はじまり
メリーゴーランドは回る。運命が動き出す。
陽が楽しそうに笑うたび、少し嬉しく思った。
「楽しいか?」
「うんっ楽しい!なんでだろ?子供の時に初めて乗って、それから好きになったんだよね。」
「へぇ~」
初めて乗った時、僕は隣にいたのだろうか?
小学生だった陽がメリーゴーランドに僕と一緒に乗ったと言っていた。その時が初めてだったのだろうか
今は、欠けている記憶を取り戻したい。僕と陽との間に何があったのかが気になる。
そんなことを考えているとメリーゴーランドの動きが止まった。
メリーゴーランドを降りた僕と陽は、ベンチに座ることにした。
、、、、、、
僕が動揺していたせいか沈黙が続いた。
少し時間が経ち、動揺が溶け話し始めた。
「なあ、さっき、、、、、ちょっとだけ記憶を取り戻した気がする。」
「え?うわ、わわわ、、、、、本当に?」
「ああ、小学生の時、遠足ではぐれたこと、」
僕が喋るのを遮るように陽が言った。
「思い出したの!!????全部?全部!?」
陽の顔が一気に赤くなった。
「?、いや、、少し話しただけ、」
陽は安心した顔をしていた。
「あの後何かあったのか?」
「いやいやいやいや何もなかったよ!!!!本当に!本当に何もなかった!!!信じて!!」
「信じる、、、?」
ここまで露骨だと、信じられるはずもない。 やはり何かあったのだろうか?何かあったのであればそれが何なのか早く知りたい。
しかしこれ以上のことを聞くわけにもいかず、
話を適当に流し、他愛もない話を始めると、
陽がジェットコースターに乗ろうと言うので、
連れられるままに、ジェットコースターに乗った。
その後にもいろいろなところに行ったが、思い描くような収穫はなかった。
時間が過ぎていくうちに、空の色も暗く変わり、後、乗れるアトラクションは一つだけとなった。
何にするか決めあぐねていたが、突然思いついたように陽が観覧車に乗ろうと言った。
自分も話を聞くなら観覧車かと思い、そうすることにした。
「陽ー、観覧車ではなんかなかったのか?」
「え!?観覧車?ないない!!」
ここでも何かあったのだろう。それにしても嘘が下手くそだ。
並んでいるうちに観覧車は迫ってくる。
「おーいよいよだね!」
「そうだな」
「また何か思い出すかもね」
少しニヤつきながら陽が言った。
「だといいな」
なにかきっかけがあれば、、、思い出せるかもしれないのに、、、
係員の指示が入る。
僕は観覧車の席に陽と向かい合うようにして座った。
席に座った瞬間、突然に陽の服装が制服に変わった。
記憶が蘇る。