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2話 こんにちは異世界

よろしくお願いします、

また、感想欄にて『 理想の萌え』を募集中! お気軽にどうぞ!


 


 異世界。そう一言に言われても、いやまあ言葉の通りなんだけれども、普通に見た目も変わらない真昼間の街中を人間が歩いているとなるとどうにも信じ難くなる。エルが俺に体験させた奇跡は確かに本物だったのだから、これも確かにそうなんだろう。


 だって木組みの建物も石畳の道も、俺は自分が住んでいた街じゃ見たことがないんだから。しかも見知らぬ文字で書かれた看板があるし、見たこともない野菜か果物が八百屋と思わしき店に鎮座しているのだ。

 嫌が応でも、そうだと納得しなければ前進しない。

 そう、ここは異世界。放り出された俺はどうすればいいのでしょうか?


「詰んだ。こんなことになるなら異世界転移モノをもっと研究しておくんだった」


 俺には知識も力もない。貰った恩恵(ギフト)は『萌え』というどう考えても非戦闘系能力。これが所謂俺TUEEEなチートな能力だったり、武器に関連出来る何かだったりしたのなら、工夫の仕様もあっただろし、あるいはする必要もなかったかもしれない。けれども、無理じゃない? 『萌え』を戦闘に、武器に結び付けるのは無理じゃない?


 そんな訳で色式花奏は、初っ端から詰んでいた。具体的には、石畳の道の端というか建物の間で、色んな人の往来を眺めているという具合だ。迷子ちゃんですっ!


「うむ、どうしたものかな」


 マジでアテがない。てか何、そもそも競うとは言われたが何で競うの? 目的不明だし、行動のしようがないんだけども。


『ぐ〜〜』


 うっ。そう言えば飯を食いに行く途中で死んだんだった。色々あって、てか今も色々なくて困ってるけども、腹が減っていたのだ。

 しかし、それこそ俺にはこの世界の貨幣がない。そもそも貨幣あんの? 物々交換の可能性だってなくはない。いやまあ、これだけの発展がされているのなら、自然と貨幣は出回っているだろうけど。

 うーん。金無くして飯は食えん。正確には金無しで飯を食うのに方法はあるが、この世界だと安全が保障されん。

 ……とりあえず、涙を浮かべておこう。誰か釣れるかもしれない。


 そして五分もすれば結果は出た。


「君、どうしたの?」


 お、おお! 初めて目の当たりにしたリアル金髪碧眼。地球でもこの女性くらい成長していて綺麗な金髪の人は少ないと聞くし、碧眼なんて滅多に見ない。それもおそらく何の手も加えずに、だ。天然物の金髪碧眼美女。


「ごめんね突然。私の名前はリディア。一人でどうかしたの? (はぐ)れた?」

「いえ」

「そうなの? 何か困っているみたいだったから」

「まあ、はい。困ってはいます」

「何に?」

「実はーー」


 と、ここでリディアさんにありのままを話しても、迷子の頭がイタイ子という認識に収まるだけだ。もっと言えば、見ず知らずの他人に、いやまあ名前は知っているけど、とにかく親しくもない相手に事情を話すのも気がひける。競うという名目でこの世界に来ている以上、俺が競争相手だという認識に繋がる様な事は少しでも避けたい。

 だがしかし、一方でぼんやりと事情を話す必要があるのも事実。嘘ではなく、かつ真実でなく、曖昧で抽象的な言葉で。偽りの事実を語るのなら、それを自分がそれを信じる切る。これ騙しの基本なり。


「田舎から出て来たんですけど、少し記憶があやふやで。宿のあても飯のあてもなくて……」

「一人で?」

「多分、はい。そうです、一人でです」

「へぇー。小さいのに偉いね」


 異世界でも俺のロリ具合は絶好調の様だ。まあ自然とやってしまってはいたが、随所に俺のロリスキルを散りばめていたからな。これで見破られていたら、自信を失くすところだった。初っ端アイデンティティクライシスだった。


「そうだ名前は?」

「あ、これは失礼しました。カナデと言います」

「カナデ、カナデ……。珍しい名前だ。でも可愛いね」

「ありがとうございます。わたし(・・・)も気に入ってるんです」

「そっか」


 うん、知らない年上の女性だし、ここは敬語でいいはずだ。割と素で話してはいるが、それは今の状況を加味すればいい味を出す。知らない土地で気丈にも大人ぶる女の子、的な。


