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第140話:久しぶりの帰省

……………っ!


……この魔法は初めて使ったけどちゃんと設定しておいた時間に目が覚めたな。なんか言葉にできない気持ち悪さがあるからあんまり使いたくはないけど。


寝る前に両隣にいた二人が俺の肩なり腕なりに寄りかかったまま寝ているのは知っていたので起こさないよう近くに転移してから懐中時計で時間を確認し、一人心の中でそんな感想を抱いていると買い物から帰ってきていたらしいリーナ姉が何かを言いたそうにしていた。


なので俺は二人の周りに消音結界を張ってから


「なんだ? 言っておくけど夜ご飯ならまだだぞ」


「目の前でプリンを食べてる人に向かってそんなこを言うとか、一体いつからシーちゃんの中で私は食いしん坊キャラになったんですか⁉」


「冗談だ冗談。大方こっちが依頼した仕事のせいなんだろ? まあ姉ちゃん達は大変だっただろうけどそのお陰で俺はかなり助かった。ありがとうな」


自分的にはいつもと同じ感じでお礼を伝えたつもりなのだが、何がおかしかったのかリーナ姉をはじめとする合計十人の自称お姉様方が一斉にこちらを向いたまま黙ってしまったので何かおかしかったか? と不安になりかけた瞬間


「「「「「「「「「「か……」」」」」」」」」」


か?


「「「「「「「「「「可愛いーーー‼」」」」」」」」」」


はあ?


「ついさっきまで怖い顔をしながら戦場を駆け回ってた人が、いきなり子供みたいな顔でお礼を言ってくるなんてズル過ぎます」


などと意味の分からん供述をしているリーナ姉に続き他の姉ちゃん達が興奮気味に同意したり、リアーヌの見る目を褒めたりなんだりし始めた。


その為俺は収納ボックスから出した栄養ドリンクを一気飲みした後、蓋を閉めなおした空き瓶を自分の部屋に置いてこようかと思った瞬間それを後ろから掻っ攫われてしまったので誰かと思い振り返ってみれば


「まーた、このような物を飲みよって。あれ程飲むなと言ったじゃろうに…と怒りたいところじゃが、お主に回復魔法が効かんことを考えると今回は仕方ないかのう」


「んだ、もう起きたのかよ。まだ寝てても全然大丈夫なのに」


「元々わらわはそんなに疲れておらんかったのに加えて、今日はお主の血を吸ったお陰で普段よりも回復が早くなっておるからのう。これ以上寝ておったら今度は夜眠れなくなってしもうわ」


血を吸われた張本人は回復魔法が効かないせいで怪しい科学の力に頼ったばっかりだっつうのに、ちょっとそれはズルくねえか?


「はぁ……、んじゃ俺は学校に行ってくるから後のことは頼んだぞ」


「うむ、この空き瓶の隠蔽・そこで騒いでおる者達の面倒・家と国の留守・その他、全てわらわに任せるがよい。ということでいってらっしゃいなのじゃ」


「ん」


そう言いながら俺はゼミ室に誰もいないことを確認し、そこへと転移した。






あれから俺は急いで授業が行われる教室へと向かい、眠いのを我慢しながら先生の話を聞いていると母親から『今日の夜ご飯のおかずを煮物にしたから少し持って行って』というL○NEがきた。


ということで今日の夜ご飯であり、予約済みの寿司を取りに行く前に我が実家へときていた。


「あら、おかえり」


かれこれ二ヶ月ぶりに自宅の鍵を開け、城とは違い玄関のすぐ傍にあるリビングへに入った瞬間にそう言ってきたのは先ほど話題に上がったばかりのお母様である。


「ん」


「一応煮物だから冷凍しておけば日持ちはするけど、どれくらい持っていく?」


「んじゃあ貰っていいだけもらってくわ。あとついでにその野菜の煮物の作り方も教えて」


というのも今日の夜ご飯はご飯というよりは打ち上げみたいな感じにしようと思っていたのでデザートやお菓子も多めに用意してはいたのだが、よくよく考えたらそんな学生の飲み会みたいなメニューを出したらエメさんに怒られそうな気がしてきてちょっと不安になっていたところにこの連絡がきたのだ。


なのでさっきも言った通り貰えるだけもらっていって、あとは作り方さえ分かってしまえば魔法で人数分を用意するだけという算段だったのだが


「あら? その指輪どうしたの?」


「………貰った」


「誰から?」


チッ、そのまま黙ってタッパーに分けてくれればいいのに余計な事に気付きやがって。


「………彼女」


「へー、同い年?」


「ああ」


「じゃあその服も彼女に選んでもらったの?」


「なんでそう思った?」


「だってアンタ服とか全然拘らないじゃん。そのクセして変なところで拘るし」


「別に服なんかに拘ってる奴より金が掛からなくていいじゃん。というかそんなものに拘る意味が分からん。着ろと言われれば黙って着るけど」


「ほんとパパそっくり。少なくとも私はそんな風に育てた覚えはないのに、なんでこうなっちゃったのかしら。……まあでもずっと『彼女なんていらない』『絶対に結婚なんかしない』って言ってたことを考えればまだマシか」


「ちょっと前まではそう思ってたんだけどなんか気付いたら考えが変わってたって…というより知らない間に変えさせられてたわ。………なんかよくよく考えたら怖くなってきたな」


「ふーん、世の中には物好きな子もいるのね。ちゃんと大事にしなさいよ」


そんないつもお母さんや母さんと会話する時とは違う、長い間一緒にいたからこそみたいな感じでちょくちょく適当な返事を返しながらも何だかんだで15分くらい二人で話し続けた。


そのせいでレシピを教わり終わったのは七時ちょっと前になってしまい、若干急ぎ気味に玄関へと向かうと


「次はいつ帰ってくるのかしらないけどその時はマイカちゃんも連れてきてね」


「次は結婚の挨拶かもな」


「そう。じゃあ楽しみに待ってるわよ」


「んじゃね」


「はい、気を付けてね」


そんないつも通りで、久しぶりに聞いた送り出しの言葉を背に俺は玄関の扉を開けて外に出た。

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