Episode:37
再び押し寄せ始めた敵へと踊りこんだ。
薙ぎ払い、切り倒し、ひたすらサイズを振るう。
ただ今度はシーモアたちの援護があるので、かなり楽だ。
狭い扉を挟んでの攻防が続く。
その敵の数が、少しづつ減り始めた。
やがて、誰も来なくなる。
「引いた……のか?」
やっといなくなった敵に、思わずつぶやいた。
「先輩、上見てきましょうか?」
シーモアが気を利かせてそう言ってくる。
「そうだな……危険だとは思うが、行ってくれるか?」
「心配ありませんって」
おどけた調子で肩をすくめると、後輩はさっさと出て行ってしまった。
ただあの子なら心配はないだろう。
――疲れた、な。
さすがにため息をつく。
周囲には数えたくない人数の敵兵が倒れていた。
よくこれだけ倒したと呆れるほどだ。
「シルファ、大丈夫?」
「ああ。
そっちは……?」
ディオンヌが戻ってくる。見たところ彼女にも、怪我はなさそうだった。
「あたしはね。ただ後輩がけっこうやられたわ。こっちも……そうみたいね」
彼女の言うとおりだった。
私は従属精霊を使っているおかげもあって怪我はないが、何人か重傷を負って奥へと下がっている。軽傷となるとその数倍だ。
「助かると……いいんだが」
「さぁねぇ……。
けどともかく、今のうちに手当てしてあげなくちゃ」
「ああ」
それぞれの扉の前に何人かづつ残して、一旦奥へ下がる。
残念ながら既に二人が亡くなっていた。
「――すまない」
それ以外、後輩たちに言う言葉がない。
子供たちを守るためとはいえ、他に方法はなかったのだろうか?
それとも、これでよしとしなくてはならないのだろうか?
ただ、まだこれで戦闘が終わったわけではない。
ここだけは何があっても、守り切らなくてはならないのだ。
「ディオンヌ、もう一度戦力を、割り振りたいんだが……」
「そうね。敵が引いてる今のうちにやっておかないと、どうなるかわかんないし」
すぐに上級生が集められた。
どうすればひとりでも多く生き残れるか、それだけを考えながら戦力を割り振る。
これ以上狂気に、後輩たちを渡すわけにはいかなかった。