Episode:16
>Rufeir
――まさか、どこかの正規軍?
接近してきた来た敵を見て、背筋を冷たいものが走る。
かなり厳しいバトルになりそうだった。なにしろこちらにはごく少数の上級傭兵隊の先輩以外は、プロと渡り合える人間がほとんどどいないのだ。
船団から大きな巨鳥が幾つも飛び立つ。上陸が難しいとみて、先に空中部隊を出したんだろう。
裏庭の方で悲鳴が上がった。広いあっちにかなりの数が降りたらしい。
続いて衝撃音。足元が揺れる。艦砲だ。
「来るわよ!」
先輩の鋭い声が飛ぶ。
あたしは鞘から太刀を引き抜いた。刀身が太陽を反射する。
大鳥から飛び降りた敵兵が突っ込んでくる。真正面だ。
間合いを測る。
長剣を振りかぶる兵士のスローモーション。
――今。
ステップを踏んで左へ避けながら、太刀をふるう。
血しぶきがあがった。
それを背中で見ながら、いちばん近い敵へ。
目くらましを兼ねて初級魔法を叩き付け、その隙に切りかかる。
同時にかかってきた二人は、かわしただけで相打ち。
さらに別の兵士に向き直ったとき、視界のすみに銃を構える敵の姿を認める。とっさに呪文の詠唱を始めた。
敵が銃を撃ち、あたしの防御魔法が発動する。
きぃん、という音がして、銃弾が魔法の盾に阻まれた。
「ありがと、助かったわ」
狙われていたことに気付いた先輩が、あたしに向かって微笑する。
「いえ、当然のことですから」
気が付いた人間がフォローしなかったらバトルでは勝てないことを、かつての戦場生活であたしはイヤというほど思い知らされていた。
――それにしても。
敵の数が異常に多い。その上あたしの周囲へは、兵士が集まりだしていた。
太刀を手に猛威を振るう金髪の少女。これがどれほど目立つか。
左右からまた同時に切りかかられる。
考えるまでもなく身体が先に動いた。
身を少し低くしながら刃をかわし、まず左の兵へ下段から一撃を浴びせる。そして勢いを利用しながら向きを変え、残る兵士を打ち倒した。
そこへ通話石から連絡が入る。
運営の先輩の、切羽詰った声。
『手の空いてる隊、教室へ来てくれ! 低学年が襲われてる!!』
――なんてことを!
プロの兵士のくせに子供たちを襲うなんて。
でも一方で、あたしは知ってる。
戦争は場所を選んでくれない。そこが学校だろうが病院だろうが、戦場になるときはなる。
あたしは昔、そういう場所にいた。
刀身に一瞬辛い思い出が映る。
この学院に来る前、戦場で銃声を子守り歌にしていた頃の出来事だ。
あの時あたしは生き延びるために……。
――だめ、今は!
はっとして自分で自分を叱りつける。
いまは思い出にひたってる場合じゃない。
「遥かなる天より裁きの光、我が手に集いていかずちとなれ――」
敵集団がわずかに体制を崩したのを見て、あたしはすかさず呪文を唱えた。