表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/80

Episode:70

「タシュア、ひとつ訊きたいんだが」

「なんでしょう」


 私ではなく、タシュアに問いかける。


「リティーナを殺したのが君の知り合いというのは……本当なのか?」

「――はい」


 タシュアの静かな答えに、空気が険悪なものになった。

 セヴェリーグが立ち上がる。


「この子のクラスメートの話じゃ、そいつは狂ってたそうじゃないか。

 なぜそんなものを放っておいたんだ」

「………」


 タシュアは何も答えなかった。

 こういう時、彼は絶対に言い訳をしたりしない。


「答えろ、タシュア!

 この子が――リティーナが何をした? リティーナが悪かったとでも言うのか!」


 セヴェリーグがタシュアの両肩をつかむ。

 普段なら決してそんなことは許さない彼が、黙ってされるがままだ。


「なんでそいつを、さっさとどうにかしなかったんだっ!」

「――セヴェリーグ、やめてくれっ!」


 思わず叫ぶ。

 聞いていられなかった。


「頼む、言わないでくれ。

 タシュアをそれ以上、責めないでくれ……」


 セヴェリーグが辛いのはよく分かる。

 だがこのことではタシュアも……傷ついているのだ。


「頼むから、もう……」

「シルファ……」


 セヴェリーグが、そっとタシュアから手を放した。

 彼もまた、悲しさを通り越したとしか言えない表情をしている。


「――すまない。後輩相手にみっともないところを見せたな」

「私には何も言うことはできません……」


 どう表現していいのか分からないほど、重い雰囲気。

 もう一度セヴェリーグが、少女の隣へしゃがみこんだ。


「すまないが、向こうへ行ってもらえないか?」

「あ、ああ……」

 二人でその場を離れる。


――なぜこんなことになったのだろう?


 ルーフェイアではないが、ふっとそんなことを思った。

 やっとの思いで生き延びて、ようやく穏やかに暮らし始めたのに、なぜこんな殺されかたをしなくてはならないのだろうか?


 私たち上級傭兵を狙うのなら分かる。

 だがこんな小さな子の、どこが恐ろしいというのか……。


「シルファ、大丈夫ですか?」

「え?」


 私が黙ってしまったからだろうか?

 タシュアの心配そうな顔がそこにあった。


「まだ疲れているのでしょう。部屋へ戻って休んだらどうです?」

「いや……大丈夫だ」


 それよりもタシュアの傍にいたかった。

 なにもできないならせめて、隣にいたい。


「そうですか。

 そうしたら急いで、このリストを完成させましょうか」

「ああ」


 もう一度、辛い仕事に手をつける。

 戦いと言う名の狂気が残したものは、あまりにも無惨だった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