表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/80

Episode:74

>Seamore


 あたしは……また、庭のベンチにいた。


――あいつが死んじまうとはね。


 正直まだ信じらんない。なにせギリギリまで、ここで話してたんだ。

 で、待ってる。馬鹿げてるとは思いながら、なんとなくここでナティエスを待ってる。


「シーモア、いた〜」

「――ミル」


 さすがのこいつも、今日はトーンが低かった。


「ナティエスには、もう会ったのかい?」

「うん」


 昨日と同じように、ミルが隣にかける。


「他もみんな……会ってきたよ」

「そうかい……」


 ひどく長い死亡者リストには、うちのクラスの仲間も四人ほど名を連ねちまった。他にも重傷者が、何人もでてる。

 裂傷ですんだあたしなんざ、かなり運のいいほうだろう。


「シーモアも左腕、痛そうだね〜」

「仕方ないさ」


 最後の防衛戦の際に創った傷だ。ただあたしがうっかり油断して切りつけられたから、誰も悪かない。


「そういやあんたは、ケガなかったのかい?」

 ふと訊いてみる。


「したよ〜」

 けどミルのヤツ、ざっと見たところはケガした様子がなかった。


「いったいどこをケガしたって言うのさ?」

「手首〜♪ 捻挫しちゃったんだ」


 思わずなんでもない右手で、こいつを殴りつける。


「それのどこがケガだい!」

「え〜、だって昨日は痛かったから、湿布までしたんだよ?」

「………」


 何も言えなくなって黙る。

――だいたいこれで、どうリアクションを返せっていうんだか。


「あ、そだ☆」

 しばらく黙ってると、またこいつが性懲りもなくなにか思い出した。


「今度はなんだい」

「シーモアってさ、これからどうすんの?」

「は?」


 唐突にそんなことを言われて、思わず聞き返す。


「んとね、ほら、けっこうみんな、学院辞めちゃうみたいだからさ」

「ああ、その話か。

――あたしはこのままだよ」

「そなの?」


 ミルが意外といった顔になった。


「シーモア、辞めちゃうかなって思ってた」

「そりゃ参っちゃいるけどね。でも今更帰る場所があるわけじゃなし。

 だいいちンなことで学院辞めたら、ナティエスが承知しないさ」


 あの子だったら絶対、「あたしのせいで辞められたら迷惑」と言うだろう。


「そっか」

 分かってるのか分かってないのか、ともかくミルが納得する。


「けどクラス、減っちゃったね」

「ああ」


 シエラはもともと、一クラスが二十人に満たない少人数編成だ。なのに四人もいなくなったら、空席がひどく目立つ。


「そのうちクラス替えがあるんだろうけど……しばらく寂しいだろうね」

「クラス替えかぁ。来年まではヤだな〜」


 珍しくこいつが神妙なことを言う。

 もっともこの意見には、あたしも賛成だった。

 そんなあっさり隙間が埋まったら、死んじまった連中に悪い気がする。


「かといって……こればっかはね。教官の考えることだし。

 それよりナティエス送るのに、なにか持たせてやらないか? とっておきのやつを」

「あ、それいい考え〜♪ んじゃさ、部屋に行ってなんか探そうよ♪♪」


 昨日のあの時と同じように、あたしとミルは寮へと向かった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