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オセロとパンジー

作者: 森野真

某国や某宗教を擁護する気はサラサラありません。

 どこまでも、どこまでも先送りにされ続けた経済問題、それは何時までたっても解決されず、ついに日本は引き返せないところまで追い詰められてしまった。そして、にっちもさっちも行かなくなった日本政府が選んだ手段は、遺伝子選別による最優良化システムであった。

この頃になると、遺伝子の解析は更に進み、どのような性格になるのか、どのような職業につき、どのような役職に就くのが良いか、そこまで判別できるようになっていた。その情報によって、この春から、住む場所、職業などが個別に割り振られ、俺には田舎の一軒家が割り振られた。

職業については、面談の時に、田舎の段々畑を再利用した墓地ビジネス、宗教的な転生ではなく物質としての転生を語り、それが採用される形となった。新しい事を一人で始めるのが良い遺伝子配列で、日本人にはかなり珍しい形だったので他の人より優遇されたらしい。

そして、同じ家で住む女性も今日やってくる。

遺伝子的な話だと、似たような配列を持った人か、まったく違った配列を持つ人に引かれると言うが、はたしてどうなる事やら。

やってきた女性は、うつむき加減で人の目を見ず、おどおどした感じのやせ型の女性だった。髪は長いが適当に一つに縛っただけで、化粧っ気も無い人だった。どうやら、似たような遺伝子配列の人が選ばれたらしい。

似ているのならば、彼女も一人で何かをするのが良い人間なんだろうか?と、考えたが、そうでも無いらしく、まるで借りてきた猫のようにおとなしい女性であった。

割と好みのタイプなので、ラッキーだな。と、思ったものの、自分は上から言われた事をただ黙って従うタイプの人間では無い事を思い出した。同じところで住めとは言われたが夫婦になれとは言われていないし、言われたとしても本人の意思の方が尊重されるべきなのは当たり前の事だ。

希望していたビジネスを始められる喜びでそんな当たり前のことも忘れていた。

こうして、奇妙な同棲生活が始まった。

自分は自分の事を出来る性格なので、朝が早い日は自分で朝食を作る。家事に慣れた人ならわかると思うが、一人前作るのも二人前作るのも大した違いは無いのでついでだから同居人の分も作ってやったりもする。

同居人は綺麗好きなのか真面目なのか掃除等こまごました物をしてくれているようだ。

そんな形容しがたい生活が半年ほど続いたある日、家の奥でオセロを見つけた。

何もすることが無く暇だったので同居人に声をかけてみた。向こうも暇だったからか誘いに乗ってくれた。

せっかくなので一つ賭けでもしようと提案し、もし自分が勝てば、これから一時間、本音で話すこと、向こうが勝てば庭にパンジーを植えたいのでそれを手伝うこととなった。

結果は。

俺の勝ち。

言っちゃ悪いがあまり強くなかった。

そこで俺は、思っていたこと、自分は君が何を考えてどう思っているかわからないが、君の考えを優先したいと思っていること、上に命令されたから従わなくてはならないという考え方が嫌いな事、自分がそんなタイプの人間であることを話した。

そして、君はどんな風に考えているのか聞かせて欲しい。と。

私はここで一緒に暮らす人が自分の夫になる人だと思っていた。やさしい人がと嬉しいと思った。私は愛されたいと思った。と、言うのが彼女の答えだった。

と、いう訳で、同居人は今日から僕の妻となる事になった。

とりあえずこれから手をつないでパンジーの花を買ってこようかと思う。

遺伝子選別による最優良化は一定の成果を上げ、経済も上向きに安定してきたが、一部人間の猛反発、人権侵害、他国からの抗議により近々廃止される事となった。

日本政府による行き過ぎた政策、国主義による人権侵害として今後長らく語り継がれ、国際社会の信頼を大きく失う結果となった。

ただ、僕と妻において、あれは運命を開いてくれた素晴らしき政策となった。

ただ、どんな状況でであろうと、何の拍子に好転するかもしれないし、だからといって幸せになれないなんてことも無いだろう。ってお話です。

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