第100話:建国宣言
あれからも俺は一人ずつ牢屋から出しては質問をし、真偽を確かめた後に処刑・国外への永久追放・国内での何らかの処罰・保留の4つから一つをその場で言い渡し、処刑なら即処刑といった感じで20人分終わらせた頃には訓練場が血の海へと変わっていた。
25人中この国に残ったのはたったの5人だけ。しかも保留にしてやれた奴は2人のみ。いくら日本の法律よりも処刑の基準を引き下げているとはいえ、たった数時間で10人もそれの対象者が出てくるとか治安悪過ぎだろ。
「……言っておくがこれは見せしめでも何でもなく今後もうちの国ではこんな感じでバンバン処罰していくから覚えとけよ」
『『『『『『………………』』』』』』
「大体最初の五人に関しては全員捕まえた次の日の新聞にちゃんと~未遂で確保って載せてたんだから気付けよ。この国は世界で一番安全な国であり、犯罪者にとっては一番危険な国に変わったんだってことを…って、対象者を処刑した後に言っても遅いか。……ねぇ、このことに気付いて鳴りを潜めている犯罪者の皆さんもそう思いません?」
そんな軽い脅しをしながら俺は血の付いた刀の後片付けをし、死体はそのままの状態で自分の席へと戻ると綺麗なドレスを着たミナが俺の前まで歩いてきて
「お疲れ様ですソウジ様。あとの説明は私の方からしておきますので、その間にお風呂と着替えを済ませてきてください」
チッ、馬鹿共のお陰で服はもちろん顔や髪にまで返り血が付いてるじゃねえか。まあ服以外はいつも通りだけど。
「おい、行くぞティア」
「相変わらず人を殺して返り血を浴びた直後のお主は全てが怖いのう。普段の無邪気な姿が姿なだけに尚更じゃ」
そうは言われても自分のことなど分かるはずもなく、俺はティアの返事など聞かずに家の風呂に転移しようとした瞬間…今度はお母さんが時と場所も関係ないと言わんばかりの雰囲気を醸し出しながらこちらに近づいてきて
「少なくともここにいる人達は誰もソウジのことを怖いなんて思ってないから安心しなさい…というよりもこんなことで一々怖がっているようでは貴方の傍にいる資格なんてないし、それを見抜けないほど私達の娘の目は節穴じゃないわ」
などと半分自分の子供自慢をしてきたかと思えば手が返り血で汚れることなどお構いなしに俺の肩を掴んでマイカ達がいる方を向かせきた。
するとそこには先ほどまでお茶やらジュースを飲みながらお菓子を食べていたはずの子供達が真剣な顔で、しかもお行儀よく座った状態で真っすぐこちらを見つめ続けていた。………なんか左端に笑顔で『ソウジく~ん』みたいなノリで手を振っている奴もいるけど。
「それにエメとリアーヌの二人が教育してる時点で自分は従者だから知らない…が通じるような甘っちょろいメイドが生まれるわけないでしょ?」
少し前に母さんが似たようなことを言ってたけど、一体どんな教育をしたらあんな覚悟は既に決まっています…みたいな顔が出来るようになるんだよ。少なくとも現代日本でぬくぬくと育った14歳の子供には絶対に出来ない顔だぞ…って、平和ボケした日本人と一分一秒後には命の危機が訪れるかもしれないこの世界の子供を比べる時点で間違ってるか。
それから俺はティアを連れて一旦家に戻り、シャワーと着替えを終えて戻ってくると…先ほどまでの恐怖による静けさは完全になくなっていたどころか俺が戻ってきた瞬間観客席から多くの祝福の言葉や温かい拍手が、そして俺に対する称賛が沸き起こった。
「どういうこと?」
「あら、お帰りなさい」
そんな俺の疑問に対し一番最初に返事をしてきたのはセリアだったのだが、その後誰も言葉を発しようとしなかったので再び俺が状況説明を求めると、今度はミナが表情はいつも通りながらも声はかなり落ち込んでいるのが分かるようなもので
「……ソウジ様がいなくなられた後、約束通り私が皆様に向けて今回の処罰についての説明をしたのですが、自分の力不足のせいで…どうしても納得してもらえない方々もいて……」
「別に私はあの人達のことなんて何とも思ってないし、今回の件に関しては私が自分でやったようなものなんだからミナが一々気にするんじゃないわよ。それに王族、貴族は使えるものは何でも使うのが定石であり、それは国王のお嫁さんでも同じこと。まあ私はそんな理由ではなく、ソウジの為にあの人達を使ったのだけど」
まさか⁉
そう思った瞬間条件反射か何か分からないが目の瞳孔が大きく開き、それによって視野が広がった俺の視界に入ってきたものは
さっき処刑したクズ共と一緒に元ボハニアの国王と王妃、そしてどれもこれも見覚えのある貴族の死体が一緒に転がっているものだった。
クッソ、そういえば死体の後処理と保管場所は全部ミナ達に任せっきりで完全にノーガードだった。
賞賛の嵐の理由はこれかよ。ふざけやがって‼
「ほら坊主、これマイクな。あと姫様達の婚約発表も一緒にしといたから後はお前がまとめれば終わりだぞ」
一応場所が場所なので俺もポーカーフェイス魔法で表面上は冷静なフリをしているが、実際は今スグにでも何かに八つ当たりしたくてしかたないくらいイライラしているところにアベルが涼しい顔でそんなことを言ってきた。
その為俺はアベルからマイクを乱暴に奪い取り
「お前らのことを散々苦しめてきた奴らを殺したのはこの俺だ‼ それにあたって今日からこの国はボハニア王国じゃなく、ヴァイスシュタイン王国とする‼ 文句がある奴は聞いてやるから今すぐ言え‼」
王族としては相応しくない言葉遣いないのは分かっているがどうしても今の気持ちを抑えられず、それを口から吐き出すかのように二度目の建国宣言をすると…今までで一番大きい歓声が沸き上がった。
「あれほど感情に任せて行動するなと教えたじゃろうに。後でお説教じゃの」
「ですが今回は私達の教育予定も知らずにアベルが勝手にご主人様を煽ったせいでもありますし、若干仕方なかった感もありますが」
「はあ⁉ どう考えても俺のあれはナイスアシストだったろ?」
「言っておくけどミナが申し訳なさそうに喋ってたのは全部ソウジをテストする為にやった演技よ」
「まああの感じですとアベルが煽るまでは何とか自分の気持ちを我慢できていたようですし、合格でよろしいのではないでしょうか」
こいつら、大事な式典を利用してテストするとか頭のネジが何個か外れてるんじゃねえの。
それから歓声がある程度収まるまで待ってからあらかじめ用意していた救済処置のお知らせをし
「あっ、言い忘れてたけど俺は今のところ最大でも六人までとしか結婚する気はないからよろしく。ってことで後は祭りでも何でもご自由にどうぞ」