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第127話:宗司の過去の経験と知識から導き出された教育方法

セレスさんのアドバイスは余程のことじゃない限り素直に受け入れようと一人心の中で決意していた時、レンには内緒でかけておいた魔法のことを知っている…というか俺が座る椅子の後ろで院長さんと一緒に見ていたマイカが


「それにしても最初はどうなることかと思ったけど、意外と子供に勉強を教えるの上手かったね。褒めるのは相変わらず苦手みたいだけど」


「孤児院の子達はもちろんうちの子供達にも悪いが、生憎俺は子供の相手をするのが苦手だな。勉強どうこうってのはたまたまレンと相性が良かっただけで別に教えるのが上手いわけじゃない」


「ねえ知ってるソウジ君。人間って基本的には過去に経験してきたことを元にどうすればいいかを考えてから行動するのが普通でね、何事もその経験値が高ければ高いほど上手にこなせるようになるんだよ」


「知ってるかマイカ。どんな生き物にも例外ってもんがあってな、それはさっきも言った相性や才能のことも含まれてるんだぞ」


「ふ~ん、またそうやってはぐらかそうとするんだ。別にそっちがそういう気なら昨日みたいに一から問いかけてソウジ君が本当のことを言ってくれるまで待ってもいいんだけど、そんなことしてたら間違いなくお家に着いちゃって誰かに私達の会話を聞かれちゃうかもな~」


こっちがしらばっくれ続ければそのまま家に着いてしまいその会話を誰かに聞かれてしまう可能性があり、それが嫌ならば今すぐ正直に話すしかないと。……まあ院長さんとの約束はもちろん時間もまだあるし、少し遠回りして帰るか。


「ってことでちょっと遠回りして帰るぞ。んで、一体何が聞いたいんだ?」


「ん~、じゃあ基本的にはお任せして、何か気になることがあったら随時質問をするって感じでどうかな?」


「となると…まずは俺がレンに対してあそこまで上手く勉強を教えられた理由からだな。まあこれは単純に今も昔も俺が馬鹿だからそういう子の気持ちが分かるってだけだけど」


先ほどマイカも言っていた通り人間というのは基本過去の経験を元にどうするかを考え行動する生き物なのでいくら自分の担任が学生時代はずっとエリートと呼ばれ続けてきた人種で超一流大学出身、しかも生徒からは授業が分かりやすいと評判の新人教師だったとしても、そのクラスに所属している学生全員が全員分かりやすいと感じるかといえば…答えはNOだ。


何故ならこの教師や一定以上の学力を持っている学生からしてみれば当たり前のことでも、頭が悪い学生にとってはそれが当たり前ではない。しかも質の悪いことに多くの前者は馬鹿が分からない部分を無意識のうちに理解してしまっているせいで、それを後者に教えるのほぼ不可能に近いと言ってもいいほどだ。


そして最後にはなんでこんなことも分からないんだと呆れ始めた教師がみんなの前で馬鹿にするような発言(本人はイジリだと思っている)をしたり、学校の教育方針で補習に参加するよう多くの人の前で名指ししてきたりする。


するとどうなるか?


前者をやられれば間違えた時に馬鹿にされるのが怖くなるだけでなく授業中に質問することさえ躊躇われるようになってしまい、後者をやられれば友達や同じクラスの人に自分がどう思われているのか気になってしまい結局同じ道を辿ることになる。


その為俺は算数などの問題集を孤児院で勉強の面倒も見ている人に渡す際、『なにがあっても勉強に関しては絶対に人と比べないこと・問題の答えを答えさせる場合は全員に当てるのではなく挙手している子だけにすること・みんなの前で個人の成績に関する話をしないこと』の四つを約束してもらった。というか一回でも約束を破ったらクビにするだけじゃ済ませないぞと伝えてあるぐらい徹底させている。


この話がピンとこなかった人は『ググ○カス』や『スマホの操作方法』などに置き換えてみると何となくイメージできるのではないだろうか?


