかしておらんせいで『他の者に譲った分今日はわらわが独り占するのじゃ』みたいなことすらまともにできんというのにお主らときたら………」


それから約三十分間ずっとティアによる嫉妬からきたであろう愚痴というか不満を聞かされたがのだが、まあ要約すると


「つまり既にソウジと婚約関係にある四人が羨ましい。羨ましいけれどティアはこの子達のように自分から告白したり、こっちでそういう雰囲気を作るのではなく完全にあっちから言ってほしいと。あなたの立場だったりこの子との関係だったり、自分の性格とかだったりが邪魔をして中々素直になれないのは分かるけれど他の四人にも負けないぐらい可愛いところがいっぱいあるのだから、少しくらい積極的になってもいいんじゃない?」


「うぅ……、やろうと思ってできるんじゃったら既にやっておるわ、たわけ」


「あらあら吸血姫ともあろう子が人前で頬を赤く染めちゃって、かわいい~♡ これもソウちゃんのおかげかな?」


実娘のリアーヌをちゃかす時と同じようにそうアンヌママがティアに言うとちゃんとその意図を汲み取ったらしい彼女は先ほどまで浮かべていた不機嫌な表情ではなく、たくさんの嬉しいが心の中で入り交じっていることが一目で分かるような顔をしながら


「そうじゃ。じゃからわらわがソウジの婚約者になった時はそれまでずっと我慢しておった分と、こやつに対する好きという気持ちが組み合わさってお主らがイチャイチャする時間は当分お預けになるかもしれんから…せいぜい今のうちに楽しんでおくんじゃのう♪」

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