表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/80

Episode:04

 女性のほうは、さっき話題にあがったシルファ先輩。

 けっこう長身で、かなり背丈のあるタシュア先輩と並んでもバランスがとれている。瞳は紫水晶のような澄んだ色、背中まであるつややかな黒の髪をいつもストレートにおろしていて、落ちついた雰囲気だった。

 あとどういうわけか、しょっちゅう女子から告白されるらしい。


 ちなみにタシュア先輩が言うには「同格のパートナー」らしいけれど、生徒の間では「タシュア先輩の恋人」で通っている。

 それと意外なことにシルファ先輩、男子の間では「無口で愛想がないから可愛げがない」と言われてるそうだ。イマドがそう教えてくれた。

――たしかにあんまりおしゃべりじゃないけど、とっても面倒見がよくて、お姉さんみたいな感じなのに。

 男子の考える事はよく分からない。


「先輩、せんぱぁ〜い! こっちどうですか〜〜♪」

 気が付くとミル、ぶんぶん手を振っている。


「やれやれ……そんなに大きな声を出さずとも聞こえますよ。もう少し周囲の迷惑を考えなさい」


 呆れた調子でタシュア先輩が言った。でもちゃんとこっちへ来てくれたあたり、今日はいいことでもあったのかもしれない。

――それにしても周囲の迷惑って、あたしたちしかいないような?

 もっともそれ以前に、この調子でタシュア先輩に声をかけるミルのほうが、何倍もすごいのだけど。


「それでいったい、何の用なのですか?」

 いつもどおりのどこか冷たい声で、タシュア先輩が続けた。

 そして騒ぎの主のミルは。


「日向ぼっこしません?」

「………」


 思わずみんなで絶句する。タシュア先輩をこういう理由で誘った人は、きっと彼女が初めてのはずだ。

 でも次は、もっと予想外だった。


「そうですね。大事の前の平安なれ、とも言いますからね。たまにはゆっくりするのもいいでしょう」


 絶対なにか毒舌が返ってくると思ったのに、タシュア先輩はそう言って、シルファ先輩と並んでベンチへ腰を下ろす。

 見やるとシーモアもナティエスも見事なくらいに石化していて、平気なのはミルひとりだ。


「ですよね〜。ゆっくりしないと、腐っちゃうもん♪」


 ゆっくりしすぎたほうが、腐る気がするんだけど……。

 なんかめまいがしてくる。


 けど本当に、穏やかな昼下がりだった。

 優しい陽光。

 流れる潮風。

――ずっとこうしていたいな。

 みんなも同じことを思ってるんだろうか? 

 誰も――あのミルでさえ――何も言わずに、ただ座るだけだった。


「そうだ! なんか食ーべよっと♪」


 前言撤回。

「あんたねぇ、どうしてそうむやみやたらと騒ぎたてんのさ」

 シーモアがまたミルの頭を小突く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