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第155話:納得のいかない者達

ミナちゃんが花嫁修業的なことをする為に朝から迎えに来たお母さんと一緒に実家へと帰って行ったり、うちの一部騎士団員がお世話になったらしい娼館へとご挨拶しに行った翌日。


今日は木曜日ということで特に授業がない俺は昨日と同じくリビングで食後のお茶を飲んだ後マイカと共に仕事部屋へと移動し、一時間ほど書類仕事をしてからこれまた昨日と同じく行先などは伏せて一人で娼館へと向かった。


ちなみにミナは今日もお母さんのところに行くとかで実家へと帰って行ったが、花嫁修業は午前中だけで午後は仕事の時間という風にしているようなので取り敢えずはそちらに大きな支障をきたすということはないだろう。


なんてことを考えているうちに目的地の娼館へと辿り着いたのはいいのだが、今日も今日とて物騒なお出迎え集団 (五人組)が待機してくれていたのでちょっとしたご挨拶をと思い俺は


「よう、二代目は元気か? 一応婆ちゃんは大丈夫っつてたんだけど、俺はもーう心配で心配で」


「そんな心にも思ってないことはどうでもいい。それよりも俺達が知りたいのは何故二代目様がお前に対する考え方や態度を変えたのかということだ」


「何故って……、そりゃー俺の方がアイツより強かったからだろ」


「確かに私達みたいな人間は強い者には歯向かわず、最低でも目を付けられないよう大人しくしておくというのが定石でありお前の言ったことが本当であれば納得もできる」


「しかし昨日お前が二代目の部屋に入ってからというもの、貴様が張ったらしき頑丈な結界のせいで外からでは中の様子を一切知ることが出来なかったのを考えると他の者の手を借りたのではないかと勘繰りたくなるのも当たり前のこと」


「まあ、ウチらも馬鹿じゃないんでソウジちゃんが結構強いことは昨日初めて見た瞬間に察したから喧嘩を売ったりはしなかったけど」


「でも私達は同時にこうも思った。レオンが恐れる程の存在ではないと」


なんか人のことを好き勝手言ったり戦力を分析したりしてくれているのでこちらもやろうかな、ということでまず最初に言えることは…この五人組、昨日お出迎えしてくれたチンピラ共とは比べ物にならないくらい強いだけでなく、恐らくこの五人がちゃんと連携すればアベル相手でも結構いい勝負をすると思われる。


まあこいつらは暗殺術が専門っぽいからそれをフルに使えばの話であって真正面からやりあえば勝つのは確実にアベルだろうし、総合的に見ればフル装備のユリー達三人と同等ってところだな。


ということで次は性別や何かしらの特徴についてだが


まず一番最初に喋った男。コイツの立ち振る舞いや雰囲気を見るに多分この五人組のリーダーにして組のNo.2っぽいが、この中での実力は上から三番目ってところだな。


次に二番目に喋った女だが、コイツは確かに強そうだがどちらかというと頭で戦うタイプっぽいところを見るにこのグループの頭脳枠。暗殺系は得意だが真正面から戦う戦術は苦手って感じっぽいな。


三番目に喋った男は二代目のことになると頭に血が上りやすいけど、それだけアイツのことを慕ってるってところか。んー、あとは脳筋の半獣人。以上。


んで、この中で敵に回したら一番厄介そうなのが残り二人の女なのだが、どうやら顔や背格好が似てるところを見るに双子っぽい。


流石に見ただけではどっちが姉かとかは分からんが先に喋った方は俺のことを子供扱いしていること、後に喋った方は仕事はちゃんとやるけどそれ以外のことは気に入ってる奴以外の言うことは聞かなそうな無気力タイプだということ。レオンとの関係はただの仕事相手でそれ以上でも以下でもないが今回は仲間が動くということで仕方なく一緒にって感じで出張ってきたこと。


そして一番の問題は単体で見ても他の三人とは比べ物にならないくらいの実力を有していそうだというのに、それに加えて双子ならではの息の合ったコンビネーション技的なものを確実に持っていることが立ち振る舞えなどから分かることである。あと多分この二人も吸血鬼だわ。


という感じでこの五人を放っておくとかなり厄介なことになりそうなのは自明の理というやつなので俺は無言で村正を召還したと同時に目にも留まらぬ早さで構えをとってからの抜刀、そこからこの前リアがやっていた居合術を魔法ごり押しの見よう見真似で行い、奴らの背中越しで納刀したと同時に五つの首が地面に落ちる生々しい音が聞こえた。


