Episode:67
>Rufeir
先輩たちといっしょに、あたしは食堂を出た。
――どこへ行くんだろう?
ナティエスのペンダントを握り締めながら思う。
でもこのペンダントが見つかったなら、ナティエスは喜ぶだろう。たしか両親の形見だと言って、とても大事にしていたのだ。
――あれ?
けどホールのほうへ先輩たちは行かず、そのまま廊下を歩いて、エレベーターの前まで来る。
そして立ち止まって、下へのボタンを押した。
それにしても、地下になにかあっただろうか? 戦闘中は年少組を避難させたというけれど……。
そしてやっと思い出す。
地下は昨日たしか、遺体を……。
足がすくんだ。
さっきの先輩の言葉がよみがえる。
「ナティエスが……死んだ……」
急にめまいがして立っていられなくなる。
「ルーフェイア、大丈夫か?」
横からシルファ先輩が支えてくれた。
「無理にとは言いませんが……彼女に会えるのもこれが最後でしょう。早ければ今日の午後には荼毘にするそうですから。
――どうしますか?」
「行き……ます……」
自分のものとは思えないような、かすれた声だった。
足が思うように動かなくて、半分かかえられるようにしてエレベーターに乗る。
――怖い。
けど、ナティエスは親友だ。それに孤児の彼女は、あたしやシーモアたち以外、泣く人もいない。
エレベーターが止まって、扉が開いた。
「あ……」
累々と並ぶ遺体。
これにはさすがに、シルファ先輩も衝撃を受けたようだった。
「いったい、何人……」
「敵兵も合わせると、百どころではではないでしょうね。
ルーフェイア、こっちです」
先輩が一つの遺体の前で立ち止まった。
かけてあった布をそっとめくる。
「ナティエス……」
穏やかな表情で、眠っているようにしか見えなかった。
でも……左腕がない。両足も。
そっと頬に触れると、氷のようだった。
「ナティエス……苦しかった?」
涙があふれて、ナティエスの上に落ちる。
いろいろなことが思い出された。
最初は……あたしのことを嫌ってた。「どこかの金持ちのお嬢さんが、道楽で入学してきた」と思ったんだそうだ。
でもそのあとあたしのことを分かってくれてからは、ずっと仲良しだった。
シーモアとミルとあたしとナティエス。四人でいろいろなことをした。
他愛ない話をしてみたり、みんなでケンディクへ買い物に行ったり、シルファ先輩の任務に同行したことまであった。
ロア先輩が個室に移ってあたしの相部屋が空いた時も、何も言わずに引っ越してきてくれた。
あの笑顔を覚えてる。
あたしが困っているといつも、「しょうがないなぁ」と言いながら手伝ってくれた。
「約束……したんです。バトル終わったら、ケーキの残り食べようって。
なのに、なのに……」
次々と涙がこぼれる。