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エピローグ

 僕は不明瞭な紅い世界に向けて、カメラを構える。


 今、僕の脳裏に思い描かれているのは、いつか見た夕焼け。その美しさ。


 ――あの花火の日から一年もしないうちに、僕の目はほとんど見えなくなったけど、そのころには『目の見えない生活』に対する準備も整っていて、戸惑うことなくその生活に滑り込むことができた。


 いろいろな意味で余裕ができていた僕は、空いた時間にカメラを手に取るようになったんだ。


 彼女がこっそりと公募に投稿した僕の写真がちょっとした賞を取り、そうこうするうちに写真集を出してもらって、それなりに売れた。


 写真家、と名乗れるほど、たいしたものじゃない。

 でも、僕のこの目に映る、ぼやけていても、それでもなお美しいこの世界を、美しいと感じる僕のこの気持ちを、誰かに伝えたいと思ったんだ。


 世界は、こんなにも、美しいのだと。

 この美しい世界は、どんなことがあっても諦めてはいけないのだと。


 さまざまな赤で彩られる夕焼けを描き出すべくファインダーを覗く僕の耳に、夕食の時間を知らせる声が届く。


 僕は、ゆっくりと振り返る。


 そして、今もこの胸の中にくっきりと刻まれている、あの日の彼女を目の奥に蘇らせる。


 僕の名を呼ぶ、この美しい世界の中で、一番美しいその姿を――


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