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プロローグ

前作は毎日投稿で大変すぎたので、今回は週1~2更新にします。


よろしくお願いします。

人々が固唾を飲んで見守る中、その儀式は厳粛に執り行われていた。


大広間に集まったのは、いずれもこの国を代表する貴族や重鎮たち。壁際にずらりと並んだ彼らは、広間の中央を食い入るように見つめている。誰ひとりとして声を発することなく、真剣な表情で皆がその時を待っているのだ。


そう、今まさに行われようとしている、【勇者召喚】の瞬間を。


広間の中央の床には、直径3メートルほどの魔法陣がぼんやりと光を放っていた。その前に立つのは1人の魔法使い。漆黒のローブに身を包み、目深にフードをかぶっているために顔は見えないが、若い女性であるようだ。150センチに届かないほどの身長と起伏の乏しい身体のラインから、少女といっても良い年齢なのかもしれないと推測できる。


魔法使いはひとつ呼吸を整え、視線を上に上げた。その先にいるのは、玉座に座り、威厳あふれる壮年の男性。ひと目でわかる、この国の頂点に立つ者・・・すなわち王である。王は黙ってうなずき、魔法使いに了承の意を示した。


時は満ちた。


勇者召喚の始まりである。


魔法使いは手に持った杖を高く掲げた。


「光の女神、アルファルリア様の名のもとに、今こそ我らに光の牙を授けよ!その者は気高く、強く、その意思は光、その力は女神の御力そのもの!全ての闇を打ち払う光の化身は今、ここに!・・・発動せよ、【勇者召喚】!」


魔法使いの声に呼応するかのように、魔法陣の光が強くなっていく。その光はどこまでも強くなり、薄暗かった大広間を昼間のように照らしたかと思うと、すぐに目を開けていられないほどの光量となった。光の女神の化身たる勇者の召喚にふさわしい、神々しい光の奔流。


その場の人間、全てが目を覆った。どれくらいそうしていたのだろうか。指の隙間から光が収まったのを確認し、恐るおそる目を開く・・・そこに、彼はいた。


魔法陣の中心に立つ、先ほどまではいなかったいなかったはずの人間。黒い髪に黒い瞳、見慣れない形式の、黒い衣服に身を包んだその姿は全身が真っ黒で、光というより闇の化身のようだ。歳の頃は10代の中ごろであろうか。いや、現代の日本人が見ればすぐにわかっただろう。これは「学生服を着ている男子高校生」だ。その少年はしかし、この空間において、まごうことなき「勇者」そのものであった。


勇者は不思議そうに、キョロキョロとあたりを見回している。こうしていると普通の少年だが、彼は【勇者召喚】によって呼び出された勇者である。その内包する力は誰よりも強く、何より、この世界で唯一【魔王】に対抗できるものだ。彼以外には、どんなに優れた戦士でも魔王を倒すことはできない。彼は間違いなく女神に選ばれた勇者、世界に1人しか存在しない勇者なのである。


王は勇者の姿を認めると、慌てて玉座から立ち上がった。勇者という絶対に代えが効かない個人の重要さは、はっきり言って王を上回っている。そのことを知っているからこそ、王は必死である。間違っても勇者にヘソを曲げられるようなことがあってはならない。勇者を囲い込むこと・・・それは他国に対して、これ以上ないほどのアドバンテージとなり得るのだ。


なるべく丁寧に、下手に出るのだ。そして美しい姫をあてがい、我が国の血脈に取り込む・・・絶対に失敗はできない。王は、慎重に言葉を発した。


「おお、よくぞ参られた勇者どの・・・余はこの国の」


だがその言葉は、最後まで言い終わることはなかった。


なぜか。


勇者が死んだからだ。


凄まじいスピードだった。


凄まじいスピードで落下してきた「何か」が、固い石造りの天井をぶち破り、勇者を直撃して地面のシミに変えたのだ。


落下物の衝撃波で王は後ろに吹き飛び、ついでに召喚を終えて息も絶え絶えだった魔法使いも後ろに吹き飛んだ。


側近たちに抱き起こされた王が見たもの。それは、もうもうと立ち上る土煙の中、先ほどまで勇者が立っていた場所に鎮座する、大きな「棺桶」だ。いや、現代の日本人が見ればすぐにわかっただろう。これは一種の「宇宙船」だ。空から落ちてきたUFOか何かだ。


金属製の棺桶のフタがゆっくりと開いた。


・・・中からのっそりと起き上がったのは、全身を銀色に輝く甲冑で包んだ、身長2メートルを越す大男である。いや、現代の日本人が見ればすぐにわかっただろう。これはロボットだ。UFOから、人型ロボットが出てきやがったのだ。


ファンタジー世界に呼び出されてすぐ死んだ高校生と、ファンタジー世界に墜落してきた人型ロボット。(ひとりはすでに故人であるが・・・)この1人と1体がこの物語の主人公である。


物語の幕は、こうして上がった。


ロボットはあたりを見回してから、のっそりと呟いた。


「む・・・どうやらこれは・・・空気を読めない登場をしちゃった感じでありますな・・・。」

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