Episode:65
>Rufeir
ぼんやりとあたしは目を覚ました。
なんとなく枕元の時計を見る。
――九時半?!
びっくりして飛び起きた。これじゃ授業に間に合わない。
けど慌てて着替えようとして、枕元に畳んであった服に気が付く。
べったりと赤黒く着いているのは……血だ。
――そうだっけ。
昨日の激戦をようやく思い出す。
まだ疲れているのか頭が痛かった。それにひどくお腹が空いている。
とりあえず何か食べようと、冷蔵庫を開けた。
――あ、ケーキ。
思いもかけず甘いものを見つけて嬉しくなる。急いで取り出してフォークも出した。
でもなにか……忘れている気がする。
なんだったろうとしばらく考えて、あたしはようやく思い当たった。
昨日バトルの前にナティエスに、「勝手に食べるな」と言われたのだ。
「ナティエス?」
向こうの寝室に声をかける。けど返事はない。
疲れて、まだ寝てるんだろうか?
起こさないようにと思って、そっとドアを開けた。
――いない?
ベッドは空だ。
もしかしてあたしみたいにお腹が空いて、食堂にでも行ったんだろうか?
なんとなくふらつくけれど、着替えて外へ出る。
校内はまだ、惨劇の跡が生々しく残っていた。
遺体こそ殆ど片付いているけれど、あちこちに血がこびりついている。これじゃ今日はきっと、掃除に駆り出されるだろう。
こんな状態でどうかと思ったけれど、とりあえず食堂へ行ってみる。
――開いてるといいんだけど。
少し不安に思いながら廊下を曲がった。
意外にも人の出入りがある。さすがに食べることをやめるわけにはいかないから、ここは最初に復旧?したようだった。
ただ中を見回しても、シーモアもナティエスもミルもいない。
みんな、負傷者の手当てをしにホールへ行ってしまったんだろうか?
「ルーフェイア、もう大丈夫なのか?」
「あ、シルファ先輩」
振り向くと先輩がいた。
けどこんなに近づかれるまで気付かないなんて、よほどぼうっとしてたらしい。
「今日は起きられないんじゃないかと、心配してたんだが。大丈夫そうで良かった」
「すみません……」
それにしても先輩、トレーの上に山盛りの料理を乗せてる。どうみたって一人前以上だ。
「先輩も、お腹……空いたんですか?」
「私じゃなくて、タシュアだ」
シルファ先輩が苦笑した。
なんでもタシュア先輩、昨日は何も食べてないとかで、今朝はひたすら食べることに専念してると言う。
「あんなに急に食べたら、お腹を壊すんじゃないかと心配なんだが。
――ルーフェイアも、いっしょに食べるか?」
「いえ、あたし……ナティエス探しに、来ただけで……」
急に先輩の顔が曇った。