第125話:子供達の憧れと親の気持ち
すぐにルナが戻ってくるだろうけどそれまでは暇なのでエレンの相手をすることにした俺は取り敢えずさっき思った疑問を聞いてみるかと考え
「店番で疲れたから奥で休んでるって聞いたのに、めちゃくちゃ元気じゃんかよ。本当はただサボりたかっただけじゃねえのか?」
「疲れてたのは本当だけど、ソウジ兄ちゃんが来たとなっちゃ休んでらんねえよ!」
「俺なんかの相手をしても何にも出てこないし、いいこともないぞ」
というかなんで俺はこの子にここまで気に入りられてるわけ? その若さでもう国王様に対するゴマすりですか? 将来有望そうですね。
「こうやって目の前にいてくれるだけでも嬉しいのに、普通に喋ってくれるとか友達に自慢しまくれるっつうの! ひゃっはぁー‼」
あー、これは残念ながら頭の病気ですね。将来は有能なヴァイスシュタイン男児になるかと思ったんですけど、どうやらこの子の将来は真っ暗闇の絶望しかありませんよ。
「もーう、お客さんの迷惑になるからお店ではあんまり騒がないでっていつも言ってるでしょうが。……すいませんソウジ様。実は最近子供達の間でソウジ様人気が凄くって、休みの日なんか日が暮れるまで友達とヴァイスシュタインごっこをやってるんですよ」
「なんだそれ? 国になりきってどう遊ぶんだよ?」
「違う違う。ヴァイスシュタインごっこってのはソウジ兄ちゃんとか騎士団の人達になって悪い奴らと戦ったり、訓練したりするんだよ」
「ちなみにこの遊びは女の子達の間でも流行ってるそうでマリノ王国のお姫様であるミナ様役や、リアーヌ様・セリア様といったお嫁さん役、ティア様のようなメイドさん役、専属秘書であるマイカ様役などに分かれておままごとのようなことをして遊んでいるようですよ。場合によってはエレン達のグループを加えてオールスター状態にすることもあるそうですし」
なんだオールスター状態って。アベ○ジャーズかよ。少なくとも俺の周りにはそんな国のお偉いになりきる遊びは勿論、リアルおままごとをしてる奴すらいなかったぞ。
そもそも中学生でごっこ遊びなんかしてる奴なんか……これが中二病というやつか。これは自国の子供達に中二病を発症させた俺が凄いのか、この国の子供達にとっての憧れの的がいなかったせいなのか。
つか他の人達は兎も角己のプライドを軽々と捨てて地面に額を擦り付けるような間抜けの役をやりたい奴とかいるのか? 個人的にはセレスさんをお勧めするぞ。
「んで、そこまで子供達に人気なのはなんでなんだ? この世界では王族や騎士団の人間に憧れてごっこ遊びをするのが主流なのか?」
「私はこの国以外のことはよく分かりませんからあれですが、多分ソウジ様だからってのが大きく影響してるんじゃないかと思うんですけど…実際どうなの?」
「確かに俺達の間ではソウジ兄ちゃんが一番人気だけど人によってはアベルさんやセレスさんに憧れてるって奴もいるし、女子は女子で憧れの対象は人それぞれって感じだから、え~と……人それぞれって感じだな、うん」
どうやらこの微妙な子供ならではの説明では納得いかなったらしいルナは不満そうな顔をしているが、まあ簡単に言ってしまえば主に騎士団に所属している男性陣はス○パーヒーロー枠で女性陣はプリ○ュア枠、城内にいる男性陣は仮面ラ○ダー枠で女性陣は少女漫画が原作のアニメに出てくるヒロイン枠って感じで日本の子供達が日曜の朝っぱらからそれらをぶっ通しで見て憧れを抱くような感覚なのだろう。
つまりそれらを見て幼稚園や小学校で○○ごっこをして遊ぶというコスパ最強の遊びに少しリアルさが追加されたのが今この国で流行っている…みたいなことを言いたかったんだと思われる。
ちなみに先ほど出した例をもう少し詳しく言うと
・ス○パーヒーロー枠:五人+n人のチームで敵と戦うためこれは騎士団が一番当て嵌まる
・プリ○ュア枠:上記の枠にも毎回二人くらい女性がいるが、まあプリ○ュアの方がイメージしやすいじゃん?