 おや? リディアさん何か迷って……。あ、決まったみたいだ。俺の方を真っ直ぐに見据えてる。


「ねえカナデちゃん。良かったうちに来ない?」

「え?」

「行くアテがないならとりあえずさ、うちに来てみてよ」

「でも」

「いいのいいの。困った時はお姉さんに任せなさい」

「じゃあ、お願いします」

「うん。じゃあ行こっか」


 よっしゃあぁぁぁっ! これはこれは、宿の確保に成功したと言ってもいいのでは? やっぱり可愛いは便利、萌え最高。

 いかんいかん。ここで気を抜くわけにはいかない。何か自分で生活出来る方法を見つけ出さなければいけない。いつまでも置いておいて貰える訳ではないだろうし、それはそれで俺の微小な良心が痛む。……まあ、一生懸命何かしてる方が可愛く見えていいだろうし。


 そんなこんなで街の外観に心惹かれながら、街の一角、住居エリアと呼べるだろう場所にやって来た。ここにいる人たちはよほどの輪があるのか、すれ違う度にリディアさんは食べ物やら色々を貰っていた。

 木組みの建物に入り階段を二階ほど上れば、ようやくリディアさん家のようだ。


「入って」

「はい。お邪魔します」

「ふふ。いらっしゃい」


 あ、女の子の部屋だ。ふわっと甘く優しい香りがする。それに、日本じゃ味わえないような、木の香りというか、うーん、とにかくいい匂いがした。


「今飲み物出すから座ってて」

「ありがとうございます」


 他にも部屋はあるようだが、キッチンと隣接している部屋がリビングのようだ。一人暮らしにしては、いや男気も同居人の気配もないからだけど、広い。街を見たところ所詮近代よりの中世ヨーロッパ風といった様子だったが、思っていたよりも家具がしっかりしているし充実している。

 リディアさん、どっかのお嬢様って事はないよな。にしては服は普通そうだし、一人暮らしもしてないだろう。何よりも、こんな序盤でお嬢様と出会うとか、ハーレム野郎でもあるまいし。


 椅子が高い。まあいつもの如くだからさして気にはならないが。

 足を宙ぶらりんとさせぼんやりとしていると、リディアさんがお盆を持ってやってきた。


「お茶でもしながら話そうか」


 そう言ったリディアさんが置いたのは良い香りのする紅茶みたいなもの(異世界だから紅茶と言っていいのかどうなのか……)。それに合うようなクッキーまで用意されていて、1ヶ月くらい前にやった女子会(プラス俺)を思い出す。その時はここまで上品ではなく、むしろ下品だったが。

 リディアさんの紅茶もうめんどくさいを飲む所作は、本当にどこかのご令嬢のように美しかった。様になる。


「遠慮しないでね」

「ありがとうございます」


 気を遣い過ぎるのも失礼だしクッキーを一口とぱくり。


「おいし〜」


 優しい甘みだ。砂糖ではないし、なんだろう。それに食感も時折クッキーに混ぜられたものがアクセントになっていて、いやはや本当に美味し。うまし〜、だ。


「ありがとう。そのクッキー手作りだから嬉しいわ」

「こ、これ手作りなんですか?」

「そうだよ。お菓子作るの好きでね」

「そうなんですか」

「それよりもこれからの事だね」

「はい」

「カナデちゃんはなんでこの街に来たの?」

「えーと。記憶がなくてですね」

「そう……。じゃあ、これからどうしたい、とかはないわよね」

「はい」

「うーん。どうしようか……」


 そりゃ困るわな。身元不明の見知らぬ幼女。おまけに記憶喪失で何もわからない。俺だってどうしろと? となる。


「うん! とりあえず行ってみようか」

「はい?」

「冒険者協会に」

「冒険者協会?」


 まあ、言葉の羅列からなんとなく予想はつくが。まあ俺記憶喪失ですし? 先生ーわっかりませーん。

 ……。待てよ。今更だけど、超今更だけど。言葉普通に通じてるんだけど。日本語……って訳ではないだろうし、でも日本語が通じてる。

 あるあるネタみたいに勝手に翻訳か? 変わった点があるとするのなら、それは恩恵(ギフト)だ。ていうか本当にそれが要因なら、恩恵が翻訳だけって。恩恵ギフトの意味がないんですけど、恩恵になってないんですけど。


 茶と菓子をいただいた後俺は、リディアさんに連れられた。リディアさんの部屋からほど近い場所にあった立派な建物。そこには厳ついおっさん兄さんが多く出入りしていた。ふええ、怖いよぉ〜。


「ほらここだよ」


 異世界に来て1時間。場面は二転三転して冒険者協会となる。





お読みいただきありがとうございます。

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