第112話:買い物と思春期
クロエと飯を食いに行ってから数日が経ち、やっと仕事関係が一段落したので俺はティアを連れて日本でちょっとお高い車を買ってきたのだが、これが予想以上に安く買えたのでこれから皆さんに方法を教えようと思う。ちなみにこの前あいつが便利云々言っていたいたのはこのことである。
まず異世界からネット通販を通して買い物をするとこちらの世界に合わせた値段設定になるのは既に知っていると思うが、この間なんとなくティアと二週間同棲した時に掛かった食費を確認したところ日本にいながら通販を使ったにも関わらず安い値段で商品を買えていた。
そこで俺は自分が同じ状況下でやるとどうなるのか気になり色々と実験してみたところ以下のことが分かった。
・日本の家で元の姿に戻ってから通販を利用しようとすると通常の値段でしか買い物が出来ない
・しかし場所は同じなのに姿を異世界バージョンにしたところ値段が下がった状態で表示された
・次にスーパーなどで買い物をするとどうなるのかだが、まずティアに買い物をさせに行ったところ普通に異世界での値段設定で、しかも誰も違和感を覚えずに買うことができたが元の姿の俺では無理だった
・なので今度は恥ずかしいのを我慢して異世界バージョンで同じ商品を買ったところ、なんとティア同じ値段で買い物をすることができた
この四つの結果から俺はちゃんとした異世界人もしくは異世界バージョンの姿をしている地球人ならばどんな物でも値段さえついていればそれを格安に、しかも誰にも怪しまれずに買い物が出来ることを発見した。
その為それを利用してお高い車を買おうと考えた俺はティアに協力してもらい、ワザと即金で買えるだけの札束を見せびらかして値切れるだけ値切ってから買ったので元の値段を考えると滅茶苦茶安く買えた。しかも契約者の名前は白崎ティア様なので税金関係も格安である。
ちなみに苗字は俺とティアがそういう関係になった……というわけではなく、ただ考えるのが面倒だったので白崎にさせた。
とまあこの方法を使えば誰でも簡単に、しかも格安でお買い物を楽しめるのでよかったらやってみてください。
「なにをボーとしておる。サッサとテーブルを拭いて食器を出さんか」
「はいはい、分かりましたよ」
相変わらずこいつは役職だけメイドだな。……まあこいつのそういうところが好きなんだけど。
そんな感じでティアに作ってもらったお昼ご飯を食べ終えた後、こっちの家にはたまにしか来ないため食洗器を使うわずに俺が後片付けをすると言ったらリアとは違い普通に譲ってくれた。
流石は役職だけメイド…というのは嘘で立場が何であろうとこれくらいするのは当たり前である。まあそんなことを言う王様は俺ぐらいだろうけど。
なんて自画自賛をしながら食器洗いをしている間に掃除機をかけてくれていたティアにお礼を言い、お互い元の姿に戻ってから城に帰り…俺は自分の部屋でいつもの服に着替えようと思ったのだが
「あれ? 部屋の鍵が開いてる。ってことは鍵を持っている誰かが中にいることになるんだが…掃除はもう終わってるはずだからあの三人のうちの誰かか?」
ちなみに俺は四六時中魔法を使うのがあまり好きではないのでそれを使わず普通に着替えをするし、自分の部屋に誰かがいようと基本確認はしない。だって不法侵入とか絶対に無理だし。
ということで早速玄関的なところで靴を脱いでから部屋に入ると、何故か人の部屋のデスクトップPCの前にセリア以外の子供達が四人、その後ろから画面を覗き込むようにミナ・リア・マイカ・エメさんの四人、そして俺のベッドでごろごろしているセリアが一人という状況が広がっており
「あら、おかえりなさいソウジ」
どうやらセリア以外は画面に集中しているらしく俺の帰宅に気付いたのはこの子だけだったので返事の代わりに自分も寝っ転がって後ろから抱きしめ
「これは一体どういう状況でしょうか? そして皆様は私の部屋をなんだと思ってらっしゃるんですか?」
「この前貴方が作ったプールで遊んだじゃない? その時に子供達の水着を買うのに色々とサイズを測ったんだけど、みんな年相応に成長してたからそろそろブラジャーを買わなきゃっていう話をしてたのよ。それで丁度時間が出来たからって感じ。それとこの部屋のPCを使ってる理由は仕事用を使うのはあれだし、タブレットだと画面が小さくて見づらい。じゃあモニターが三つもあるこの部屋のPCを使えばいいじゃないかってなって、ミナがここの鍵を開け・リアがPCのロックを解除し・マイカがよさそうなお店を三つピックアップしてそれを一画面ずつ表示さたらこうなったわね」
