Episode:36
突っ込んでくる兵士たちを、ことごとく血祭りにあげる。
同じ場所を守っている後輩たちも、魔法を使いあるいは剣を振るい、必死に防戦する。
それにしてもキリがなかった。
いったいどれほどの戦力が投入されたのか、ともかく尽きることがない。
一回きりならともかくこれだけ戦闘が続くとなると、いくら地の利がいいとは言え厳しかった。
またひとり倒れる。
「誰か、この子を下げてくれ!」
そう指示しながら、目の前に出てきた兵士に迷わず刃を叩きつける。
が。
――しまった!
一瞬血糊に足を取られて、十分に踏みこめなかった。斬撃も浅いまま終わる。
当然次に来るのは敵の反撃だ。
意外なほど鋭い太刀筋を、でどうにか受けとめる。
そこへ更に、別の敵が斬りかかかってきた。
避け切れない。
「先輩っ!」
「シーモア?」
聞き覚えのある声とともに、立て続けに銃声が響く。
どさりと重い音を立てながら、次々と敵が倒れた。
「大丈夫ですか?」
「ああ、助かった。 だがどうしてここに?」
この子の持ち場がどこかは分からないが、少なくともここへ来る理由はない。
「タシュア先輩に言われたんです。
あたしら船着場のほうにいたんですけど、最初の予想と違って裏庭やら教室やらが大変なことになってるから回れって」
「そうか……」
さすがタシュアというべきだろうか。
もっともロクな戦闘もしないうちに移動させられたシーモアは、不満そうだった。
「ったく、最初からこうしてくれりゃいいものを」
「そうは言っても……相手が上陸しないうちから来るとは、さすがに……」
「それはそうなんですけど」
口ではそう言うが、憤懣やるかたないという感じだ。
「ともかく、まだ敵がいる。戦線に……入れるか?」
「問題ありません。なにせまだ、戦ってませんから」
頼もしい答えが返ってくる。
「指揮取ってる先輩、今連れてきますよ」
「すまない」
だがこの思いがけない援軍で、守るのがかなり容易になった。もちろんそれだけ、小さい子たちの生き延びる確率も上がる。
船着場部隊のリーダーと共に、戦力を急いで割り振り直して、もう一度私はサイズを構えた。
――ここは渡さない。
どれほどの狂気が押し寄せようとも、必ず退けてみせる。