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Episode:28

>Rufeir


 裏庭の状況は、前庭の方なんて比べ物にならないほどひどかった。

 完全な乱戦になっている。こうなるとどうしても、装備のいい敵の方が有利だ。

 負傷者もそうとうの数にのぼっていた。これでよくいままで食い止められていたと感心するしかない。

 ところどころで倒れたまま動かない制服姿は――たぶん死んでいるだろう。


「状況は?!」

 ロア先輩の声に、ここの先輩たちが振り向いた。


「見てのとおりだぜ、先輩。どうにか食い止めてるけど、もう一回きたらあぶねえ」

「――負傷者と救護班を校舎前に下げなさい。戦える者は二人一組でかかること。必ずだよ!」

 ロア先輩が矢継ぎ早に指示を出す。

「了解!」


 ロア先輩、やっぱり頼もしい。

 たぶん他の生徒も同じことを思ったんだろう、心なしか士気があがっていた。

 こういう厳しい戦いの時に優秀な指揮官がいるのは、ほんとにありがたい。


「ルーフェイア、行くよ。思いっきりやんなさい!」

「――はい」


 一度でいいからロア先輩とて実戦でペアを組みたいと思っていたのが、意外な形で叶った。

 でも手放しで喜ぶわけにはいかない。友達が……死にかけているのだから。

 そしてそれ以上に、「全力」というのが恐ろしかった。


「幾万の過去から連なる深遠より、嘆きの涙汲み上げて凍れる時となせ――フロスティ・エンブランスっ!」


 先輩が前方に魔法を放ち、たちまち辺りが凍りつく。そこへあたしが間髪入れずに踊り込んだ。

 慌てた敵兵が、魔法を唱えようとする。


――遅い。


 敵が呪文を唱え終わるより遥かに早く、あたしの太刀が閃いた。

 振り向きざまにもうひとり。


「ルーフェイアっ!」


 先輩の声。

 同時に周囲に、すさまじい炎が巻き起こった。

 敵兵が次々と燃え上がる。

 その中をあたしは戦う相手を求めて駆け抜けた。


 まさか訓練生がここまでやるとは思わなかったのだろう、あたしたちの反撃に驚いた敵が銃を乱射しだした。

 一瞬あたりに視線をめぐらせて、場所を確認する。


――いた。


 瞬間、敵とあたしの目があう。

 敵が銃口をこっちに向けて狙いを定め、あたしは地を蹴った。


 打ち出される銃弾。

 ためらわず突っ込む。

 魔法の盾が弾をはじく音。

 斬撃。

 あたしの太刀が血の軌跡を描く。

 そのまま周囲を見回すと、敵の兵士があとずさった。


「ば、化け物……」


――ひどい。


 あまりな言葉に、さすがにそう思う。

 けど。


――それが事実なのかもしれない。


 返り血を浴びながら敵を屠るあたしは、たしかに化け物にしか見えないだろう。

 そのあたしが、たちまちその兵士も血祭りに上げる。





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