Episode:41
「うん、イマドにケンディクの、おとーさんのとこ行ってもらうだけ〜」
意味が全くわかんねぇし。
確かにこいつの親父さんケンディクにいるけど、それが俺らが助かることと、どう繋がるのかサッパリだ。
「オヤジのとこって、ならお前が自分で行けよ」
「あーダメダメ、あたし人質やらなきゃだし〜」
さらにワケわかんなくなる。
「攫われてもねぇのに、なんで人質なんだよ」
「包囲されてるから〜」
いつものこととは言え、この状況でこういう言動ばっかされると、マジでイライラしてくるんだが。
「いい加減にちゃんと説明しろよ! 帰っぞ俺は」
「あ、怒った?」
この言葉にゃさすがにキレて、本気で帰りかける。
「怒ったらダメだってば〜。ちゃんと説明するからぁ」
「――いくら戦闘落ち着いてるからって、やっていいこととあることがあるだろ!」
「ゴメンゴメン」
ぜったい悪いと思ってなさそうな顔で、ミルのやつが謝った。
そして一転、マジメな表情で話しはじめる。
「例えばさ、このユリアス国の領海内に、外国船が侵入したとして。その攻撃で、滞在してた他国の要人に何かあったら、完全に国際問題でしょ?」
「そりゃまぁ……」
国際問題で済みゃいいけど、場合によっちゃ戦争だ。
つかその前に、そこまでよそ者を侵入させんなって思うし。
「でさ。あたしに何かあると、アヴァン国が黙ってなかったり〜」
「――冗談はあとにしろよ」
つい口が滑る。
「あのねぇ、今こーゆー状態なのに、いくらあたしだって冗談言わないってば〜」
「だってお前、存在自体が冗談じゃねぇか」
なんかいろんな意味でイラついてるのもあって、半分八つ当たりだ。
けどミルのヤツ、意外にも笑い出した。
「それって、言いえて妙かも〜♪ イマドって時々、おもしろいこと言うよね〜」
ぜったいコイツに意味通じてねぇ……。
頭抱えたくなる。
「まぁ冗談はこのくらいにして。
アヴァンの支配層は、あたしに何かあったら大問題なんだよね。で、ユリアス国も自国の領内でそんなこと起こったら、やっぱり困るし。
だから、それ利用して圧力かけるの」
なんかとんでもねぇことを、あっさり言いやがる。
「そんなん、ホントにできんのかよ? つか、なんで行くの俺なんだ?」
「さっき言ったでしょ、あたしは人質だって」
もう忘れたのかって顔で怒られる。
――ミルに言われるとか、なんかすげー腹立つんだが。
教官に意味不明のことで怒られるほうが、まだマシってヤツだ。
「あたしが学院の外に出ちゃったら、アヴァンは万々歳で、ユリアス国に圧力かける必要なくなっちゃうじゃない。あたしがここに居て危ない目に遭ってなきゃ、ダメなの」
「あー、そゆことか」
やっとなんとか、話を飲み込む。