「ソウジ君の言いたいことは分かるし納得もできるけど、いくら圧倒的立場があるとはいえそんな半分脅しみたいなことをしちゃっていいの? もしそれで結果を出せなかったら面と向かってではないだろうけど、確実に陰で何か言われると思うよ」


「だからと言ってさっき挙げた四つのうち一つでもやってしまえば殆どの子供は勉強を嫌いになってしまうだけでなく、周りの目を気にしてドンドン消極的になっていってしまう可能性が高い。そこでレンに与えた課題だ」


学校の先生が授業で覚えた内容を理解出来ていない友達に教えることで自分の復習にもなるから~、とか言っていたのを聞いたことがある人も多いだろうが、なんでも某教育評論家によると『理解出来ていない友達』の部分を『自分の親』に置き換え、親側は『へ~、そうなんだ』とか『知らなかったよ』など兎に角簡単にでもいいのでまずは褒めることが重要。


そして最後に必ず『また何か新しいことを覚えたら教えてね』などと言ってあげると子供は自分が授業で覚えてきたことを求められている、また教えたら褒めてもらえるかもしれないと思い込むようになり…結果、家で授業の復習をすることを嫌がる子供でも勉強をしているという感覚を与えずに自然とそれをやらせることが出来るとかなんとか。


「だからレン君の部屋にあんな各国の上位陣がどんなにお金を出してでも欲しがるであろう魔法をただの学習机に付与してきたのか。……でもソウジ君は特に時間の指定とかをしてなかったけれど大丈夫なの? いくら四つの約束があるとはいえこの役目だけでも孤児院の誰かに任せた方がよかったんじゃない?」


「あれは俺のPC・スマホ・タブレットであればどれにでも繋がるようにしてあるし、どうしても出れない時は地球の最新科学とこの世界の魔法で作った超高性能AIが俺のフリをして受け答えをするから何の問題もない。それに時には分からなかった問題について一緒に考えてやる必要も出てくるだろうからな、今のところそれが出来るのは俺だけだ。そう今は……」


その後レンが成長していきソウジが作った学校の教師として自分がしてもらったことを自分の生徒にもしてあげたり、レンに勉強を教えた張本人もビックリするくらい頭がよくなったことによりソウジを含め五人全員が子育てと仕事を両立出来るように教師から準宰相に出世したのはまだまだ先の話である。


「それにしてもさっきからソウジ君は自分のことを馬鹿だ馬鹿だって言ってるけど、今の立場に必要な知識量が足りないってことだとしてもそれはちょっと言い過ぎじゃない?」


「……別に不幸自慢をする趣味があるわけじゃないがこれも院長さんとの約束だからマイカにだけは教えておくけど、俺は冗談抜きで馬鹿だし成績は生まれた時から下から数えた方が早いと言っていいほどの駄目人間だぞ」


例えば小学時代。


小一はあまり記憶がないのであれだが、小二の時から周りの色んな大人に成績面であーだこーだと言われるようになったのは確実だ。


まずは母親。アイツには小学校低学年の時から学校で行われたテストの点数が悪くて怒られるのではなく嫌味を言われるのは当たり前として、一番印象に残っている言葉は『このままアンタが生きてると将来花菜(妹の名前)に迷惑がかかるから一緒に線路に飛び込んで死のう』そしてその後に言われた『やっぱり線路に飛び込んで死ぬとお金が掛かるからどこか遠くに行って死のう』の二つである。


ちなみに俺はこの母親の言葉のおかげで八歳という若さにして電車に轢かれて死ぬと多額の損害賠償を請求されることを知ったと同時に、毎回父親が何も言わずに黙っていたことにより自分のことを助けてくれる人は誰もおらず、家にいるよりも学校にいる方が断然居心地が良かったのを覚えている。


特に母親に関しては家のどこにいても四六時中同じような嫌味を言ってくるもんだから、学校が休みの土日とかは嬉しい反面地獄の二日間だったりもした。まあこれに関してはテストが返ってきてから二週間くらい経てば飽きたんだか諦めたんだかは知らないが普通の態度に戻るので、そこさえ乗り切れば案外普通の生活を送れる分まだマシな方なのだろう。


ということで次は小学四年生の時にあった担任に関する話だ。


あれは授業参観の日によく行われる懇談会後のこと。なぜか担任の先生に俺と母親の二人が引き留められたかと思えば、急きょ三者面談が始まった。

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