Episode:43
ルーフェイアの姿は見えなかった。けどまさかケガするとも思えねぇから、場所移動したんだろう。
「ミルドレッド! こちらです」
玄関のほうから学院長の声がして、二人で慌ててそっちへ行く。
前へ着いたとこで、ミルが学院長に手短かに、どうするかを説明した。
「つまりミルドレッド、あなたがここに居るのを利用して、間接的に敵に圧力をかけるわけですね」
「ですですー。それとあと、門はイマドに開けてもらって〜、本土もイマドに行ってもらいます〜♪」
さすがの学院長も、これには驚いた顔だ。
「あなたではなくて、イマドに……ですか?」
「そうでーす」
ミルのほうは驚かしたのが面白かったんだろう、ニコニコしてやがる。
どういうことだと、学院長が俺を見る。
「えーっと、俺、門とか開けられて、通るほうも平気なんで……」
俺の言葉のあとを、ミルが引き継いだ。
「それにほらー、あたしが学院から出ちゃったら、圧力にならないですー♪」
「なるほど、そういうことですか」
学院長はいろいろ最初から事情知ってるんだろう、大して説明ナシで話を飲み込む。
「イマド、もう一度確認しますが……門のほうは本当に、大丈夫なのですね?」
「だいじょぶです」
即答する。この期に及んで、隠したってどうにもならねぇし。
「……分かりました、門を開けるのと本土へ渡るのはイマド、あなたに任せます。どこへ何をどう連絡するかについては、ミルドレッドから詳しく聞いてください。
ミルドレッド、あなたの申し出に感謝します。ですが、すべてをこれに委ねるわけにはいきません。動きがないようなら、当初の計画通り門を通って全生徒を非難させます」
「はい」
声が重なる。
「門は祠の地下です。すぐ行きましょう。
ミルドレッド、あなたもいっしょに来て、道すがらイマドに本土へ渡ってからを説明してください。私はその間に、全校生徒に状況を説明します」
「はーい♪」
相変わらずミルのヤツ、緊張感のカケラもねぇ返事しやがる。けど考えようによっちゃ、こいつが深刻になったらオワリかもしんない。
『学院長のオーバルです。先ほどの作戦を少々変更します――』
全体への説明を聞きながら、俺らは「門」へと急いだ。
――学院を守るために。
シエラ学院に拾われたことが、いいか悪いかは知らない。
けど、ここで俺らは育った。
ここに拾われなかったら、今ごろどうなってたか分かんねぇヤツもかなりいる。
下級生は上級生に育てられて、そいつらがまた大きくなって下級生を育てる。
そうやって今まで、肩をくっつけるようにしてやってきた。
だから……絶対に渡さねぇ。
俺らの未来は、ここから始まるのだから。