Episode:46
>Rufeir
頬に鋭い痛みが走ってはっとした。
急に目の前の光景が現実味を帯びる。
自分のしたことを実感する。
あたし、また……。
「ルーフェイア、しっかりしなさい。今まではともかく、今度は生半可なことでは勝てませんよ」
先輩の言葉に、思わず首を振った。
――殺したくない。
他のみんなのように学院を守るためならともかく、あたしはただ単に、意味もなく殺しているだけだ。
それがなにより嫌だった。
「あたし、あたし……殺すばかりで……」
あたしは、殺戮機械でなんていたくない。
人でありたい。
それなのに、それなのに……。
「殺すだけ……壊すだけ……なんのために……」
涙が止まらない。
どうしていつも、こんなことになるんだろう……。
そのあたしに、タシュア先輩が声をかけてくれた。
「ルーフェイア、いいのです。
友人を守る――それだけの理由で」
「え……」
驚いて顔を上げる。
「あなたには友人が大切にしているこの学院を、守るだけの力があります。
ならば彼らのためにその力を使いなさい。そのために例え誰かを殺すことになろうとも、誰もあなたを責めはしません」
「あたし……」
初めて言われた言葉に、思わず自分の手を見つめる。
――あたしに、力が?
ただ殺すだけのあたしが、守る側になれる……?
信じられなかった。
これほど血に染まった手で人を守れるなんて。
でも先輩は嘘は言わない。
なら……そうかもしれない。
――どうする?
自分に尋ねる。
殺すのは嫌だった。
けど友達が死ぬのはもっと嫌だ。
なら、どちらを選ぶ……?
答えは当然ひとつしかない。
自分の意思で顔を上げて、この光景を見据える。
目の前に広がる屍の群れ。
唇を噛みしめる。
もういちどこれを、今度はあたしの意思で……。
タシュア先輩はもう、向こうへと歩き出していた。
「――ロア先輩」
後ろまで来ていた先輩に声をかける。
「他の生徒を下げていただけませんか? ここはあたしとタシュア先輩とで食い止めます」
「えっ?」
一見自殺行為ともいえる言葉に、ロア先輩が聞き返してきた。
けどあたしに、そのつもりはない。
「あたしとタシュア先輩が全力を出したら、間違いなく他の生徒は巻き込まれます。
ですから別の場所へ、下げていただけませんか?」
「けど……」