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第163話:小さい子供が生きていくためには……

side:レミア


例の会議を一週間後に開くとミナが決めてからというものソウジは私達が心配していた以上に無理をしていたらしく、そのことに唯一気付いていた…気付いていてなおそんなあの子に協力し続けていたユリーが流石にこれ以上は危険であると判断しミナ達にそのことを話したのが昨日のお昼過ぎのこと。


ちなみに何故ソウジと毎日顔を合わせているはずの城内メンバー達が誰一人としてあの子の異常に気付かなかったのかと聞きたくなる気持ちは分かるし、実際この話を聞いた時は私も同じことを思った。


思ったのだが、それを聞いたすぐ後にあの子の元へと向かった私達四人はもちろんのこと信用していないというわけではないが念のためヴァスシュタイン家の息が掛かっていないマリノ家専属の医者を一人連れて行ったもののそれを見抜けた者は一人もおらず。


結局あの子の顔を近くで観察してようやく化粧で顔色の悪さなどを誤魔化していることが分かったが、それでもなお無理をしていることを一切感じさせない普段通りの表情や雰囲気を纏い続ける我が子に不気味さを抱いてしまったとともに一刻も早くなんとかしてあげなければという気持ちにさせられたことから始まったのが


『白崎宗司という人間が抱えている心の闇の正体がなんであるのか、ソウジVer.

のアダルトチルドレンはどれ程のものなのかを一度みんなで確認しよう』


というものである。


そしてその計画を進めるにあたってティアが行った主な行動が


・夕食後ほぼ全てを五歳だった頃のソウジに戻す

・記憶も基本的にはそれと同じ風にするが一部書き換える (自分の立場や両親のことなど)


の二つであり、それを開始したのが昨日の午後八時過ぎ。


そこから現在進行形でソウジにとって私達のことは


・ブノワ :父親

・レミア :母親

・レオン :リアーヌの父親

・アンヌ :リアーヌの母親

・ミナ  :許婚、お姉ちゃん

・リアーヌ:許婚、お姉ちゃん

・セリア :許婚、お姉ちゃん

・マイカ :許婚、お姉ちゃん

・ティア :姉

・アベル :騎士団団長、ヴァイスシュタイン家専属護衛、お兄ちゃん

・セレス :ヴァイスシュタイン家の執事 

・エメ  :ヴァイスシュタイン家のメイド、お姉ちゃん

・アリス :ヴァイスシュタイン家の見習いメイド、お姉ちゃん

・サラ  :ヴァイスシュタイン家の見習いメイド、お姉ちゃん

・エレナ :ヴァイスシュタイン家の見習いメイド、お姉ちゃん

・リーザ :ヴァイスシュタイン家の見習いメイド、お姉ちゃん


という風に見えているため昨夜は私がソウジをお風呂に入れたり、一緒のベッドで寝たり、その他もろもろといった感じで普通の親子としての行動を取っていたのだが…一部の子達はそれが気に食わなかったらしく時間が経てば経つほどイライラしていっているのが分かってはいたが全て無視していた結果が先ほどの失敗へと繋がってしまったものの……


ティアによって記憶を書き換えられた張本人はというと私達が十時の休憩をしているのに混ざる形で朝ご飯を食べた後、誰かが言ったわけでもなく自主的に自分の分の食器を台所へと運んでいく姿を見て感心していたのもつかの間、今度は食器棚から子供用のマグカップを取り出したソウジはそのまま洗い物をしているエメのところまで小走りで向かっていき


「エメ姉、俺もコーヒー飲む」


「それでは私がコーヒーを入れている間にご主人様は牛乳とお砂糖、それからそろそろお仕事から戻ってこられる旦那様とレオン様のコップも持ってきてください」


そんな一般家庭の子供に対してお手伝いをお願いするような感じでエメは言ったにも関わらずソウジはその言葉を聞いた瞬間露骨に嫌そうな顔をしながら


「やっぱりコーヒーいらない」


と一言だけ喋ったかと思えばまるでここにあの人が来る前にどこかへ逃げようとするかのようにこの部屋の扉に向かって歩き出そうとしたため情報収集の意味も込めて取り敢えず私が抱っこするなりなんなりして足止めしようとしたのだが、流石はプロのメイド。


同じく何かを感じ取ったらしいエメは目線を合わせるためにその場でしゃがんでから恐らく今のあの子に一番足りないであろう家族からの愛情を満たしてあげるために優しく頭を撫で始めたのだが…そんなこちら側の気持ちとは反対に更に嫌そうな顔をしながらソウジは


「んん゛ぅーーー、いい、いい、いい。それ嫌っ!」


(少し前にマイカが聞いたっていうソウジの幼少期の話的にこの計画が始まるまでは主にあの子の母親が一番の原因かと思っていたのだけど、少なくともここまででそんな様子は一切ない…どころか逆に父親が原因なんじゃないかと思えるような反応ばかりなのだけど……あなた達の感想は?)


そんな私の問いかけに対しそれぞれが順番に私と同じような感想なり意見を述べていった中、それには参加せずずっと黙っていたうちの一人であるティアは自身の中に沸いたらしい不快感を隠そうともせずあからさまな表情を浮かべながら


(このくらいの子供が生きていくためには必ずと言っていいほど大人の助けが必要じゃし、一番身近なそれと言えば例外を除けば普通は自分の父上もしくは母上の二人だけじゃ。そして詳しくはまだ分からんがどうやらソウジは父上との関係があまりよくないようじゃし、そうなれば必然と頼れる大人は一人のみ……)


と、そこで敢えて彼女は喋るのを止めたたもののその後に続いたであろう『母上《毒親》』という言葉が頭に思い浮かんだらしいミナとリアーヌの二人は何か思うところがあったのか、どんどん自己嫌悪に苛まれていく様子が見て取れたが…まあこれもいい勉強だろうということで無視することにした私はこちらの狙いに気付いて話を合わせてくれたアンヌに念話で感謝の言葉を伝えてから


孤児院出身ということもありティアの話を聞く前からソウジが置かれていた家庭環境の問題に気付いていたからこそずっと表には出さず我慢していたマイカと、ヴァイスシュタイン家の人間兼婚約者組の姉として素の状態で仮説を話してくれたティアの頭を撫でてあげながら


「今日はソウジの相手がメインだからあれだけど、もうあなた達も私達の娘なんだから何かあったら無理せずにちゃんと甘えなさい。もちろんエメもよ」


まだ本人達の口から聞いたわけではないもののどうやら彼女は彼女で私達とはまた別に義母がいるようだが、この家のメイドとしてだけではなくソウジの姉としての意味も含めて仕えてくれている以上この子も娘みたいなものなので


わき腹こちょこちょで瞬時に機嫌を戻して見せただけでなく、この場にもう一人の主ことセリアがいないとはいえ婚約者組の目の前で堂々と自分の膝の上にあの子を座らせて一緒に少し遅めの十時のおやつを楽しんでいるエメに向かってそう言うと


「それでは今日から一ヵ月ほど私が旦那様をお預かりしてもよろしいでしょうか?」


「いいわけないでしょが、まったく。ということでそろそろ私達のソウジを返しなさい」


「ちょっと、ちょっとレミアちゃん? 『私達の』って言っておきながらソウ君の方に広げてるその手はなにかな? あと次は私達夫婦の番なんだから横入りしないでよねぇ~、エメちゃん? 」

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