「それ説明になってないし。尚更意味分かんねえし。マジで人の部屋をなんだと思ってるわけ?」
そう言うとセリアは寝返りを打って真正面から抱き着くような態勢になってから上目遣いで、しかしジト目でこちらを見ながら
「アベルとティアにはモン○ン? を二人以上でやる時限定でだけどこの部屋を使わせていることは知ってるのよ。まあ夜は絶対に貴方と一緒じゃないと駄目ってルールにしてるみたいだけど」
「使わせてるっていうか俺がゲームをする時に残り二画面で調べ物が出来るように三つ用意したのに、それに気付いたあいつらがサラッと自分のP○4を設置した挙句人の部屋をゲーム部屋として使ってるんだからそこの主がルールを作るのは当たり前だろうが。だいたいティアならまだしもアベルにお前らの裸どころか下着姿を見られたってなったら絶対に殺すし、いくら全部屋完全防音になってるとはいえ隣の大部屋とドアで繋がってる以上誰かがいたらウザいし」
まあそこら辺はアイツらも気を使ってくれているのかこの部屋を使う時は必ず確認をしてくるようにはしてるっぽい。
………あれ? そう考えるとあの二人の方が筋は通ってないか? だってアイツらはちゃんと使用許可取ってるのに対して今回の件に関しては何にも聞いてないし。
「それとこの部屋のPCを使う許可ならミナが貴方に連絡して許可を取ったはずよ」
『はあ? そんなことした記憶ねえぞ』なんて言っておきながらも万が一ということもあり得るので俺は一旦セリアのほっぺや髪の毛を弄ったり頭を撫でるのをやめ、自分のスマホを確認してみると
「………あの野郎、人が食器を洗ってる時に勝手に返信しやがったな」
「そんなこと言いがらも、どうせティアならいいかとか思ってるんでしょ?」
「なんでそうなる」
「だってソウジは気に入った子が相手だともの凄~く甘々だもの。その証拠に私達三人にはこの部屋の合鍵を渡してくれただけじゃなく自由に出入りしていいって言ってくれたし、何だかんだ言いながらもこの状況に一言も文句を言ってないじゃない。まあ、貴方がティアのことをどれくらい気に入ってるのかは知らないけど」
全部当たってるどころか俺がパーソナルスペースに五月蠅い反面気に入った相手なら大抵のことは許すことまで気付いているとは、相変わらず鋭いことで。
まあ気付かれたところで何かがあるわけでもないので俺は再びセリアの髪の毛でも弄ろうかと思った時
「うちもセリアみたいなのがいい‼」
そうサラが不機嫌気味に言い出したので何かと思いセリアを抱きしめたまま寝返りを打つと大人向けのブラと子供向けのブラのサイトがモニターに映し出されていたのが目に入ってきた。
あ~、なるほどね。 確かに前者の方がデザインは凝ってるし欲しくなるのは分かるけど、中学生くらいの子なら後者でいいんじゃないか? 知らないけど。
「うーん、でもサラ達はまだ胸が小さいんだし子供用の方がいいと思うよ」
「でもこっちの方が可愛いです! それにミナお姉ちゃんはお胸が小さいのにこういうのじゃない!」
「……っっ、っく…くく―――、あははははは‼ アリスと違ってこれ以上成長の見込みがない人間を虐めるのは………えっ? なに、なになになに⁉ なんで四人してこっちを睨みながら近づいてくるわけ?」
そんな疑問に子供達四人は答えてくれないどころか俺のところに来たかと思えばそのまま四肢を引っ張ってベッドから引きずり降ろそうとしてきたので俺は咄嗟にセリアが一緒に落ちないよう離したのとほぼ同時に落とされた…わけではなく、その四人に持ち上げられた状態で廊下まで運ばれて行ったかと思えば優しく地面に降ろされ
「サキ兄ぃ、デリカシー足りないです!」
「ということでソウジ様はしばらくの間この部屋に入ってきては駄目ですよ」
最後にエレナがそう言うとみんな部屋の中に入っていき、扉が閉められたとほぼ同時に鍵を掛ける音が廊下に鳴り響いた。
それにより俺は心に謎のショックを受けたせいでもうその場から動きたくすらなくなり、体育座りをしながら目の前にあるマイカの部屋の扉をボーと眺めているとセリアが部屋から出てきたのだがその後速攻でまた鍵を閉められた。