Episode:03
「だから、なに、それ?」
「だから、『あこがれの先輩ベスト三』なの! シルファ先輩は!」
「いつ……決まったの?」
そんなランキングがあったなんて初耳だ。
――たしかにシルファ先輩には、あたしも憧れるけれど。
あたしを見て、三人が爆笑する。
「この調子じゃルーフェきっと、自分が『学院の美少女ベスト三』に入ってるのも知らないよね」
「知らないだろうね」
「ルーフェイアらし〜♪」
勝手に盛りあがられてしまった。
「そんな……変なランキングまで、あるの?」
「これだよ。自覚ないんだから」
自覚も何も、そんなおかしなランキング自体聞いたことがない。
「どこかに、張り紙……してあった?」
そう言うとまた爆笑された。
「あんたね、そのランキングでトップだったんだよ」
「え?」
これも初耳だ。
それにしてもあたしなんて小柄で華奢で、どこがいいんだろう?。
ただみんなの感想は違うみたいだった。
「ルーフェイア、とびっきりの美少女だもんね〜♪」
「どこが……?」
「どこがって、全部!」
半分ヤケになったような口調で、ナティエスが断言する。
「けどこの髪、前線で目立つし……あたし小柄だから、バトルで不利だし……」
小柄ゆえのパワー不足も気に入らないけど、髪なんて目に飛び込む金色で、「見つけてください」と言うようなものだ。
ひとつだけ海色の瞳は気に入ってるけど、戦場じゃ意味がない。瞳の色なんて関係なくて、どれだけ戦えるかですべて決まる
「あ〜もう! どうしてこうズレてんのかな〜」
「まぁ、あんたらしいけどさ」
よく分からないけれど、ひどいことを言われたような気がした。
世の中ってやっぱり謎だと思いながら、なんとなく辺りを見渡す。
「――あ」
視界に見慣れた姿が入った。
「うん? ルーフェイアってばどしたの? あ〜♪」
ミルが悪戯っぽい調子になる。
「あ、やだ、ミル止めて。あの先輩たち、そういうのは……」
でも遅かった。
耳に突き刺さるような声が響く。
「せんぱ〜い、タシュア先輩〜、シルファ先輩〜、こんにちは〜〜!!」
校庭へ出て来た男女の先輩が、大声に振り向いた。あたしがこの学院へ来て、いちばんお世話になっている先輩たちだ。
男性の方はタシュア先輩。長身で整った顔立ちで、縁のない眼鏡をかけてる。
瞳は紅で髪は銀。それを長く伸ばして三つ編みにして、しかも前髪をひと房紅く染めてるから、目立つなんてもんじゃない。
ただこの先輩、見た目より「毒舌」で有名だった。言葉遣いはとても丁寧だけど、その内容がすごく苛烈だ。
――本当は優しいんだけどな。
けどあたしがこう言うと、大抵の人は固まってしまう。