第13話:新役職発表 (下)
俺がティアとの会話で盛り上がっているとミナが
「あのソウジ様。ティアさんと仲良くなるのは良いですが、まだ紹介が残ってますので……」
「あっ悪い。続けてくれ」
「はい。それでは次にメイドの子達ですが……右からアリスちゃん、サラちゃん、エレナちゃん、リーザちゃん、セリアさんです。歳は5人とも14歳なのですが、みんなソウジ様の下で働きたいとのことでしたので新人メイドということにしました。なので最初はエメさんとリアーヌに面倒を見てもらう予定です」
これまた見事に髪の色がバラバラだな。アリスは金色、サラは薄いピンク色、エレナは銀色、リーザは茶色、セリアは黒に近い紫色と。本人達には悪いが髪の色で名前を覚えさせてもらうか。
「5人のことは分かった。アリス、サラ、エレナ、リーザ、セリア。俺は別に失敗したからって怒ったりはしないし、まあ気軽にやってくれ」
「駄目ですよご主人様。そんなぶっきら棒な言い方じゃ、みんな怖がって更に萎縮してしまいます」
確かに5人ともちょっと怯えてるっていうか、なんて返事しようか迷ってる感じだな。
「えっ、あ~、……俺1人じゃ何も出来ないからさ、良かったら5人で助けてくれないか?」
「ぷっははははは。お主は本当に子供の相手をするのが下手じゃのう。良いことを言ってるおるのに喋り方が固いせいで微妙じゃぞ」
「俺は子供の相手が苦手なんだよ。というか俺のメイドなら笑ってないで助けろ」
「しょうがないのう。メイドじゃろうが何じゃろうが、こやつのことは好きな名前で呼んでいいそうじゃ。ということでアリスは何て呼びたいんじゃ?」
そんなこと一言も言った覚えがないのだが、早速ティアはアリス達の前まで行き優しくそう問いかけると
「えっと、私は………お兄ちゃんが良いです!」
「サラは?」
「うちはソージ兄が良い!」
「じゃあエレナは?」
「私はソウジ様のメイドですので、ご主人様でお願いします」
「エレナは真面目じゃのう~。もう少し子供っぽくてもよいといのに。リーザは?」
「え~と、ソ、ソウジ…様は苗字とかあるです?」
「ん? そういえばまだ誰にも言ってなかったな。俺の名字は白崎だ」
「じゃあ、サキにいです」
「おっ、おう。サキ兄は予想外だな」
「これこれ、そういうこと言うでない。それじゃあ最後にセリアは?」
「私はそのままソウジでいいわ」
個人的にはあんまりお兄ちゃんとか呼んでほしくないから全員セリアみたいに宗司って呼んで欲しいんだけど………まあいっか。
「旦那様。正直彼女達の教育係としてあのような呼び方や喋り方はやはり少し気になるのですが……」
「いいですよ別に。誰だろうと身分なんて関係なく俺のことは好きに呼べばいいし、好きに喋れば良い。ティアなんて俺のメイドなのに友達みたいでしょ? 流石に客人とかの前ではあれですけど」
「分かりました。旦那様がそう仰るのでしたら何も言いません。ですが、それとは別に練習する時などはお許しください」
「はい、それでお願いします」
「それじゃあ私もソウジ様じゃなく、旦那様とお呼びしてもいいですか?」
「いつから俺はミナの旦那になった。そんなの却下に決まってんだろ」
「え~、私は別にいいですのに。ねえリアーヌ?」
「はい。それに私も旦那様とお呼びしたいです」
そのうち勝手にミナの親に紹介されたり……するわけないか。まあ、二人とも嫌いじゃないけど。
「だいたい俺は誰が相手だろうとまだ結婚する気はないぞ」
「……それでは次の人を紹介しますね。宰相と秘書はマイカさんにお願いすることにしました」
ふ~ん、あの黒髪でセミロングの女の子か。胸の大きさはリアーヌさんよりちょっと大きいくらいだな。……ティア、ミナ、リアーヌさん、マイカ、セリアって、順番に胸を見ていくと……バランス良いな。って今は胸じゃなくて
「宰相と秘書を一人にやらせるのは大変過ぎるだろ」
「そこは大丈夫ですよ。宰相は私もやりますし、マイカさんの主な仕事はソウジ様の仕事のサポートと秘書ですので」
「他国のお姫様が宰相なんて聞いたことないぞ。うちの国でも乗っ取る気なのか? 出来れば乗っ取ったばっかりだから止めてくんね」
「そんなことし・ま・せ・ん! ただ私はソウジ様を守りたいのと、ソウジ様を一国の王として教育する為です。(出来るだけ一緒にいたいからというのもありますが)」
「まあ宰相は自分が一番信頼出来る奴を選ぶことが多いらしいからな。その点でいえば確かにミナは悪くないか……。ところで最後の方なんて言ったんだ?」
