Episode:40
『いろいろ考えましたが、他に確実な方法がありません。ですからこのまま全員が死ぬよりは、一人でも多く生き延びるほうを、私は選択したいと思います』
また盛大なブーイング。
「チビたち死なせて、俺らだけ生きろってことじゃん」
「さすがにンなマネしたら、明日っから夜眠れねえっての」
「そもそもチビたち嫌がって、門入らないんじゃない?」
一理ある。
そのとき、とんでもない声が通話石に割って入った。
『がっくいんちょー、ミルちゃんにイイ考え、あっりまーす!』
声が耳に突き刺さって、周り中がいっせいに顔をしかめる。
つか、なんで一般生のミルが、全体通話に紛れ込めるんだよ……。
こいつぜったい人間じゃねぇと、改めて思う。
『いま、そっち行っきまっすねー♪』
『いや、ですからミルドレッド、今そういうわけには……』
学院長に同情。こんなときにミルのヤツに入ってこられて振り回されっとか、マジでサイアクだ。
『ですけど学院長の案より、助かる率が高いと思います。私にはアヴァンがあります』
――え?
一転しての、いつもとは似ても似つかない落ち着いたミルの声と内容に、思いっきり面食らう。
数瞬の沈黙。
『……ミルドレッド、本当に可能ですか?』
『門さえあれば』
なんつーか、こいつ何者??
――あ。
そういや確かコイツ、隣のアヴァン国の貴族連中に、かなりのコネ持ってた気がする。
直接それが今の状態と、どう結びつくんだかはさっぱりわかんねぇけど、なんかやる気なんだろう。
とりあえずこれは、振り回されるアヴァンの連中に合掌だ。
『1分だけ、時間をください』
言ってミルのヤツが、俺のほうに振り向いた。
「イーマド♪」
いつもの調子のにこにこ顔が、なんかすげーヤな予感だ。
「門、開・け・ら・れ・る・よ・ね♪」
「ちょっ――ミル待てっ!」
慌てて、他の生徒から離れた場所へ引っ張る。
「デカい声で言うんじゃねぇっ!」
知られたくねぇ話を平然と言いふらす無神経さは、コイツぜったい宇宙一だ。
「あ、ゴメンゴメン。でもさぁ、開けられるよね?」
「そりゃまぁ、開けられるけどよ……」
そういやコイツ、前に俺が似たようなマネしたの、見たことあったっけ。
「じゃぁキマリ。あたしと一緒に来てね〜♪ あ、セヴェリーグ先輩、イマド借りま〜す」
勝手に貸し出されたうえ、ミルのヤツ俺の腕を掴んで走り出した。
「てめー放せよ」
「ヤだ。イマドってばルーフェ以外が相手だと、ぜったい逃げるもん」
「あたりまえだろ!」
こんな地球外生物と、一緒にいる義理はない。
けど、他人の話聞くようなヤツじゃないわけで。
『学院長、話ついて準備できました〜♪ 今そっち行きますねー』
勝手に話進めてやがるし。
「いったい、何する気なんだよ」