あー、空があおい。
「「おかわりー!」」
「はいはい」
「うんめェーー!」
「……」
いや、特別美味しいわけじゃない、極々普通のごはんだよ。
まあ、美味しいと言われて嬉しくないわけじゃないけど。
ほっぺたにおべんとつけた厳つい男たちを見やり、はあとため息。
なんだって、こんなことになったんだか。
思い返せば、そう。
あれはいつも通りに重い買い物袋をぶら下げて、家路に着いていた時だ。
特売日だからって、欲張ったのがいけなかったのか?
でも、お給料も入ったばかりでついつい色々と買い込んでしまったのは仕方ないと思うんだ。
今日は豪華に行けるぞっと、前日までのお茶漬けメニューに飢えてたわけじゃない、決して。
しかしまあ、そんなこんなで両手に食材やら調味料やらが入った袋を持って、帰宅する途中だったんだ。
お米がなかったのが良かったのか悪かったのか。今となってはあったら良かったのにと思う。白米が恋しい。
と、話が逸れた。
そうだ、ただ、早く帰ってご飯の準備をしようと思ってただけなのに。
三階の我が家に帰るのに、荷物が重すぎてしんどいと思ったり、運動不足かとちらっと思いつつ、一段飛ばして横着した報いだろうか。
だからって、こんなのないよって思うんだよ。
私がこれ持って帰んないと、帰ってご飯作んないと、誰も料理なんてしないのに。
家族が飢え死にしちゃうよ、大げさだけど。
って、思ったのが階段踏み外して気づいたら海の上にいた私の心境ね。
全く、階段踏み外して重い荷物のせいで後ろに倒れて、やばい、て思ったら何でか痛みもなく、目を開けたらあら不思議。
厳つい男を下敷きに、すんごい怖い顔した男たちに取り囲まれて海の上。
階段から落ちて夢でも見てんのかと思ったね。
でも、手には食材があるし、なんてリアルな夢だろう。
なんて暢気に思ってた私の耳に聞こえてきたのは、場にそぐわない間抜けな音。
しかし、本人にとってみれば切実な本能だったんだろう。
空腹を訴える、その音は。
「……誰だてめェ」
そんな音すら、あれ、聞き間違いかなと思わせるほどにスルーを決め込んで、目の前に立つ厳つい男の一人が凄む。
怖さが半減。
残念です。
「一体どこから「ぐぅぅー」…現れやがった」
「……」
途中で明らかに聞こえた腹の虫。しかし見事にスルーを決め込んだ。
逆に尊敬する、マジで。
でも怖さは更に半減です。
しかし今の音は自分の下から聞こえた。
おっとそう言えば、私は誰かを下敷きにしているんでした。
だが、それにしても下敷きにしているはずなのに微動だにしないんですが。
え、死んでる?
いや、腹の虫が鳴いたじゃないか。
まさか、餓死とか。やめてくれ。
何だか怖くなって、慌てて退こうとするが、目の前で凄んでくる男が近くて動くに動けない。
どーするの、これ。
ほんと、夢なら覚めてください。