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Episode:05

「え〜、だってだって、食べたいんだもん☆」

「たしかに、おなかが空きましたかね?」

「え?」


 タシュア先輩が会話に割りこんできて、またみんなで呆然とした。

――そろそろおやつの時間と言えば、そうなんだけど。


「やぁん先輩、話わかるぅ。あ、これどーぞ♪」

 半分意味不明のことを言いながら、ミルがどこからかクッキーを取り出して差し出した。


「おや、ありがとうございます」

 しかも先輩も、しっかり手を出している。

――どうなっちゃってるんだろう?

 なんだか夢でも見ているみたいだ。

 和やかと言えば和やかだけど、ちょっといつもからだと考えつかない光景だった。


「私も……何か作るか」

 それまで黙っていたシルファ先輩が、ぼそりと言う。

「わぁ、ほんとですか?」

 ナティエスが聞きつけて、嬉しそうな声をあげた。

 じつはシルファ先輩、お菓子をつくるのがとても上手だ。特にケーキなんて言うと、下手な店で買ってくるよりもずっと美味しい。


「ああ。ただ……最近ちょっと、材料が手に入らないから……」

「あ!」

 この言葉に大事なことを思い出す。


「先輩、材料あるんです」

「本当か?」

 シルファ先輩が驚いた。


「はい。ただその……条件付き、なんですけど」

「条件?」


 条件というのは、ロア先輩へのおすそわけだ。

 教官の半数以上がいなくなってからは、物資の調達もけっこう大変な問題だった。教官が業者と癒着してたせいで他にルートがないうえ、最寄りのケンディクはあのとおり戒厳令だ。

 だから最低限の食料と生活用品を確保するのが精一杯で、とても嗜好品にまで手が回らないらしい。

 でもロア先輩、あたしが前に言ってたのを覚えててくれて、たまたま余った小麦粉なんかを取っといてくれたのだ。


「で、『あたしにも食べさせてね』って言われたんです」

「なるほど……」

「裏取引にしか思えませんがね」


 しばらくぶりに、タシュア先輩が毒舌になった。

 もっともタシュア先輩とロア先輩が犬猿の仲(正確に言うとロア先輩が一方的に嫌ってる)なのはけっこう知られてるから、そうなっても当然かもしれない。


「ねぇねぇ、そしたらさ、みんなでつくろーよ♪」

 ミルが妙なことを言い出す。


「え、そんなことしたら……先輩に迷惑……」

「私は別に構わないが。

――また、みんなで作るか?」

「やたっ!!」


「けど、本当に……いいんですか?」

 ミルは跳び上がって喜んでるけど、ちょっと心配になってそう尋ねた。

 シルファ先輩はもう手慣れてるから、あたしたちが下手に手伝ったりしたら、やっぱり邪魔じゃないだろうか。


「大丈夫だ。それに一緒にやれば、たくさん作れるだろう?」

「でも……」

 迷惑な気がして、行く気になれない。


「気にしなくていい。ルーフェイアもだいぶ、上手くなっているんだし」

 言いながらシルファ先輩が立ち上がる。

「だいいち急いで作らないと、夜になってしまうぞ?」

「あ……」

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