Episode:47
「ロア、この子の言うとおりにしてやってくれないか?」
予想外の声に驚いて振り向く。
「シルファ先輩?」
今まで姿を見かけなかった――いつもタシュア先輩と一緒なのに――黒髪の先輩が、いつの間にか後ろにいた。
目が合ったシルファ先輩が、あたしを見て微笑む。
「ロア、ここは私たちに任せて、船着場へ回ってくれ。
それと地下に低学年が避難している。そっちの守りと誘導にも、人を割かないと」
言われてロア先輩が考え込む。
「そうか、教室からちびちゃんたちは避難したのか。
――わかりました、船着場と地下へ戦力を回しましょう。そのほうが被害も少なくなりそうですし」
ここでは最高の決定権を持つ先輩が、そう決断する。
「ルーフェイア、任せたよ。容赦なんてしなくていいからね」
「――了解」
他の生徒たちも動き出す。
『おいルーフェイア、だいじょぶか?』
「イマド?」
通話石から突然聞こえた声に、驚く。直通設定だ。
「ダメよイマド、今非常時だから、私信は禁止でしょ」
『学院長に許可もらったっての。つかお前、まずそれ言うのかよ』
「あ、ゴメン……」
思わず謝る。
『まぁいいや。んでさ、俺ちょっと門開けて、ケンディクまで行ってくっから』
「え……」
なんでイマドに私信の許可が出たのか、これで理解できた。
確かに彼は門を開けて通れるけど、それでもぜったい安全とは言い切れない。
あって欲しくないけど、もしものことを考えて、学院長が許したんだろう。
『すぐ帰ってくっからさ、ケガとかすんなよ?』
「あたしは、だいじょうぶ。イマド……気をつけて」
『ああ』
そこで会話は途切れた。
「覚悟はいい!?」
「負けるもんかよ、来るなら来い!」
そう。
友達のために。
あたしたちの学院のために。
「生」という名の未来を、手にするために……。
それぞれの思いをそれぞれの胸に抱いて、最前線へと駆ける。
「行くぞ、ルーフェイア」
「はい」
シルファ先輩といっしょに、先行していたタシュア先輩の後ろへつく。
坂を下りて、海岸に出る。
それからどのくらい待っただろう?
一時間か、それ以上か。大きな音が遠くから聞こえ始めた。
「始まったな」
船はどれも船着場へ回ったみたいだから、そっちでいち早く戦闘になったんだろう。
一方でこっちは静かだ。
けどあたしも先輩たちも、このまま終わるとは思わなかった。
そして……。
「やはりこちらへ、上陸部隊が来ましたか」