「という夢を見ました。つってねー」


なんて独り言を言いながら俺は右手に持った木の棒を使って後ろから順番に頭を軽く叩いていくと、只者ではないことを証明するかのような反応速度で武器を構えながら振り向きはしたものの自分の身に何が起こったかまでは理解できていなかったらしく


「………いったいこれはどういうことだ?」


「可能性として一番高いのは私達が幻覚を見せられている隙に後ろへ回り込まれた、なのですが…あれ程の恐怖感を感じることなど生身で直接感じない限り絶対に無理です」


「じゃあなんだ⁉ 俺達はこの木の棒をクルクル回して遊んでるガキに何をされたか分からないだけでなく、今頃本当に首を斬り落とされて死んでてもおかしくなかったってことか?」


アベルと同じ半獣人かと思えばお前も人のことをガキ呼びかよ。お前だけもう一回同じことをしてやろか?


とか思っていると双子の姉妹が二人揃ってこちらへ向かってきたかと思えばそのまま俺のことを守るかのように、他の三人と敵対するかのような場所に陣取り


「流石はあのティアちゃんが気に入っただけはあるね。こりゃー、レオンでも勝てないはずだわ。ということで悪いんだけどウチらはソウジちゃん側につかせてもらうね♪」


「さっきのは幻覚じゃないのは勿論、ソウジは一ミリたりとも魔法を使っていなかった。しかし私を含めここにいた五人全員が何をされたか全く理解できていない時点で勝ち目がないことは明白。あと単純に私がソウジのことを気に入った」


「ああ゛っ? おい、なに勝手に人のところに寝返ってきてんだよ。あと、俺のことを気に入るのは勝手だが絶対に血を吸わせないからな」


そう言うと双子は本当に残念そうな顔で『えー』とか言ってきたが、秘密がとか関係なしに最初からティア以外の奴に吸わせる気なんてないのでこのまま無視しようかとも思ったものの、この後起こり得る可能性の中で一番最悪のパターンを想定した俺は収納ボックスから特殊加工済みの輸血パックを二つ出し、それらの飲み口を二人の口元に直接転移魔法でぶっこんで黙らせてから他の三人に邪魔されないよう最後に釘でも刺しておこうかと思った瞬間


「いい加減ソウジ様のヤバさが分かったろ? そろそろ大人しく降参しておかねえと次はあんなお遊びじゃ済まされねえぞ」


「二代目様⁉」「レオン様⁉」


最初から窓越しにこちらの様子を見ていたのは知っていたので恐らく言っても聞かなかった奴らに対して『勝手にしろ』とでも言ったのだろうとは思っていたが、ここで助けに入るとは随分と優しいじゃんか。とか思っていたのも束の間、どうやらその優しさに納得いかなかったらしい半獣人の男が


「だけどよ‼」


「だけどよじゃねえ‼ 死にてえのか馬鹿が‼」


状況や理由が全く違うとはいえうちの戦術顧問ことティアちゃんは自分の教え子を無言で殺そうとしたのに対して二代目は本気のオーラを出しつつも仲間が傷つかないようそれだけで抑え込もうとするとか、これじゃあどっちがヤクザか分かんねえな。


「さっきのはソウジ様がお前ら五人に向かってとんでもない殺気をぶつけて時間感覚を狂わせた後、道端に落ちていた木の棒を拾い今度はそれをいつも使っておられる刀に見えるよう殺気のみで認識を歪められただけでなく、実際は首を軽く撫でられただけなのに斬り落とされたと錯覚させられたんだ。もちろんこれも殺気のみでだ」


「もっと簡単に説明すると一回目にぶつけた殺気でお前ら五人には俺がとんでもない速さで動いているように見せることによって棒を拾ってる瞬間とかは全部認識できないように、んで次にそのぶつけ続けている殺気を調節してギリギリこっちの動きが認識できるくらいにする。まあ実際はただ歩いて近くまで行った後二代目が言った通り順番に軽く首をそれで撫でながら首が斬り落とされたと錯覚するよう再び殺気を調節しただけだけどな。……なんなら今度は一人ずつやってやろうか? そうすれば少しは信憑性も上がるだろ」


とか言いながら俺は勝手に一番納得のいっていなさそうな半獣人の男に全く同じ手順で、しかし今度は身体中を軽く撫でまくってやるとそいつは立ったまま気絶、他の二人は即謝罪という結果に至った。

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