表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/80

Episode:49

 向こうから、難を逃れた兵士たちが迫ってくる。


 先行しているシルファ先輩に続いて、タシュア先輩が出た。幸い心配したほど、体調が悪いわけじゃないみたいだ。

 その周囲へ、敵兵が殺到する。


――それなら。


 敵の陣形を見た瞬間、なにをすべきかが分かる。

 これがあたしの……力だ。


「空の彼方に揺らめく力、絶望の底に燃える焔、よみがえりて形を成せ――フラーブルイ・クワッサリィっ!」 


 先輩たちめがけて、炎系最上位を放つ。

 周囲に集まっていた兵士たちが、劫火に晒され灰になる。


「やれやれ、無茶をしてくれますね」

 タシュア先輩が苦笑する声を聞く。ただその声は、どこか面白がっているようだった。


 炎の中から光の尾を引いて、シルファ先輩が敵陣へ踊り込む。

 淡く光る髪と身体。紫水晶の双眸。

 大鎌が風を鳴らし、舞うように弧を描く。

 刃が閃くたび、敵が倒れていく。


 さらに猛火の中から漆黒の剣をたずさえて、タシュア先輩が歩み出る。

 焔に照り映える白銀の髪。白い肌。紅い瞳。

 そしてなにより、冷たい死神のまなざし。


「おや、他の方は見ているだけですか? それでよく、軍隊として成り立っていますね」

 揶揄するような口調。


「うわぁぁぁぁっ!!」


 耐え切れなくなったのか、兵士たちが闇雲に突っ込んできた。

 白と黒の刃が閃く。

 たちまち先輩たちの周囲に、骸の山が築かれていく。

 そしてあたしは。


「幾万の過去から連なる深遠より、嘆きの涙汲み上げて凍れる時となせ――フロスティ・エンブランスっ!」


 魔力全開の冷気魔法を、立て続けに後方へ放つ。厚い氷壁が出来て、ここから学院へ続く唯一の道がふさがれる。

 こうしておけばいくらプロの兵士でも、そう簡単には侵入できないはずだ。

 さらに足止めされた兵士たちに、呪文を叩きこむ。


「猛き龍の咆哮、風の悲しみはそらへといのちを返す――ウラカーン・エッジっ!!」

 放たれた竜巻が辺りを薙ぎ払い、風の刃が兵士たちを切り刻んだ。


 恐らく初めて目にしたのだろう。常識を無視した魔法戦に敵がひるむ。

 瞬間、容赦なくシルファ先輩のサイズが振るわれた。

 一閃、二閃。

 たちまち骸が積み重なる。


「――ば、化け物っ!」

「言うことはそれだけですか? もう少し、独創性がほしいものですね」


 先輩の辛辣な言葉。

 そしてあたしも、その兵士の言葉に傷つくことはなかった。

 化け物でもいい。

 この学院を、あたしは――守る。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