・仮面ラ○ダー枠:自分で言うのもなんだが俺が主人公ラ○ダーでアベルとセレスさんがサブラ○ダーポジション
・少女漫画~ヒロイン枠:まあこれに関しては誰が主役で…とかっていうよりはそれぞれがやりたいヒロイン(うちにいる女性メンバー)の役を
というような感じである。ついでだが俺が一番好きな各作品は夢○パティシエール・シ○ケンジャー・仮面ラ○ダーカブト・Yes!プリ○ュア5GoGo!で、一番好きなキャラは順番にシ○コラ・志○薫・天○総司・ミルキ○ローズだが…好みは人それぞれなので異論は認める。(どれか一つでも内容をしっかり覚えてるものがある人全員アナログテレビせだ…何でもないです)
と少し話がそれてしまったのでそろそろ戻すとして、さっきアーデルさんが言っていた『エレンに関しては騎士団の仕事を甘く考えているようなので』ってのは間違いなくこの件が関係していると思われる。
確かに安全な日本でヌクヌク生きてる子供がヒーロー(騎士団の仕事)に憧れるのと、この世界の子供がそれに憧れるのでは全く意味が違ってくるわけで親としては考えを改めてほしいのは分かるんだけど…それをしちゃうと今度はこっちが困っちゃうんですよねー。
まあ約束は約束なんで何かしらの方法でちゃんと守らせてはもらいますけど、結局最後に決めるのは本人であり、その過程に行き着くまでの思考を大きく左右するのは一番近くにいる家族だと思いますので私は一切の責任を負いません。
なんていくらこれが本心とはいえ親の気持ちを考えればそんなこと死んでも言えないし、子供達の未来の為に死ぬ気で頑張るとしますかね。………騎士団の仕事が自分の命を懸けて国を守る戦士から、街の平和を守るお巡りさんになればまだマシだろ?
なんてことを考えながら支払いを済ませた俺はマイカを迎えに孤児院へと歩き出した。
孤児院に向かう途中、勇者率いるクロノチアに宣戦布告をした張本人だというのに心優しいお店の人達が次から次に声を掛けてくれては何かしらを持たせてくれるもんだから本来なら十分程で着くはずの目的地に一時間以上も掛かってしまった。
まあここまで自分によくしてくれたのは俺個人の人柄によるもの…じゃなくて、毎日の買い物であれらの店をよく利用しているリアやエメさん、そして子供達五人による人柄のよさが大きく影響していたんだろうけど。
ちなみに貰ったものは全て食べ物なのだが、もうすぐ夕食ということを考慮してくれたのか皆さん気を使って一口サイズの物を渡してくれた。それでも貰ったものを全部を合わせたらかなりの量になるんだけどそれは収納ボックスに入れとけば時間が経っても大丈夫だし、どうせ仕事やゲームをしている時に食べてたらスグになくなるんだろうけど。
とかなんとか考えながら扉の横に設置されているインターホンを押すと職員の誰かが対応しようとしてくれたと同時に勢いよく扉が開かれ、そのまま子供達が大勢出てきたかと思えば何かが書かれた紙を広げて
「見てみて兄ちゃん、俺算数のテストで百点取ったんだぜ!」
「僕も百点だったんだよ!」
「私も、私のも見て!」
何かと思ったらそういうことか。この前アリス達にも同じようなことをされたけど、俺は子供の褒め方なんて一切知らないんだからそういうのは得意そうなマイカに見せろよ…って普通に考えてマイカは俺が買い物をしてる間ずっとここにいたんだから見せたに決まってるか。アリス達の時も同じだったし。
「分かった、分かった。全員分見てやるから一回中に入れ」
そう言いながら外に出てきていた子供達を半強制的に孤児院の中に入れ、ここを建て替える時に作っておいた教室に移動…するのではなく敢えて応接室を借り一人ずつ順番にこさせるようにして不慣れながらも褒めていった。