「お嬢様、仕事とご自分のお気持ちを一緒にするのはどうかと思いますよ」
「リ、リアーヌ⁉ 聞こえてたんですか?」
「ええ、それはもうバッチリ」
ミナが照れるなんて意外だな。勝手なイメージだけどミナは歳が歳だから照れることなんて無いと思ってたんだが、やっぱり普通に19歳の女の子なんだな。……本人には黙っとこ。
「う~、そういうリアーヌだってソウジ様のメイドというの良いことに仕事をサボらないでくださいよ」
「勿論そんなことはしません。……ご主人様に求められたら話は別ですが」
「えっ⁉ 何それズルいです‼ 私もソウジ様のメイドになります!」
「ミナよ、ソウジの専属メイドはわらわもおるから任せておけ」
「はっ⁉ ティアさんはソウジ様の専属メイドにしたんでした。二人ともズルいです!」
「おい、姫様。そろそろこっちの紹介もしてほしいんだが」
「あっそうでした。……んんっ、ソウジ様。まずこの国の騎士団の団長ですが、これはアベルに任せることにしました」
「おう坊主。これからよろしくな」
こいつ、俺の部下になっても呼び方は坊主のままか。まあそれは別に良いんだけど……もしかしなくてもこいつら完全に自分の国に帰る気ないな。何か気に入ったもんでもあったのか? 飯か? 風呂か? シャンプーか?
「それから騎士団の団員ですが、これはこちらの方々……合計120人にお願いしました」
「あれ、確か最初は130人いたはずなんだが。残りの10人はどこに行った?」
「あまりこういうことはソウジ様に言いたくなかったのですが……あの方達は自分達が上に立つことだけを考えており、国のことなんて一切考えていなかったので今回は不採用にしました」
「まあ野心を抱くことがいけないとは言わないが、あの10人は坊主のことを主と認める気が最初っから無かったからな。そのうち坊主のことを消す気だったんじゃないか?」
ふむ。確かに全員が全員俺のことを認めるなんてことは有り得ないだろうけど、この2人の話だけで判断するのもな……。別にこいつらを信じてないわけではないが、ちょっと騎士団の奴らにも聞いてみるか。
「なあ、ミナとアベルの話は本当か? 別に2人に気なんて使わなくていいから正直に話してくれ」
「えっ? んまあ~、確かにあいつらは普段から出世のことばっかり気にしてましたね」
「俺、ソウジ様がこの国の王様になるって宣言したすぐ後にあいつらが小声で『あんなガキなら余裕で王の座を奪えるな』とか話をしてるのが聞こえましたよ」
まあ実際俺だけなら簡単に王の座を奪えただろうな。……そう考えればミナ達3人が協力してくれるのはデカい。
「オッケー、情報提供ありがとう。今後俺に何か不満とかがあったら、アベルにでも伝えてくれ。内容にもよるけど出来るだけ不満は解消するようにするから」
「アベル、その時は必ず私にも伝えてください。絶対ソウジ様1人だけに任せては駄目ですよ」
「分かってる。坊主の心遣いは良いことだがこいつらを甘やかし過ぎるのは問題だし…上に立つ者が何でも言うことを聞いてたら威厳がなくなるからな」
「これはわらわもこやつの教育を手伝った方が良さそうじゃな」
今のティアの言葉に対してリアーヌさんが頷いてるってことは、やっぱり俺は王としてまだまだ甘いみたいだな。きっと処刑の件を保留にしたことも……。やっぱり現実の王様は小説みたいに良い人だけじゃやっていけないってことか。
「はいはい、まだ紹介の続きがありますのでソウジ様の教育の件はまた後で話しましょう。ということで、こちらの20人には引き続き警備関係のお仕事をお願いすることにしました」
「これで全員か。んじゃ、最後に俺自身の話をするぞ。まず俺はこことは別の世界から来た人間なんだ。だからたまに見たこともない物とかがあるかもしれないけどあんまり気にしないでくれ。あと元が一般人だから…これからみんなに頼ることが多々あるとは思うけど良かったら手を貸してくれ」
そう言った後俺が頭を下げると……
「なんか前の陛下と比べると今回の陛下は随分と頭が低いな」
「だよな。ずっとあのクソ陛下の下で働いてたからなんか調子が狂うぜ」
「前の陛下みたいなクズイ奴もなかなかいないけど、今回の陛下みたいな人もなかなかいないだろ」
「それどころか見たことねーよ」
「「「「あははははは」」」」
なんか騎士団の連中を中心に凄い笑われてるんだけど
「なあミナ。もしかして俺、馬鹿にされてるのか?」
「全然違いますよ。その逆で皆さんソウジ様のことを褒めているんです」
それなら良いか。あとはこいつらを失望させないよう頑張らないとな。