第14話:新拠点お披露目
それから俺はここにいる人達全員に知識共有魔法を使ってこれからの生活に必要な知識を与えた。何故そんなことをしたかというと、ミナが面接をしている間に騎士団の寮や警備室を新しくしたからだ。
自分が住んでる城は地球の技術てんこ盛りなのに対して、部下の住む場所や仕事場が中世ヨーロッパレベルの物じゃ差がありすぎる。そんなんじゃ何時か不満が爆発するだろうと思い、そこら辺の物は全て新しくしたのだ。
まあ外観はこの世界の建物とそう変わらないデザインだけどな。材料とかは全部最新だからマジマジと見られたり、触られたりしたら一発でバレるけど。
「言っておくけどこれは俺の下で働いてくれるっていう人達の為に用意してるだけであって、今のところ一般に技術提供する気はないからよろしく」
「陛下。一つ質問なのですが、我々団員が騎士団員用の寮以外に住むのはありなんですか?」
「ああ、別に良いけど俺からの技術提供は一切しないからそこは気を付けてくれ」
「まあそれは当たり前ですね。ソウジ様がそこまで面倒を見てたらキリがありませんし…騎士団の寮は住宅街から離れているからいいですが、普通の家に住むとなると周りに住んでいる方々の目があります。もしその方々がソウジ様のおかげで便利な生活を送れていると知ったらどうなると思います?」
「まあ間違いなく国民は坊主のところに『自分の家も同じにしてくれ』って言いに来るだろうな」
「ああ。そしてもし俺がそんなことをすれば他国とのパワーバランスは崩れ、うちの国への移民が爆発的に増えるか…戦争になるか。どっちにしても最悪だな」
よくラノベの主人公とかが地球の技術を広めまくったりしているが、普通そんなことをすえばさっき俺が言ったようなことが起きる。
『じゃあ他国にも技術提供すればいいじゃん』と思った奴がいるかもしれないが今の段階でそれは無理だ。皆さんご存知の通り、俺が関係を持っている他国の王族はマリノ王国のミナのみ。もしマリノ王国に技術提供したとしても結局は同じことが起こるだけ。
その為どうしても技術提供をしたいのならせめてこの世界に存在する国の半分、少なくとも三分の一の国と友好関係を築いてからだ。じゃないと戦争になった場合は数で負け、戦争が起こらなくても移民が集中しすぎて国が潰れる。………面倒くさくてまだこの世界に何か国あるのかなんて数えてないけど。
「正解ですソウジ様。ですのでソウジ様が持っている技術力のことは国家機密にします。とまでは言いませんが、無闇に広めないようお願いします」
「お前らホント気をつけろよ。いくら団員が全員俺の部下だって言ってもこの姫様とリアーヌからは庇いきれないからな。……どうやらこの二人は坊主のことをかなり気に入ってるみたいだし、こいつ関係では絶対に怒らすなよ」
「アベル、皆様の前でそのような失礼なことを言わないでもえますか」
やっぱりリアーヌさんは静かに怒るタイプか……。俺も気を付けよう。
「んじゃ、最後にこの城と俺の城を庭ごと交換するからみんな外に出てくれ……いや、めんどいから全員で転移するか」
ということで、この城の門前まで全員で転移したのだが
「ん? なんでみんな俺のこと見てるんだよ」
「あのなあ坊主。お前は知らないみたいだから教えてやるが、この世界では転移魔法を使えるだけでも凄いってのに、この人数を一斉に転移させるとかどんだけの魔力が必要か知ってるか?」
「俺がそんなこと知るわけないじゃん。魔力が減った感じも全然しないし。……そんで、どんくらいなんだ?」
「そんな未知数なこと知るわけねーだろ‼ 知ってる奴なんて暇か変人な研究者ぐらいだろうよ!」
「へー、じゃあ今度からはその暇か変人な研究者に捕まらないように気をつけるわ。ってことで、もうこの話終わりでいい? いいならこの城邪魔だから片付けて俺の城と交換するけど」
「おい坊主。まさかとは思うが……収納魔法を使って片付けるとか言うわけじゃないよな?」
「えっ? 勿論そうだけど。だってこんな物を外に置いておいたら山賊とかの溜まり場になりそうだし、わざわざ警備兵を割くのは勿体ないからな。いでよ! 収納魔法~」
よく戦闘中に魔法名とか技名を言う主人公とかいるけどアホじゃね? だってそれって相手に今から使う技を教えてるようなもんじゃん。とか思いつつ魔法名を言いながら収納魔法を地面に展開させると
「うええええええ⁉ 本当にやりやがった‼ しかも庭ごと⁉」
「さっきからうるせえよアベル。周りを見てみろ。騒いでるのはお前だけだぞ」
「いやいやいや。他の奴らは騒いでないんじゃんくて、驚きすぎて声すら出てないんだよ!」
「んなわけないだろ。だってミナとリアーヌさんは拍手してるし、ティアなんか笑ってるぞ」
「ティアはどうか知らないが少なくとも残りの2人は実力が化け物レベルだからだよ! まさかこいつらを軽く超える化け物がいるなんて思わなかったけどな」
「人のことを化け物とは失礼だな。俺にだって魔力量の限界はあるし、攻撃されれば死ぬぞ」
それに持ってる能力に対して俺の実力はオールレベル1状態だからな。うちの騎士団の誰か1人と殺し合いをすれば殺されるのは確実に俺だ。
殺し合いっていうのはそんなに甘いもんじゃない。いくらチート能力を持っていようが、どんなに武術が出来ようが関係ない。殺し合いに一番必要なのは人を殺しても壊れない心とその覚悟だ。そして、今の俺にはそのどちらも持っていない。
その2つを手に入れるのが先か、なんの用意もなく殺し合いをするのが先か。
………なんか少し怠いし、嫌なことを考えるのは後回し、後回し。どうせ何とかなるでしょう!
「さて、それじゃあ新しい城のお披露目といきますか。収納魔法から~、召喚!」
俺はそう言いながらさっきと同じように収納魔法を地面に展開させ、自分が作った城を出し終わった直後、立っているのがやっとの状態まで怠さが悪化し
「うえっ、気持ち悪い。てか頭がクラクラする……もう…無理」
ヤバい。このままだと地面に倒れる……
「おっと、大丈夫ですかご主人様」
「ナイスキャッチ、リアーヌさん。……なんか気持ち悪くて1人じゃ立てられなさそうなんで…このままでお願いします」
「も~うご主人様。『さん』はいらないって私言ったばかりですよね?」
「ごめんリアーヌさん。気持ち悪くて頭が回らないわ」
「ソウジ様…その言い訳はちょっと苦しいかと。それと気持ち悪いのはおそらく魔力の使い過ぎです。いわゆる魔力枯渇症ですね。なので少し休めばすぐ良くなりますよ」
「なるほど、これが魔力が枯渇した時の感覚か」
正直、今すぐどっかで横になりたい。まあやることは全部終わったしあとは諸連絡をして解散にするか。
「え~と……門の近くにある小さい建物が警備室だから、これからは警備兵の人達はそこを使ってくれ。勿論国境にも同じ物があるから使っていいぞ。あとは……ああ、ミナかリアーヌさんでアリス達を風呂に入れてやってくれ。それから……え~、思い出したら連絡する。ってことで解散‼」
うえっ、大声出したら更に気持ち悪くなった。