Episode:25
「きゃ〜、すごいすごぉい♪」
「あ、ああ……」
一瞬めまいがした。
だけどともかく、これでかなり数が減っただろう。
「さ、あたしもやろ〜かな♪」
ミルのやつが銃を構えた。
正確な射撃。
ウソみてぇな話だけど、引き金が引かれるたんびに悲鳴あげて敵が倒れる。
――違う。
俺が聞いてんのは……悲鳴じゃねぇ。そいつらの出してる感情が、モロにこっちへ来てる。
余裕があるときならともかく、普通は戦場じゃ相手にとどめを刺すより、戦闘能力を奪うほうが優先される。
逆に言えば苦しんだまま放っておくってことだ。
(――苦しい)
(――死にたくない)
すさまじい負の感情が俺の精神をえぐりにかかる。他の連中はともかく、これじゃ俺は精神攻撃を受けてるのといっしょだ。
かと言って、シャットアウトはできねぇ相談だ。
なぜなら……。
「ミル、右だ! 三班、五班下がれっ、グレネード来るぞっ!!」
これがあればこそ、向こうの行動を先読みできる。
俺がこれやめたら、ぜったい被害が増す。なんせ今だって、こっちにもけっこう負傷者出てる。
「あれ、イマド、大丈夫? なんか顔色悪いよ〜?」
「大丈夫じゃねぇ。でも大丈夫だ」
言いながら俺は魔法を放った。物陰の向こう側で絶叫があがる。
「ヘンなの。見えないのに」
「殺ったんだからどうでもいいだろ!」
肉眼じゃ見えないトコも、俺は確認できる。物陰だろうがなんだろうが、あんま違いなかった。
――にしても。
吐き気がする。
死にかけてる奴らの断末魔の声が、途切れなく俺を襲いつづけてやがる。
「よし、一旦下がるぞ。偶数班と奇数班に分かれて後退!」
さすが先輩だ。弾切れおこすやつが出たのを見て後退の指示を出す。
「弾幕を張りながら下がるんだ。やつらを誘いこんで魔法を放つ。
炎系を持ってるヤツは、合図で一斉に放ってくれ!」
「了解!」
次々と指示が下され、命令通り俺たちは後退した。
最後のヤツが後退を終える。
「よし、詠唱行くぞ!」
先輩の声で詠唱が始まった。
「星に眠る原初の炎よ、ここに目覚めて新たなる創世となれ――ランペィジング・ラヴァっ!」
初級から上級まで魔法が一斉に放たれて、炎が吹き上がる。
坂道が再び、灼熱の渦に飲みこまれた。
――!
同時に巻きこまれたやつらの苦しみが俺に襲いかかる。
身体を灼かれる感覚が流れ込んだ。
「イマドぉ?」
「おい、大丈夫なのか?!」
耐え切れなくて、いつのまにか膝をついたらしい。ミルとセヴェリーグ先輩とが俺を覗きこんでいた。
「やつらの想いを食らったようだね。動けるのかい?」
「すみません、大丈夫です」
まだ戦闘は序の口だ。ここで怪我もしないうちから、ぶっ倒れてるわけにはいかない。
――負けるかっ!
歯を食いしばって、俺は立ち上がった。