表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/18

港町 アブド 5:ワーム乗り

これでこのお話は終わりです。昨日中に出せずすいません。

走る速度を上げて2人はワームを引き離す。ドロはウツワの抱えるペンルトの頬を強めに叩く。


「痛っ!ここは……」


「ペンルト、質問に答えろ。いつも身に着けている物の中に変わった物はないか?」


「へ?一体なんのことだい?それよりもさっきの化物は……」


「聞いたことに答えてくれじゃないとお前を海の彼方に放り投げなきゃならなくなる」


いきなり物騒なことを言われたペンルトは目を瞬きドロを見る。ドロの表情は真剣そのもので冗談で言っているようには見えずペンルトはゴクリと唾を飲み込んだ。


「か、変わった物?そんな物持ってない。ただ変わった商人から貰ったお守りがあるだけで」


ペンルトは首に下げていたお守りを首から取りドロに渡す。お守りはお守りと言うにはなんとも長く奇妙な形をしていた。ドロはお守りの袋を開くと思わず苦笑する。


「これは……その商人って結構凄いんじゃないか?」


「どういうこと?」


ウツワもドロに近寄り袋の中を覗く。


「?だからってなんで追ってくるの?」


ウツワは袋の中の物が原因だとは到底思えないと首を傾げる。


「どうしたんだ、私はお守りは開けていないから中に何が入っているか知らないんだ」


ドロはニヤリと笑うとペンルトにお守りの中を見せる。


「これは何かの牙?特にそれ以外は何も無さそうだが。これが追われる理由なのかい?」


「ああ」


ドロは確信を持って頷き後方で未だ追いかけ続けるワームを見てウツワが見れるよう指を指す。


「ウツワ見れるか?あのワームの口の中、一箇所牙がない」


ウツワはペンルトを抱え直すと後ろを振り返りドロの指さす方向を見て「あっ、ホントだ」と納得する。


「ど、どこだい?」


「ペンルトは見なくていい。また気絶されると面倒くさい。要するにだ、ペンルトの貰ったお守りはあのワームの牙だ。その商人がたまたま拾ったか何かしたんだろう。ただ自分の一部を取り返す為に今あのワームは俺達じゃなくてこの牙を追ってるって訳だ。」


「あのゴブリン達は?」


「元々いたんじゃないか?普段は温厚で森の深くまああのワームの作った洞窟辺りに住んでたんだろう。たまたま激昂したワームと出くわして喰われない代わりに牙でも探してたんじゃないか?それで自分の牙が近いことを知りゴブリン達を喰い払い追いかけてきたと」


「なんか大分無茶がある推測な気がするけど、この牙を追ってるのは間違いなさそうだね」


ウツワがため息混じりに言う。ドロは背中に手を回すとポンポンと叩く。するとつぎはぎだらけの人形がドロの背中からもそっと顔を出す。


「出番だ。魔ペット」


「やっとデスカ」


「珍しく休みたいって言ったのはお前だろ?」


「言わざるをエマセン。体が海水を吸って全くもって動けませんでしたカラ」


「悪かったよ。魔ペット『糸』だ」


「ワカリマシタ」


魔ペットはもぞもぞとドロの肩に手をのせると手から糸を出す。その糸をドロは掴むと自分の手に巻きながら長さを調節する。


「ウツワ釣り竿って作れるか?」


「釣り竿?釣り竿ってあの釣り竿?」


「魚を釣るやつだ。それで作れるのか?」


「作れるけど」


ウツワはペンルトを抱えていない手を前に出すと透明な釣り竿を作る。といってもただの細長い棒に糸を巻く糸巻きをつけただけの簡素な物だ。


「上出来。後はこれに紐をつけて紐を牙に括りつけたら……完成だ!」


ドロは釣り竿を高く掲げて完成を喜ぶがワームの速度が上がり慌てて釣り竿を肩に担ぐ。


「馬の顔の前に人参を吊り下げてるみたいだな。馬とは似ても似つかないけど。ウツワこの牙遠くまで投げられるか?」


「うん、両手ならそれなりには」


「おし、じゃあペンルトは俺が持つから頼む」


「了解」


ドロは先にペンルトを持ちウツワに釣り竿を渡す。



「頼んだ!」


「頼まれた」


ウツワは牙を持つと速度を上げて跳躍し牙を思い切り海に向かって投げる。ウツワが牙を投げるとピタリとワームの動きが止まり、ウツワの投げた方向に体の向きを変え海に落ちザブザブと海を泳いでいく。


「ウツワあの背中に乗るぞ」


「ん?乗る?なんで?」


「ワームって言っても一応竜だぞ!!だったら一度くらい背に乗りたいだろ!!」


「ええっ、まあでもそうだね。ちょっと乗って旅するのもありかも」


「だろ!ってことで行こうぜ!」


「いでっ」


ドロはペンルトをボトッと落としワームに向かって助走をつける。慌ててペンルトはドロの服を掴む。


「ま、待ってくれ!」


「うん?もう森にはゴブリンもワームもいなくなった。後は平和に木を切ってられるぞ」


「もう行くのか?」


「ああ、じゃないとワームが行っちゃうしもう盗るもんはとったしな!よっと!」


ドロはペンルトの手をペシッと叩くと助走をつけて思い切り跳躍した。


「あっ」


「ごめんなさい。ペンルトさん、さようなら」


ウツワはペコリとペンルトにお辞儀をすると助走もつけずに跳躍する。


あっという間に崖下に落ち見えなくなる。ペンルトが崖下を覗くとワームの背に乗ってはしゃぐ2人の少年の姿があった。


ペンルトはそのワームに乗った少年達が見えなくなるまでずっと海を眺めていた。



****エピローグ****


ペンルトが町に帰ると町中が大騒ぎになっていた。ペンルトが理由を聞くとなんと村の貯金が丸々無くなってしまったという。ただペンルトは誰が盗んだのか分かった気がした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